歴史-文献

相原秀起『知られざる日露国境を歩く』東洋書店、2015年

樺太、択捉、北千島(シュムシュ島・パラシムル島)にあった国境線をめぐるはなし。 著者が実際に旧国境線を訪問し、かつてそこにあった国境標石・碑文・旧跡を探す。 前半は樺太にあった国境標石を著者が探索・発見・保護・展示するまでの流れがメイン。 後半…

菊池伸輝「新自由主義・新保守主義の台頭と日本政治」(『岩波講座日本歴史』第19巻 岩波書店 2015)

この文章の目的 新自由主義の定義、新自由主義自体の変質やその推進者にとっての成功と失敗を、日本の経験に即して再検討し、今日の日本においてどのように新自由主義が展開しているのかを確認することを目的とする。 分析の仮設 1.経済危機や戦時体制の形…

カレル・チャペック(来栖継訳)『山椒魚戦争』(岩波文庫、1978)

ディストピアもの。資本主義を含め現代文明が行き過ぎた結果、山椒魚が人間にとって代わる。 しかし最終的に山椒魚も種族間戦争となって滅び、生き残ったわずかの人間がまた文明を築き始め、歴史は繰り返す。 現代世界のシステムそのものが、人間の根本的な…

田中宏巳『山本五十六』(吉川弘文館 2010) より山本五十六と太平洋戦争の関係抜粋

1.日米開戦と真珠湾奇襲作戦 (1)日露戦争以後の対米戦方針 「漸減作戦」によって米艦隊を減勢し「艦隊決戦」によって決着させる (a)漸減邀撃作戦(ぜんげんようげきさくせん)とは? 優勢なアメリカ艦隊が太平洋を西進してくる間に潜水艦などによって徐々…

石原享一『戦後日本の経済と社会』(岩波ジュニア新書、2015)

左な感じっぽい視点で戦後日本の経済発展を分析し、これからの未来における日本の役割を提唱している。 戦後日本の企業経営により培われた良い点と失われた30年で淘汰された悪い点を指摘。 現段階の新日本型システムを提示したうえで多角的なアジア外交にお…

木畑洋一『チャーチル』山川出版社,2016年

イギリス帝国護持をはかったチャーチルだが、帝国の変容と解体を目にしながら死んでいく。 ♰「イギリス帝国の落日と、それを支えようとし続けてきた老政治家の落日とが、シンクロナイズしたときであった」 この本の趣旨 イギリス帝国の展開と解体の軌跡をチ…

ショーペンハウアー『読書について』鈴木芳子訳、光文社古典新訳文庫、2013年

岩波文庫の同タイトルを読んだことはあったが、光文社古典新訳文庫で再読。 同時代作家のベストセラーよりも大家の古典を読むべき。 練られた思想によるテーマ性のある文章を読むこと。さらに読むだけではなく思索することが必要。 何も考えず粗製乱造された…

寺田寅彦『柿の種』(岩波文庫 1996年)の感想

大正9年〜昭和10年に寺田寅彦が俳句雑誌「渋柿」の巻頭第一ページに書いた即興的漫筆の寄せ集め。 以下「自序」におけるこの本の趣旨の説明。 …言わば書信集か、あるいは日記の断片のようなものに過ぎないのである。しかし、これだけ集めてみて、そうしてそ…

服部正也『ルワンダ中央銀行総裁日記』(中公新書、1972)

国際通貨基金から通貨改革のためにルワンダに派遣され経済再建を成功に導くはなし。 まえがきによるとこの本の趣旨は以下の二つ。 資源や国土の広さ等の不利な物理的条件も人間の努力によって克服しうることを示す。 日本人のアフリカ諸国に対する資源・市場とい…

稲野強『マリア・テレジアとヨーゼフ2世』山川出版社 2014年

ハプスブルク家の中央集権化についての内容。ヨーゼフ2世の強引な集権化があったからこそ、その反動として多民族国家を形成していた諸民族のナショナリズムが昂揚し、各地の独立運動につながっていたという流れ。私は学部の時の研究テーマが言語政策であり、…

