杉井光『神様のメモ帳2』(電撃文庫) の感想

ヒキコモリの幼女がトンデモインターネット技術を駆使して事件を解決する。彼女は人呼んでNEET探偵。

今回のお話はマネーロンダリングもの。マネーロンダリングが分かりやすく大雑把に説明してあるので、これを読んだ中高生の何人かは現代経済学に興味を持つようになること請け合いです。なりませんか?そうですか。話の筋は、2億円を抱えていた少女がヤクザに追い回されているのをNEETの力を駆使して助けるという流れ。

このはなしの注目点はその主人公の生き様。ゆとり世代で学校の勉強についていけず、他の事にも興味を見出せず、ただ生きているだけという少年。第一巻ではそんな少年を一人の園芸少女が救うのだが、その少女は事件に巻き込まれて自殺し、一命を取り留めるも植物人間になってしまう。そのため、主人公くんはそのことを重荷に抱え、自分が存在していいんだという贖罪を捜し求めていた。主人公くんは、目の前の現実から目を背けるために「とりあえず居場所をくれるから」とNEET幼女探偵の助手になり自己防衛をはかるのであった。

今回の第2巻は、主人公くんのそのような行為は欺瞞でしかないことが露呈してしまう。事件の大きさに尻込みして、自分は何も出来ない無力感を噛み締めながらファビョッていく姿は一読して損はない描写だ。そんな無力感を感じながらも押しつぶされないように懸命になる姿は涙をそそる。結局、主人公くんは主人公補正で機転を利かせ、一発大逆転に導いてくれるのだがね。今回の事件を通して、精神的に成長した主人公くんは植物人間から意識を回復した彼女さんに会いに行く勇気を得るのであったというオチだった。

<他の方々の感想>

神様の

ナルミのやるせなさが前面に出てきて、逆にニート色は薄くなった感じ。ニートって、記号以上の意味はないのかも知れませんね。捨てる神あれば拾う神あリということわざを思い出しました。

http://d.hatena.ne.jp/kenkaian/20070705/1183637775

話の内容を味噌汁的に説明しますと、一巻目の世界観にオッサンが好きそうなヤクザものを二丁ばかり賽の目切りにして投入し、『狼と香辛料』に対抗して経済小説的な味のする味噌をかなり巧妙な分量だけ入れ、沸騰する前に火を止めて器によそいます。薬味にアジアン少女やらお姉さんやらを振りかけて完成。お好みでドクペと一緒にお楽しみ下さい。

神様のメモ帳2:杉井光 電撃文庫 - Bダッシュが消えた日に

ニート探偵のアリスは贖罪意識の塊で世の中に救われない人がいるのは全て自分が無力なせいだと考えていて、その周りには時間と暇と技術を持て余して何をしていいのかわからず、かつアリスに萌えた連中が集まっているわけで。超常現象は絡んでないけど現実にはまず有り得ない救済システム、それを構築するためにニートというキャラ設定は必要不可欠だったんだなと。