健速『あの日々をもういちど』(HJ文庫)の感想

本の帯にもあるように人気エロゲシナリオライターの健速さんの処女小説。

健速さんといえば、老舗F&C『こなたよりかなたまで』と『ゆのはな』に代表されるPULLTOP遥かに仰ぎ、麗しの』の本校系(殿子、梓乃、みやび)のシナリオで有名です。かにしの本校系とこなかなは大体次のようなおはなし。



話の内容としては、擬似史的な伝奇・妖怪もの。
鬼を自分ごと封じ込めた流は、400年の時を経て復活する。その際に鬼は近代兵器により抹殺された。時代の流れとともに全てが変わってしまい、自分の力がなくともいとも簡単に妖怪を殲滅できる文明の力を目の当たりにする流。そんな彼は自分の存在意義の肯定ができず、鬱々と日々を暮らすようになっていった。
そんな彼の目の前に現れたのが、かつて情交を育んだ土地神夕凪。彼女は流に父親を殺された恨みで時を越えたのであった。夕凪の存在は流を変える。いつだって、男の存在意義は誰かを守るもの、つまりは、好いたおなごが存在意義なのさ。何時の時代でも憎いってことは愛してることの裏返し、それこそは愛憎、Pity is akin to love.
夕凪は、心の底では流れを愛していたのだ。憎んでいたのは父親との対決の時も鬼との対決のときも自分を頼ってくれなかったから。そんなわけで、互いに相手のなかに存在意義を見出したふたりは拳と拳の殴り合いの末に晴れて懇ろな仲に。ここらへんはニヤニヤですな。だが乳繰り合うのも束の間、鬼は完全に抹殺されてはいなかった。
力を取り戻した鬼が再び迫り来る。だが今度は流には夕凪がいる。みんなのちからもあわせて大勝利。平和が戻った後の夏祭りをみて、どんなに時代が変わってしまっても、二人なら歩んでいけるとはっぴーえんど。めでたし、めでたし。

他の人々の感想

400年語の世界に蘇って戸惑い、存在意義を失っていた流が、夕凪と再会することで生きる意味を持っていくのが良いのですよね。
たとえ夕凪が親の仇のために追って来たのであっても、喜びを感じている流が本当に生き生きしているのですよね。
そして、本当の気持ちに気づく2人がもう。
想いを伝えるシーンなんて最高です。
互いに想いをぶつけあうところがたまらないです。
そして、甘える夕凪の可愛さといったら。

400年経っていた驚き、あまりのジェネレーションギャップから存在意義を見失う。そんな中で心残りだった妖狐さんが追っかけてきたことで、恨まれながらも生きる目的を見出す。やっぱりこの人は心理描写が上手いですな。過去を懐かしみながら哀愁を感じさせるシーンは読んでるこっちも淋しさを感じました。

鉄の漢というか、一意専心の単語そのままな主人公が特徴の人なので、そういうのを期待していたんだけど、今回の主人公はちと一般人寄りだったなぁと。
初のラノベってことで無難に仕上げたとすると、ファンからするとかなり不満。
なんだけど、まぁ狭く深くなエロゲじゃなくて広く浅くのラノベだからなぁ…。
そう考えるとこうなるのかなぁ。

う〜ん、イマイチ。
全体的に台詞回しがイマイチ。「それはちょっと・・・」と言いたくなるくさい台詞が多いのも気になるし、口調も若干統一感にかけていて、違和感のある台詞がいくつかあるのが残念。あと夕凪が折角の狐耳なのに、それを萌え要素として活かしきれていないのが勿体無い。