清野静『時載りリンネ!』(角川スニーカー文庫) の感想

読んだ活字(書物に限る)に比例して時間を止めることができる妖精さん「時載り」をめぐる物語。
話の視点は妖精さんの幼馴染の男の子。よくある巻き込まれタイプで傍観者としての視点。

話の展開

主人公リンネは、人間と「時載り」のハーフの女の子。よくある種族間問題として「人間とは時の流れが違う」ことに悩んでいる。そんな彼女はシンデレラコンプレックスな「いつか白馬の王子さま」が如く、非日常の冒険を望んでいた。そして彼女に降って沸いた冒険。幼馴染でちょっと気になる男の子と問題解決に望む。その冒険とは謎の本の落とし主を探すこと。だがその本は「あらゆる情報を認識できる存在の後継者」を決めるキーアイテムとなっていた。その本に選ばれたリンネは私利私欲のために本を欲する「時載り」をやっつける。そして後継者となった後は、活字文化に対して今までとは違った認識を示すようになる。

キャラクター表現

  • 活字文化の妖精「時載り」

リンネたちの「時載り」は書物の活字の情報しか読み取ることができない。だが「時載り」が進化すると「あらゆる情報の認識」を行うことができる。ここら辺が現在の文字媒体を皮肉ってて良い感じなの。情報の認識を、書物という活字で成す状態から一歩進んで、新聞・ネット・ラジオ・テレビなどのマスメディアから情報を読み解くことを示唆している。

  • 言霊信仰

文字媒体の文化の発展は、文字以前の暗誦や口伝で伝えられてきた神話性・民族性を喪失させた。だがその一方で、感情を口に出すという「言霊信仰」は一定の地位を得ている。そして、この物語の結末での勧善懲悪シーンでは、文字の認識の象徴たる悪者の「時載り」が、この「言霊信仰」に負けるのである。