トルストイ『復活』(上・下)(岩波文庫、2014)

地主貴族のボンボンが叔母の屋敷で働いていた小間使いをやり捨てる。女は娼婦に堕ちるが、無実の罪で裁判を受けることに。その際ボンボンが陪審員担当となったのだが、手違いにより冤罪になってしまう。ボンボンは今でこそ世俗にまみれているが、かつてはリ…

水本邦彦『村 百姓たちの近世』(岩波新書 2015年)の個人的雑感メモ

この本のテーマ 社会が村と百姓たちで満ちあふれていた近世とはどんな時代ったか。農業を中心的な生業とした私たちの多くの先祖(百姓たち)の暮らしぶりはどうだったか。村が近景であり日常生活の現場であった近世という時代。この時代の村と百姓の姿を観察す…

木畑洋一『二〇世紀の歴史』(岩波新書 2014年) 雑感レジュメメモ

この本の趣旨 19世紀後半から20世紀終わりまでを「長い20世紀」と設定し「帝国の成立と解体」という視点で叙述する。 以下個人的メモ 短い20世紀 ホブズボームの主張。20世紀を社会主義の成立と崩壊により捉える視点。1917年のロシア革命に始まり冷戦を経て…

池田嘉郎「2014 年ロシア= ウクライナ紛争の歴史的背景 」(じっきょう地歴・公民資料79号 p.7-10 2014)

今日も地道に教材研究をしていると出版社の方が教科書の売り込みにくる。昨日は山川、今日は実教。 こんな非常勤講師のところにきても教科書採択の権限はないぜ!といってやりたくなったが・・・ 問題集についてアレコレ言うと、営業は献本しますね〜と喜ん…

レマルク『西部戦線異状なし』(新潮文庫、1955年)

第一次世界大戦におけるドイツ軍の学徒出陣兵のはなし。 一兵卒が塹壕戦で戦った様子が一人称視点で書かれている。 塹壕での生活・病院・休暇・家族・連隊の様子なども描かれる。 1918年秋、主人公のパウル・ボイメルが死んで終わる。受験世界史では第一次世…

近藤和彦『イギリス史10講』(岩波新書、2013)

イギリスを「複合国家」として見なし「文化変容」の観点から歴史を叙述している。本文では「海の向こうからくる力強く新しい要素と、これを迎える諸島人の抵抗と受容、そして文化変容。これこそ先史時代から現代まで、何度となくくりかえすパターンであった…

橋爪大三郎、大澤真幸、宮台真司『おどろきの中国』(講談社現代新書、2013年)の雑感

日本人が中国に対して思う疑問点を大澤真幸が質問し、橋爪大三郎が答える対話方式。 中国は、「主権」国家ではないと断じたり、主権概念と冊封体制の対立を指摘したりと面白い。 特に歴史認識の相違に関する日本人の傾向についての話が印象深かったのでまと…

天児慧『中華人民共和国史』(岩波新書 2013)まとめ

この本の趣旨 革命・近代化・ナショナリズム・国際的インパクト・伝統の5つの観点から中国近現代史を俯瞰する。 著者の問題意識 「変わって変わらぬ中国」 中国には、激しく揺れ動く政策・権力的変動とその底辺にある容易に変わりにくい社会構造という強い重…

細谷雄一『国際秩序』(中公新書 2012年)

この本の趣旨 国際秩序を「勢力均衡」と「価値観の共有」という二つの要素で解き明かす。 国際関係の間に秩序がもたらされ平和になるにはどのような条件が必要か。その一つが「勢力均衡」で、各国が同程度の軍事力を保有することで、抑止力となり、戦争状態…

人類の歴史を変えた8つの出来事?・? 岩波ジュニア新書  2012

中高生向けに8つのテーマから歴史的背景を考えさせてくれる内容。 8つのテーマは、言語・宗教・農耕・お金・民主主義・報道機関・原子爆弾である。 そのテーマそのものを解説するのではなく、あくまでも歴史的な変遷を考慮して語ってくれる。倫理と世界史の…

