雑録

ホーソン/鈴木重吉訳『緋文字』(新潮文庫)

イギリス植民地アメリカのボストンが舞台。プロテスタントの戒律の厳しい中における「姦淫」が題材となっている。主な登場人物は3人で、姦淫により女児を孕んだヘスタ・プリン、女を犯した牧師アーサ・ディムズデイル、ヘスタの元夫で老医師のロゥジャ・チリングワスを中心に物語が展開していく。


ヘスタは男に通じ子供を孕んでしまった。プロテスタントの戒律が厳しいニューイングランドで父親がいない私生児は大問題。大衆の前で見せしめされ、衣服の胸に姦淫を意味する緋色の「A」の文字を身につけるように宣告されるも、犯した男の名だけは決して言わなかった。ヘスタの夫であったチリングワスは犯した男を一生呪うことだけに生き甲斐を見出していく。そして7年後、ヘスタは裁縫の才で女児パールを育てながらも、その容姿は罪を贖う慎ましいものに変わっていた。一般大衆もヘスタに哀れみを示すようになり、風当たりも弱まり、逆に罪を償う姿として好意的に見られるようになっていく。一方、ヘスタと通じた男は優秀で将来有望な牧師であった。罪を償う機会も与えられず、自分で自分を罰したが効果は見られず、年を追うごとに悲壮感がましていった。だがこの悲壮感により、ディムズデイルに一層カリスマ性を与えていた。チリングワスは神経衰弱気味なディムズデイルの専属医師となり、健康を維持させながらもその精神に呪いをかけていく。


神の教えに背きながら神の教えを説くことに、ついに耐え切れなくなった牧師は精神崩壊を起こしそうになる。だが、それを救ったのが緋文字のヘスタ。戒律の厳しい宗教に縛られる必要があるのかと励まし、ついに現在の地位を棄てさせるよう決意させる。最後の仕事として牧師は祈祷のビッグイベントを成功させ名声を得るが、その終わり際にヘスタが見せしめにされた台に登り、自らの罪を大衆の前で告白して息絶えるのであった。その後、復讐を遂げたチリングワスは一気に老い、ヘスタはパールを連れてボストンを出て行った。だがヘスタはもう一度戻り、緋文字「A」を胸にしたまま一生を過ごしたのだった。