遠藤周作『道草』(新潮社『遠藤周作文学全集第五巻』)

海外旅行でエルサレムに寄った夫婦のはなし。遠藤周作の夫婦観というものは結構現実的に辛いものがあって、他人が一緒に時間を過ごせば衝突ぐらいするわな。で、エルサレムに寄ったのは娘がミッション系の私立中学に通っているので尼僧の覚えを良くする為といった打算的なもの。そんな黄色人種のミーハー夫婦の視点から聖地はどのように見えるかを描いている。信仰も違う日本人にとって聖地は単なるツマラナイ場所にしか過ぎず、一時はキリスト教に関心を抱いていた時期があったものの、そこから次第に興味をそがれていき、今では全く無関係なものでしかない思いが書かれている。