杉井光『さくらファミリア!』(一迅社文庫)の感想・レビュー

聖書比較による解釈の相違をモチーフにした転生モノ。
エス=キリストが女人化です。キリスト教徒が読んだらどう思うんだ?コレ。

a) 内容のおおまかな展開

主人公の祐太はユダの生まれ変わり、しかしその自覚はなかったの。そんな祐太のもとへ神の子の転生である双子の姉妹エリとレマが訪れる。ユダが銀貨30枚でイエスを売った金を資本に高利貸しが設立されたという設定で、神だの悪魔だの異形の存在に金を貸し付けており、イエスの転生であるエリとレマも莫大な借金を背負ってしまう。借金返済のためには祐太の中のユダの記憶が重要だとか。ユダの死因についてはマタイ福音書使徒言行録で記述が異なるので、それをハッキリさせ、祐太の前世の記憶を取り戻させるため、ガブリエルやルシフェルが送り込まれてくる。結局はヤハウェが黒幕で、神様の借金返済のために全てが動いていた。ヤハウェの目的は聖書の売り上げで借金を返すこと。現在における聖書の売り上げ暴落の理由を記述の曖昧さに求め、聖書が間違ってちゃいけないと原理主義を貫いていたというわけ。つまりは、祐太にユダの死因を思い出させ、マタイ福音書使徒言行録かのどちらが正しいかをハッキリさせ、その死因と同様に祐太を殺そうとしていたのであった。

b) 杉井作品におけるツンデレヒロインのキャラクター表現について

杉井氏の作品は、ニート探偵・ツンデレバンド・伝奇ハーレムと読んできたが、「ばかっ」とか「〜と思う!」という言い回しが多様されている。特にツンデレ系キャラが事あるごとにテンプレ「ばかっ」という台詞を使ったり、根本的に表現が同じだったりと、違う作品の違うキャラでもおんなじ様なキャラクターが量産されている。特にツンデレバンドのピアノツンデレと伝奇ハーレムの不妊症許婚着物少女と似非聖書のツンデレ神の子は殆ど原型が一緒でマイナーチェンジしてるだけな風に感じ取れる。主人公が奥手・朴念仁で愚痴愚痴と言い訳して中二チックに悩むというキャラ付けで、それに対して主人公に惚れてるツンデレの思いが一方通行で気丈にツンツンすることによって、ようやく主人公が本気になるという表現も王道。