みかづき紅月『ぶよぶよカルテット』(一迅社文庫)の感想・レビュー

音楽の方向性が違う二人の姉妹と接しながら自己を晒す強さを知る少年のおはなし。


主人公の少年は何よりも目立つことを嫌う事なかれ主義者。それは小学校の時に習っていたピアノのトラウマから、異端であることの恐怖を植えつけられていたのだ。そのため、大成しプロの高校生作曲者としてブイブイ言わせている幼馴染と話すことさえ出来なくなっていた。そこへ現れるのが物語を動かす第三者の少女な稀人信仰、炉利少女。彼女は、音楽界の秩序をぶち壊した音楽家たちを崇拝しており、格式ばった演奏会を嫌っていた。曰く、音楽っちゅーもんは喫茶店で飯食ったりしながら聞くBGM、イージーリスニングみたいなもの大好きなのだとか。そんな少女に目をつけられた少年は、毎日巻き込まれがたの慌しい日々を送る。少年は炉利少女と過ごしながら、彼女をまっとうな人間にしようと画策する。だがそんな作戦は見抜かれており、炉利少女の芸術家友達であるレズ乳少女から普通の人間では芸術家は理解できないから近づくなと宣告される。折しも場所は、観衆飛び入り参加可能な小音楽会。それにもかかわらず、場に馴染めずに参戦できなかった少年は悔しさを噛み締めながら炉利少女の前を去るのだった。


炉利少女のおかげで自分を曝け出す楽しみを知ってしまった少年は少しずつ自己変革を試みる。そしたらなんと話せなくなっていたツンデレ幼馴染とも話せたよ。ツンデレはなんと炉利少女の妹。音楽の格調とプロ意識を自覚するツンデレは、姉の影の音楽が自分を否定されているようで嫌だったの。しかも、幼少時にツンデレと少年はピアノの連弾をするほどだったのに、少年だけさっさと音楽から手を引いたのもにも不満を抱いてきたわけだ。奇しくもツンデレ幼馴染と和解できた少年は、炉利少女との和解を試みる勇気を得る。そうすればツンデレ少女と炉利少女の和解も成立するしね、一石二鳥。よーし、文化祭で出し物だしちゃうぞ、ミュージカル。衝突を繰り返しつつも団体行動でひとつのものを作り出すということは、思いを強くするということ。ましてや男女間ならばそういった気持ちが恋愛感情にも変化すること請け合い。炉利少女、ツンデレ幼馴染、乳レズ少女を次々と落としていくエロゲ主人公。無事に文化祭を成し遂げ、姉妹の和解も成立し、ハッピーエンド。