ウォーラーステイン/山下範久訳「世界システム分析の史的起源―社会科学の諸ディシプリンから史的社会科学へ―」(『入門世界システム分析』藤原書店)

  • 内容:世界史システム分析という分析の史的起源の説明
    • 世界システムの出現:19C半ば 資本主義的経済世界=経済の論理が要請する不断の資本蓄積
  • 社会科学の社会的起源
    • フランス革命⇒政治体制の変化の正当性+国民主権⇒政治的変化の根拠・「国民」の存在とその意思決定⇒社会科学の誕生
  • 科学としての歴史学
  • ランケ wie es eigentich gewesen ist 「それが実際に起こったがままに」
    • 歴史学の方法の確立:対象の出来事が書かれたときの文献を探す
      • 書かれた文献⇒文書が存在する地域(英米独仏伊)
      • 地理的・時間的境界をどのように引くか?⇒「領土」と「出来うるだけの過去」⇒ナショナリズム感情の強化
    • ランケらは人文学の学部のひとつとした
      • 科学的法則の発見や仮説の定式化には関心を持たない。
  • 経済学・政治学社会学
    • 歴史学が過去の一回性を重視するのに対し、現在を認識するため経済学・政治学社会学の登場
      • 19Cのリベラリズムイデオロギーが近代性を市場と国家と市民社会と定義
      • 法則性を持って機能、経験的分析と帰納的一般化によって認識されうる
        • 歴史学=個性記述的個別科学(社会的現象の一回性を前提)
        • 経政社=法則定立的個別科学(科学的法則を追及する)
  • 「近代」の外部と社会科学 ― 人類学と東洋学
    • 4つの個別科学(歴史学・経済学・政治学社会学)は西洋のものという概念
      • 未開部族には「人類学」
      • 停滞した高等文明には「東洋学」
  • 1945年の転機
    • アメリカ合衆国の覇権:米の大学システムが世界で最も影響力のある大学に
    • 第三世界の自立:政治的騒乱とジオポリティクス上の自己主張
    • 世界の大学システムの拡大:世界=経済の経済的拡大と民主化の強力な進展
  • ディシプリンの溶解と4つの論争
    • 4つの論争により社会諸科学の壁が溶解する
      • 従属理論
      • アジア的生産様式
      • 移行論争(封建から資本主義への移行)
      • アナール学派による全体史
    • 史的システム
      • ミニシステム;互酬=一種の直接的な贈与と返礼の関係
      • 世界=経済;再分配=財が社会的階梯の底辺から頂点へ、それからその一部が再び底辺へ
      • 世界=帝国;市場=公的な場で貨幣の形態で交換がおこる。
  • グローデルからの2つの影響
    • 自由市場の領域と独占の領域の区別
    • 社会的時間の多元性、構造的な時間「長期持続」
      • ひとつの史的システムの持続、永遠不変ではない。
      • 単線的な歴史の発展段階の否定
  • 単一の学としての史的社会学
    • 社会科学の伝統的な境界に対する挑戦
      • 世界システム分析は、ロング・デュレにわたるトータルな社会システムの分析
      • 世界システム分析は、多学科協働的ではなく、統一科学的