山田博文「金融ビジネス最前線を探る」『これならわかる金融経済』大月書店 11-28頁

0-1現代金融ビジネスの最前線

0-1-1 1億ドルを瞬時に売買
  • 20世紀末の金融取引
    • 手持ちの資金を短期間のうちに、積極的・攻撃的に運用する。
    • マネーを右から左へつぎつぎに回し、瞬時にして売買差益を得ようとする「マネーゲーム」。
    • cf.以前の金融経済
      • 金利生活者」型の利殖方法:保有資産の運用利回りをじっくり待って利子や配当を得る。
  • 金融取引の特徴
    • ゼロ・サム・ゲーム/ハイリスク・ハイリターン
      • 安く買って高く売る
      • 何か新しいモノや価値を創造するのではない。
      • ある時点で、市場に集まった既存のマネー・富を自分たちに有利に配分するだけ。利益と損失を差し引きした合計はゼロになる。
0-1-2 24時間眠らないマーケット
  • 地球の自転にあわせて市場が開くので価格変動を常に注意する必要がある。(具体例;外国為替ディーラー)
  • 相場が上昇・下落するごとに売買取引を成立させ少しでも多くの売買差益を稼ぎ出そうとする。
  • 国境を越えて24時間休むことのない連続したビジネスが地球的な規模で営まれる時代が到来したとを意味する。
0-1-3 時間と空間を突破するビジネス
  • 金融ビジネスの特徴:ITによる時間と空間の制限の突破
  • 製造業の終焉
    • 物質的財貨の生産・販売による利益追求は、原材料の調達からはじまって生産活動に勤しみ、そこで生産された製品をマーケットに搬入し、ようやく顧客にありつき、製品が売れて初めて利益が実現される。
    • 時間がかかる、工場の立地や製品を搬入するマーケットの場所、といった空間的な制限を受けてしまう。
  • グローバル化
    • 企業や金融機関のもとに集積された巨大マネーは、資本主義経済のもとでは、利殖先を求めて、国境を越えた資本としての運動を展開していく。
    • 世界中の株式や土地や各種の商品、さらには通貨そのものに投資され、より大きな利益を追い求め、利殖を繰り返す運動を展開する地球的な規模での資本の運動。

0-2 20世紀末の問いかけ

0-2-1 一各国経済危機を誘発した巨大マネー
  • ヘッジファンド:巨大マネーをグローバルに運用する投機組織
    • 連鎖する世界経済危機の発端は、巨大マネーの大掛かりな通貨投機にある。
      • 投機=株式、不動産、通貨、各種の商品などの価格変動を利用した取引によって、その売買差益を稼ぎ出そうとする経済現象
      • 20世紀末の新しい経済現象では、一国の為替介入をも失敗に帰してしまうグローバルな巨大マネー投機
    • ヘッジファンドの場合、私的に資金を集め、私的に運用しているので、金融当局の規制から逃れており、情報開示が成されていない。
    • 元本を上回る規模で資金が運用される。
  • 投機戦と外資依存の国々
    • ヘッジ・ファンドや巨大金融機関が各国の為替取引を先取りしつつ大規模な投機戦を仕掛けだ場合、外資依存不安定経済運営諸国は深刻な経済危機に陥る
0-2-2 投機マネーのターゲット
  • 外資依存の輸出志向型工業化
    • 日本や欧米の外資を導入し、輸出産業を育成し、輸出ドライブをかけつつ経済を成長させ、それによって新たに外資を呼び込む
    • 各国通貨の安定/為替リスク→通貨の下落や切り下げの予測→外資一斉流出・通貨価値変動→通貨投機のターゲット(ex.アジア通貨危機
  • ヘッジファンドや欧米日の巨大マネーは利殖を求めたグローバルな行動によって、通貨危機だけでなく、連鎖的な経済危機を誘発させた。

0-3 世界を揺るがす巨大マネー

0-3-1 巨大マネーの激流と「21世紀型経済危機」
  • 巨大マネー=過剰マネー:その国のなかでの生産や消費では使い切れないで、利殖を求める貨幣資本の姿をとって、世界中を徘徊しているマネー
    • 基軸通貨ドル過剰
      • 戦後IMFGATT(WTO)体制により、世界最大の経常収支赤字国の通貨=ドルが、依然世界で通用する基軸通貨として機能しているため、アメリカは経常収支の赤字を自国のドルの増発で調達する結果、過剰なドルが世界中に散布される。
  • 巨大マネーのグローバルな移動状況の具体例(東南アジアの経済危機)
0-3-2 リスクにさらされる金融機関
  • 巨大マネーの徘徊は、結局は、ハイリスク
    • 連鎖的な経済危機の深化は、貸付金が返済されないで焦げ付き、収益の悪化となって日米両国経済や金融機関を逆襲する。
0-3-3 グローバル資本主義の限界
  • 資本主義の変容:目的と動機は利益の追求
    • 以前:財やサービスの生産や販売が主な経済活動である間;景気循環的な不況をいかに克服するか
    • 現在:マネーの自己増殖的なビジネスが自己目的化した金融経済;巨大マネーと金融市場の動向から「その国の経済をぶち壊す」
  • 新自由主義
    • 目先の利益を追い求めたルールなき資本主義:「市場万能主義」「規制緩和信仰」「大競争」
    • 「市場」つまりは「多国籍的な巨大企業や金融機関」の論理によって「国家」と「市民社会」が選別され、再編成され、翻弄される。
  • 格差社会の到来と再生産
    • 「市場の強制力は無邪気なほど無慈悲になることができる。弱者は容赦なく切り捨てるのが資本の論理だから、弱者や低所得者に優しい国に資本は寄り付かない。富裕層に高税を課せば資本は逃げていくから、貧富の差はますます広がる一方であろう」(『News Week』)