内村靖二郎『クダンの話をしましょうか2』(MF文庫J)の感想・レビュー

一巻目を読んでいないが、内村氏の作品なので某黄色い古本屋で保護。
妖怪「件」を女体擬人化した作品。妖怪女体化といったら内村さん。


妖怪「件」ちゃんは、予言が出来る女の子。けど件って予言すると死んじゃうよね。だからこの物語では予言をした人物から「忘れ去られる」ということで死と同義にしている。作品の舞台は北海道、件ちゃんは自分が「忘れ去られる」という妖怪の呪いから開放されるため、精霊コロポックルを探します。その過程でコロポックルを軸に3人の人物が巻き込まれていく。二十歳の女性と件ちゃんの友達の女子高生と不登校気味の中学生の少女。女子高生は物語の根幹に絡んでこず、好きになった男が件ちゃんのオトコでファビョってる。そして、女子高生ならではのはぶられたくない症候群とかを発動し友達関係に思い悩む。最後は件ちゃんの記憶を忘れるものの、そこで初めて友達とは何かを知る。けど忘れちゃう。


コロポックル伝説の方。この地方では、子供しか遊べない秘密の空間が存在していた。そこの壁には手形がいっぱい。なんとその手形からは、自分の思いの声が聞こえるよ。けど大人になっちゃうと聞こえなくなるの。二十歳のおねーさんは思い出を探しに手形を発見するけど声がもう聞こえなくんっちゃってた。それって寂しいことじゃない?不登校のおにゃのこは中学生でも手形の声が聞こえたよ。じゃあ街中全部に手形をつければ大人になっても手形を忘れらなくなるんじゃね?とひとりのガキが決起する。迎合した子供たちはあちらこちらに手形をつけまくるがそこには自己顕示欲しか感じられないの。そこで少女は気づくのだ。大人になることは子供の純真さを捨てること、世の中に適応する公民的資質を獲得するために。そこで少女は自分の手形をガキの眼前に示す。そこにはどす黒い感情が渦巻いており、大人は手形を残せないのだと分からせる。結局、ガキも少年へと脱皮し大人の階段昇っちゃって少女と結ばれるわけよ。そして件ちゃんは次の土地へと旅立つのであった。