タペストリー 潮見ひかりシナリオの感想・レビュー

タペストリーは主人公が不治の病で死ぬおはなし。死生観を描いた作品ではナルキとこなかなが有名かな?前者はヒロインが不治の病という運命から逃れるために自殺する『ナルキッソス』。後者は好きな女へ筋を通すために徹底的にフラグをクラッシュする『こなたよりかなたまで』の佳苗ルート。こういう「死を扱う」作品では安易に奇跡やご都合主義に陥らず、いかに主人公が死ぬまでにどういった時間を過ごすのかというホスピス=ケアをしっかり描いて欲しいもの。その点を鑑みてもタペストリーは結構秀逸だと思われるよ。共通ルートが割りと長く、主要登場人物全員が主人公の死を知ってしまう日常パートまでが共通で、その後ルート分岐。

主人公のキャラクター像と共通シナリオ


主人公のはじめちゃんは手芸の腕は天下一品。手芸部で穏やかなときを過ごしながらどこまでも日常が続くかと思いきや、医者から余命半年を告げられる。実感が湧かないはじめは、自分の死は周囲に押し隠し、最後まで日常を享受することを選ぶ。自分の死を怖れながらも「死」という時までどのように過ごしたらいいのかしらん。みんなに心配されたり驚愕されたりしたら、死に向きあわなければならなくなっちゃうの。みんなに死を隠すことで、自分はその死を受け入れたと思い込み逆接的に目を背けたというわけさ。はじめちゃんがみんなに死を打ち明けられるには勇気がいるの。はじめちゃんが余生を楽しもうと努力する中、周囲の人物ははじめが何かを隠していることに感づいていく。学園祭の企画・部長候補争奪戦・部室追放防衛戦・後輩メイド喫茶バイト編・ツンデレと仲直り編を経て、部員全員がはじめの死を知ってしまうことになる。死を隠して最後まで日常を大切にしようとするはじめの心意気を汲み取って部員メンバーで思い出作りのために海へと遊ぶ。だがその合宿の帰りにはじめは倒れてしまうのであった。はじめが死ぬことを知っていた部員たちであったが、改めて死の恐怖を突きつけられる。死に行くはじめに対してできることは何かしらん?それぞれ思いを秘めたまま、好感度高いヒロインごとに個別ルートへ突入していく。

ひかりシナリオのキャラクター表現とフラグ生成過程


潮見ひかりははじめの幼馴染の大食いキャラで明るく元気。いつもはじめちゃんの後ろをひよこのようにくっついて歩いているよ。はじめちゃんに惚れてきゅんきゅんしてるけど、幼馴染としか見てもらえなくてちょっと残念。幼馴染モノ特有の関係性変化を願っており夜な夜な秘所を濡らす日々。しかしそんな穏やかな日常も崩れ去る。はじめちゃんが隠していた診断書をラブレターと勘違いしてひょっこり覗き見。しかしそれははじめの余命が半年であるという事実を突きつけるものだった。死を隠すはじめの思うようにさせてあげようとひかりは精一杯知らないふりをする姿がいじらしい。しかし、そんな精神状態は長くは持たない。ひかりの好感度が高いと、はじめが合宿後に倒れたときに関係性変化を望むようになる。はじめちゃんが死ぬその日まで一緒に時間を過ごしたいのという健気さよ。そして告白にいたる、はじめからしてみると自分の病気は誰にもばれていないと思っており、ひかりの告白には応えられない。余命半年で死ぬのに女と付き合うということはその女を傷つけてしまうのではないかしらん?ひかりを傷つけないためにもこの告白を承諾することはできまいて。はじめはひかりの告白を有耶無耶にしてしまう。




しかし、人の為、みんなの為といいながらそれは自己満足でしかなかった。しかしきっぱりと「好きじゃない幼馴染のままでいよう」とは言い出せなかくて、返事をせずに遠ざけることに決める。ひかりからそれとなく離れていき、はじめと幼馴染でひかりに好意を抱いている自治会会長に後のことを頼んで戦後処理をしていく。それでもまとわりついてくるひかりに痺れを切らしたはじめはついに強姦にはしる。はじめにどんな返事をもらっても「一緒にいる」ことが目的だったひかりは精神的ショック。その後、望みどおりひかりは離れていったのに、はじめの心はどこかぽっかり空いて虚しさ炸裂。嗚呼、ひかりに恋をしていたんだと自分の心情に気づくのであった。好きな子を遠ざけることで好きと気づいたはじめは、なおのこと未練を残さずスッパリと日常を切り捨てようとする。手芸部まで辞めると言い出し、部員メンバーに痛烈な宣告。手芸が好きなのは俺だけで、みんな手芸が好きなわけじゃないんだろうと糾弾する。これでもう未練はないと意固地になるが、そこに駆けつけるのは恋する乙女パワーで精神ショックを乗り越えたひかり。はじめの苛立ち・寂しさ・死への恐怖などの負の感情を暖かく包み込むのだった。はじめはひかりになら弱さを晒せることに気づきハッピーエンド。文化祭も協力して作品を仕上げ死への恐怖に立ち向かう。死に至る最後まではじめと一緒にいたひかりは子種を授かり死を見取る。はじめの人生は無駄でない、だって自分に子どもを残してくれたんだからとハッピーエンド。クォリティー=オブ=ライフを良く描けたシナリオでした。