秋田茂『イギリス帝国の歴史』中公新書 2012年

この本の趣旨 イギリス本国と帝国諸地域との関係性、さらに帝国を超えて行使されたヘゲモニー国家としてのイギリスの影響力に着目して、グローバルヒストリーを構築する「ブリッジ」としてのイギリス帝国史の意義について考えること 「長期の十八世紀」から…

成田龍一『近現代日本史と歴史学』中公新書 2012年

この本の趣旨 日本の歴史学界がどのような歴史観で近現代を叙述してきたかを3区分に分け、教科書叙述への反映と絡めて先行研究をまとめている。 雑感 歴史というものは書き手の歴史観によるものであり、同じ歴史を描くにしても様々な歴史があり、統一した歴…

松戸清裕『ソ連史』ちくま新書 2011年

資本主義の本質は絶え間ない利潤の追求。人間の欲望の解放とともに、貧富の差の拡大や階級対立、格差の再生産が行われていく。そんな資本主義に対し、かつて20世紀にはソ連という国家がその矛盾を克服しようとした。結果としてソ連は崩壊してしまったが、西…

羽田正『新しい世界史へ』岩波新書 2011年

この書物の趣旨 現在の高校世界史及び歴史学会は依然としてヨーロッパ中心史観であり、この現状に対し「地球市民」としての帰属意識を養成するための「新しい世界史」が必要だと説いている。 メモ 「世界史」とは何か。一般人は高校で習った世界史をイメージ…

岡本隆司『李鴻章』岩波新書 2011

この本の趣旨 李鴻章は、19世紀における中国清朝支配体制の変化に対し「垂簾聴政(すいれんちょうせい)」と「督撫重権(とくぶじゅうけん)」により応じた。これにより安定はみたものの、社会構造と政治体制の根本的変化とはならず、伝統的な東アジア国際体制(…

杉山正明・北川誠一『世界の歴史9 大モンゴルの時代』中公文庫 2008

高等学校の地歴科の中の「世界史」という科目における世界観はどのようなものになっているか。そもそも歴史記述というものは、各研究者の歴史観によって成り立ってるので、単一普遍の歴史というものはあるわけがない。どのような観点で歴史を綴るのかという…

和田光弘『タバコが語る世界史』山川出版 世界史リブレット90 2004年 27-90頁

②近世のタバコ イギリスへのタバコ導入 ジョン・ホーキンズ、1564年仏領フロリダ植民地でパイプ喫煙に触れて翌年これを持ち帰る パイプ喫煙は最初イギリスに、ついでオランダへと伝播し、三十年戦争を通じてヨーロッパ中に広まったため、これが世界へのパイ…

福田アジオ『日本民俗学の開拓者たち』山川出版 日本史リブレット94 2009年

この本の趣旨は、民俗学が成立する学問的系譜を概説するという内容。 近世における民俗への関心と明治近代の土俗学が柳田國男により統合され、学問として民俗学が形成され、弟子が育ってアカデミック民俗学が大学で研究されるようになったという展開。菅江真…

水島司『グローバル・ヒストリー入門』山川出版 世界史リブレット127 2010年

この本の趣旨 グローバル・ヒストリーと分類される研究の分類と、どのような研究が生まれ、どのような議論がなされているかの概略 グローバル・ヒストリーの特徴 あつかう時間の長さ 対象となるテーマの幅広さ、空間の広さ ヨーロッパ世界の相対化、ヨーロッ…

和田光弘『タバコが語る世界史』2004年 山川出版 世界史リブレット 1-27頁

タバコというモノの歴史 タバコの栽培方法 タバコの種子は繊細なため、苗床で育て、ついで畑に移植する。 生育にともなって花枝部の切除などをおこない、頃合いをみて幹ごと刈り取る or 下位の葉から順次摘み取って収穫する。 収穫した葉の乾燥はタバコ栽培…