ソルジェニーツィン/木村浩編訳『胴巻きのザハール』(岩波文庫『ソルジェニーツィン短篇集』内収録)

一人称回想小説。自転車旅行でのクリコヴォの戦いの古戦場について語る。
・クリコヴォの戦い
1380年ドミトリー・ドンスコイがドン河流域で、キプチャク・ハン国のママイ大遠征軍を打ち破り、タタールのくびきに初の大打撃を与えた。


古戦場では記念碑を守るザハールという男が登場するが、彼は胴巻きの中に感想録と斧を装備しているだけで、14世紀におけるロシアの重要転換期ともいえるこの戦いの跡をきちんと整備しないソビエト文化相に対しての不満がうかがい知れる。

何世紀も過ぎ去ってしまうと、歴史の紆余曲折も遠目には一本の線に伸ばされてしまい、ぴんと張られた測量師の網のようにみえてくるものです。