読書メモ

トルストイ『復活』(上・下)(岩波文庫、2014)

地主貴族のボンボンが叔母の屋敷で働いていた小間使いをやり捨てる。女は娼婦に堕ちるが、無実の罪で裁判を受けることに。その際ボンボンが陪審員担当となったのだが、手違いにより冤罪になってしまう。ボンボンは今でこそ世俗にまみれているが、かつてはリ…

レマルク『西部戦線異状なし』(新潮文庫、1955年)

第一次世界大戦におけるドイツ軍の学徒出陣兵のはなし。 一兵卒が塹壕戦で戦った様子が一人称視点で書かれている。 塹壕での生活・病院・休暇・家族・連隊の様子なども描かれる。 1918年秋、主人公のパウル・ボイメルが死んで終わる。受験世界史では第一次世…

芝村裕吏『マージナル・オペレーション』1〜5(完結)(星海社FICTIONS 2012年-2013年)

ニートがミャンマーで少年兵を使役して民間軍事会社をするはなし。 作者の現地の取材に基づいてるらしく中央アジア・東南アジアの描写がとても良い。 途上国・新興国におけるスラム街の様子やストリートチルドレンを題材にしている。 希望のない子どもたちが…

近藤和彦『イギリス史10講』(岩波新書、2013)

イギリスを「複合国家」として見なし「文化変容」の観点から歴史を叙述している。本文では「海の向こうからくる力強く新しい要素と、これを迎える諸島人の抵抗と受容、そして文化変容。これこそ先史時代から現代まで、何度となくくりかえすパターンであった…

天児慧『中華人民共和国史』(岩波新書 2013)まとめ

この本の趣旨 革命・近代化・ナショナリズム・国際的インパクト・伝統の5つの観点から中国近現代史を俯瞰する。 著者の問題意識 「変わって変わらぬ中国」 中国には、激しく揺れ動く政策・権力的変動とその底辺にある容易に変わりにくい社会構造という強い重…

『冴えない彼女の育て方』を読んで消費社会に絶望だ・・・

おはなしの筋としては、地味子の世間的評価をあげようとするもの。 ただし、エロゲーやギャルゲーのヒロインとしての価値観によってである。 どうすれば「売れる」キャラクター表現を造詣できるかというメタ的な内容を扱う。 ヲタクの欲望や大衆消費社会を婉…

細谷雄一『国際秩序』(中公新書 2012年)

この本の趣旨 国際秩序を「勢力均衡」と「価値観の共有」という二つの要素で解き明かす。 国際関係の間に秩序がもたらされ平和になるにはどのような条件が必要か。その一つが「勢力均衡」で、各国が同程度の軍事力を保有することで、抑止力となり、戦争状態…

人類の歴史を変えた8つの出来事?・? 岩波ジュニア新書  2012

中高生向けに8つのテーマから歴史的背景を考えさせてくれる内容。 8つのテーマは、言語・宗教・農耕・お金・民主主義・報道機関・原子爆弾である。 そのテーマそのものを解説するのではなく、あくまでも歴史的な変遷を考慮して語ってくれる。倫理と世界史の…

秋田茂『イギリス帝国の歴史』中公新書 2012年

この本の趣旨 イギリス本国と帝国諸地域との関係性、さらに帝国を超えて行使されたヘゲモニー国家としてのイギリスの影響力に着目して、グローバルヒストリーを構築する「ブリッジ」としてのイギリス帝国史の意義について考えること 「長期の十八世紀」から…

成田龍一『近現代日本史と歴史学』中公新書 2012年

この本の趣旨 日本の歴史学界がどのような歴史観で近現代を叙述してきたかを3区分に分け、教科書叙述への反映と絡めて先行研究をまとめている。 雑感 歴史というものは書き手の歴史観によるものであり、同じ歴史を描くにしても様々な歴史があり、統一した歴…

羽田正『新しい世界史へ』岩波新書 2011年

この書物の趣旨 現在の高校世界史及び歴史学会は依然としてヨーロッパ中心史観であり、この現状に対し「地球市民」としての帰属意識を養成するための「新しい世界史」が必要だと説いている。 メモ 「世界史」とは何か。一般人は高校で習った世界史をイメージ…

岡本隆司『李鴻章』岩波新書 2011

この本の趣旨 李鴻章は、19世紀における中国清朝支配体制の変化に対し「垂簾聴政(すいれんちょうせい)」と「督撫重権(とくぶじゅうけん)」により応じた。これにより安定はみたものの、社会構造と政治体制の根本的変化とはならず、伝統的な東アジア国際体制(…

杉山正明・北川誠一『世界の歴史9 大モンゴルの時代』中公文庫 2008

高等学校の地歴科の中の「世界史」という科目における世界観はどのようなものになっているか。そもそも歴史記述というものは、各研究者の歴史観によって成り立ってるので、単一普遍の歴史というものはあるわけがない。どのような観点で歴史を綴るのかという…

ヘッセ(山本洋一訳)「クリングゾル最後の夏」『ヘルマン・ヘッセ全集』第11巻 臨川書店 2006年 137-197頁

暇つぶしに読む。文学のことはよく分からん。 筋書きとしては、既に名声を得た芸術家が絶えず挑み続けることに煩悶しながら、ついに遺作となる自画像を描きあげるというおはなし。というような感じ。 メモ 「実際のところ、こんな絵に価値があるのだろうか?…

大澤真幸『不可能性の時代』岩波新書 2008年

「現実から逃避」するのではなく、むしろ「現実へと逃避」する者たち―――。彼らは一体何を求めているのか。戦後の「理想の時代」から、70年代以降の「虚構の時代」を経て、95年を境に迎えた特異な時代を、戦後精神史の中に位置づけ、現代社会における普遍的な…

堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』岩波新書、2008 の感想

9.11以後新自由主義政策が推し進められ格差社会を生み出したアメリカにおける貧困層を描く。 新自由主義政策下の貧困層の様子を食料・行政・医療・教育・軍事の面からアプローチする。 アメリカの貧困層の現状を具体例をたくさん用いて暴き出す。 日本も例外…