武田泰淳『快楽』(筑摩書房『武田泰淳全集第十七巻』収録) の感想メモ

時代背景は、大戦前の気配が色濃くなっていく日本。
仏教と社会主義がテーマ。一切衆生を掲げる仏教と全て等しい労働者階級がの関係性について云々。
主人公の柳は大きな寺の坊ちゃんで仏教と社会主義について思索していく。
柳は、僧であるにもかかわらずエログロや美味しい食べ物が大好きで、後ろめたさを感じながらも分かっていてやっている。
誰しもが仏教について学んだときに、「本来は肉食・妻帯禁止であるはずなのに、肉食ってるし妻がいるじゃん!」と思うだろう。
この主人公:柳がそんな子供っぽい考えを論理的に突き詰めていくところが面白い。
俗世にとらわれることを気恥ずかしく思いながらも、若者らしく強がり、自己弁明に走るが、結局は無反省・無意識的にしかなしえていないところも生々しい。