田山花袋『帰国』(花袋全集刊行会『花袋全集第7巻』収録) の感想

山窩を題材にした小説。
ここに出てくる山窩は諸国を流浪しているが一年に一度故郷へ集うという設定。
この作品では、その故郷へ帰るまでの道のりが描かれている。
山窩の日常風景や生活、サーベルが象徴の官憲との関係について色々イメージできて面白い。

白い服を着た人たちも要領を得ないかれら種族をどうすることもできなかった。徳川幕府の潰れたのも明治の維新になったのも京都から東京へ都が遷ったのも、日清戦役があったのも日露戦争があったのも軍艦が出来たのも、飛行機が出来たのも、何も彼も知らないような彼らの種族には、何を言って聞かせても効かなかった。後には警官達も持て余してただ一刻も早く自分の受け持つ管内からかれ等をたちさらしむることのみ心がけた。