雑録

ヘッセ/高橋健二訳『クヌルプ』(新潮文庫)の感想

ヘッセの小説は主人公がアウトサイダーなものが多いので、大好きです。
『クヌルプ』もご他聞に漏れず、主人公はアウトサイダー

定職に着かず放浪しながらも、旅人としての天分により旅先ごとに定住者に暖かく受け入れられる男:クヌルプ。職を持ち家族を持つ定住者が感じる幸せとそれから生じる惰性と倦怠の中に、旅人としての外の風を持ち込む稀人信仰。彼目線の定住者を眺める傍観者的立場で描かれる我々一般市民の生活は抉られる思いがある。そして傍観者で「生活」を軽蔑するが故に、溶け込んでいけない態度も悲哀を感じる。最後に病に冒され散りゆくシーンで、放浪者としての生存価値を神と対話するところは神々しい。結局、後悔しながらも自分の生涯に満足して死んでいくその姿には自己肯定がうかがわれる。