遠藤周作『雑種の犬』(新潮社『遠藤周作文学全集第五巻』)

遠藤周作の犬に対する価値観が見られる。『深い河』における犬の位置づけとよく似ていることから、この作品が受け継がれたのか?幼少期に大連に居た時にココロの支えだったのが犬という存在だったというわけだ。両親の仲が悪く、一緒に夕飯を迎えてもその雰囲気はギスギスしたものであった。母親は父親について文句を言い、息子を懐柔しようとする。時たま優しくしてくれる父親に対しては、母親を裏切ってしまうかのようでうまく接することができない。そんな家庭生活にとって彼の唯一の居場所となったのが犬であり思い入れがあるのだが、妻も息子も一向にその思いを理解してくれはしない。