1.はじめに
- この文章の目的
- 「1980年代に入って直面している国家や国民の枠組み変動に関する諸問題」および「わが国において強調されている国際化」の二つの面にスポットを当て、「これらの国家や社会のマクロ的変動の中における社会科教育の在り方」について考察する。
3.日本における「国際化」のとらえ方
(1)国際化とinternationalization
- internationalization:他の国や地域などを国際的な管理下におく。
- 日本の「国際化」:日本や日本自身が国際的な関係に置かれるようになり、日本と諸外国との交流や相互依存を強める過程を示している。
(2)国際化の定義をめぐって
4.社会科における「国際」のとらえ方
(1)教科の国家・国民による存在被拘束性
- 各国の教育内容は自国中心の立場に基づく目標・内容を持って組織されている。
- 教育内容の基準を決定する主体や教科書などの教材・教育課程の運営などは、種々の法令に基づいており、教育内容は長期的に見ると、当該国の歴史的・文化的所産として決定されている。
- 存在被拘束性を帯びることは避けられない
(2)学習指導要領に見る「国際」
- 昭和20年代、昭和30年代〜40年代、昭和50年代以降の三つの時期において、その当時の社会の「国際化」に合った形で、国際化学習のとらえ方が異なっている。
- 昭和30年代以降、国際理解と並行して日本の文化や伝統に対する尊重が強調されてきている。
- 国際社会全体を捉えるよりも、日本と諸外国との関係やつながりに焦点を当てた並列的な関係認識の方法が企図されている。
5.「国際化」と社会科における認識の方法・内容の課題
(1)認識におけるフレームワークの重要性
- 「国際化」問題の事象について説明するには何らかの準拠枠が必要になる。
- これらのフレームワークは、学習過程では対象を扱う視点や観点として現れる。
- 社会的事象を捉える視点にどのような視点が考えられるか、既存のとらえ方がどのような視点と方法に基づいているかを批判的に吟味する学習が必要。
(2)関係の双方向的な認識
- 「国際」の関係やつながりが、どのような性格を持った関係であるか。
- 相互依存には「対称的な相互依存」と「階層的な相互依存」が存在する。
- 相互依存関係の理解には、自国の対外依存および諸外国の対外依存、それぞれの特質を理解しなければ、相互依存関係の本来の姿をとらえたことにはならない。
(3)文化とアイデンティティ
- 国際理解教育で必要なのは、単に他の国や地域の文化を理解することではなく、文化の国際関係に果たしている否定的な機能をまず理解させることである。さらに、この文化の否定的機能を冷静に見据えると、自国文化を対象化して、できるだけ客観的に理解することの方が重要である。
(4)人権学習と価値
- 社会科は科学的方法への信頼という時代思潮の影響もあって、価値や思想に関する内容を遠ざけてきた観があった。
- 社会科において人権学習をその基盤にまで掘り下げるためには、社会を単に制度として捉えるのではなく、生活や行為としてとらえる。
- 方法としては、科学的説明だけでなく、生や生活の意味に着目した解釈や了解の方法を取り入れることが必要。