坂口安吾『牛』(ちくま文庫『坂口安吾全集』収録) の感想

大方の話の筋はこんな感じ。
牛のような体格で頭の働きも悪い主人公。牛とあだ名を付けられ馬鹿にされている。あるとき彼は、高校生が集団レイプをしていると ころを目撃する。牛は高校生を追い払うのだが、女性からメンバーの一人だと勘違いされて騒ぎ立てられる。小さな村に噂はたちまちのうちに広まり、犯人が捕まるまで神社の拝殿に幽閉される。幽閉中、ある女らしき人物からキャラメルを差し入れされたり手紙を貰ったりして励ましを受ける。犯人は捕まり無事に解かれるが、差し入れをしてくれた女性は精神異常で見栄えも悪かった。


「しかしだねえ。彼は酒を知らず、タバコを知らず、映画を知らず、ダンスを知らず、パチンコを知らず、女を知らず、飽くことなく校門をくぐり必ず教室に出席しとるよ。何年おいても同じことだね。」
「果たして彼は目的があって校門をくぐっているのか」
「果たして彼に生きる目的があるのか」

牛は話を聞き終えると、片手に抱えていた着類をポロポロと取り落とした。
つづいて片手のカバンを落とした。それはズシンという重い音がした。彼の脳とは反対に何かがギッシリと詰まっている音だった。



もはや大学に目的など見出せないが、惰性と倦怠と義務感と焦燥によって毎日毎日律儀に講義にだけは出席している。
だからといって教授の喋ってることが頭に入っているというわけでもなく、ただ徒に時間を浪費していく。
だから古い小説を読むのです。
読むといっても、休み時間を潰すときだけですけど。
こういう小説の本質的な問題とか、文学史的位置付けだとか、解釈の仕方だとか、そういうことは私には分かりません。
ただ静かに読んでいるだけです。
従妹「麻薬みたいなものですか?」
私 「いいえ、救いです。」