ナルキッソス3「小さなイリス」の感想・レビュー

今回のナルキは複数ライターとのことですが、片岡ともさん買いですから「小さなイリス」からプレイ開始。
「小さなイリス」は、生きるために個人主義に走らざるを得ないがココロは壊れてしまうというおはなし。
舞台は中世欧州、あとがき?でも述べているように銀色の山賊シナリオに近いような感じ。
盲目的な生への意志とその否定で実存を取り戻す。

「小さなイリス」シナリオの要旨・概略

1.イリスの人物像と心が壊れた背景


「小さなイリス」シナリオでの主な登場人物は二人、亡国の皇女イリスと元名誉騎士のヨハン。最初はイリス側から話が始まる。イリスは生まれるまま政略結婚のコマとして扱われ、皇女として相応の態度は示されたが、そこに生きる理由など見出せなかった。それでもイリスは「自分が必要とされている限りは生きることが出来る」と信じて、生かされているのだからと生きてきた。そのうち政略結婚のコマ、つまりは人質として他国へ行くも、そこでの生活も同じであった。しばらくして自国と戦争が勃発。婚姻もせぬままに牢獄へぶち込まれる。もう死ぬのかしらというところで助けてくれた牢獄兵がいた。しかし、その牢獄兵にとってはイリスが生きていたほうが自分に都合がいいだけであって、それだけでイリスを生かす。何のために生きるのか?そのような疑問は不用。極限状況では生きたいか生きたくないかだけが重要で、イリスは剣を手に取り、牢獄兵と策謀をめぐらしてやってきた騎士たちを殺す毎日を生きる道を選ぶ。数年後、イリスのココロはすっかり壊れていた。

2.生きたかったわけじゃなく、死にたくなかっただけかもしれない


イリスを生かしていた牢獄兵は司祭にカネを掴まされていただけであり、容易にイリスを売り渡す。ここからもう一人の登場人物、ヨハン視点開始です。ヨハンは、イリス殺害のため数人の寄せ集め傭兵と共に司祭に雇われていた。ここでヨハンは姫様殺害劇をキナ臭く感じる。結局、イリスを始末した後に自分たちも始末されるのだろうと感づく。そこで、不意をついて傭兵&司祭を皆殺し。イリスを生かしてきた牢獄兵も死に様の「まぁ、しょうがねぇや」はどうでもいいのに個人的に印象深かった。殲滅後、行く当てもないイリスだが生存率が上がるとの理由でヨハンと行動を共にすることに成る。ヨハンは当初、イリスを容赦なく見捨てるつもりであった。しかし、イリスがパンのために哨戒する騎士たちを躊躇いもなく殺す姿を見て、何のために生きるのかを考えるようなる。そう、ヨハンは自分が死ぬために生きてきたのであった。

3.ヨハンの過去回想


ヨハンの父は下級騎士崩れの盗賊で生きるために盗んでいたが、傭兵に返り討ちに合う。家が焼き払われ急いで逃げようとするも神を信じる家族は死を運命として受け入れようとする。そんな神は願い下げだとヨハンは一番幼い弟妹だけを連れて逃げ出すのであった。ヨハンは生きるため父親のかつての騎士身分を利用し聖戦に参加、だがそこで見たものは略奪であった。金で命乞いをする輩でもぶっ殺し、殺した後に拾えばよい。それが生き残る術であったが、生き残った人物は目が淀んでいた。凱旋したヨハンは教会の斡旋で名誉騎士となり土地と家を手に入れ名士扱いされるも、絶対的な神への帰依には信じられなかった。ヨハンの妹は敬虔なキリスト教徒となっていたが普段は心優しくても笑いながら異教徒狩りを喜ぶ姿にゾッとする。命乞いをして助けた尼僧の話しをすると、逆上して殺せと喚きだす。形而上のものを信じて盲目的になり人の感情をなくすそんな姿。それ以来、ヨハンは自分が死ぬために生きるようになった。

4.壊れた心の穴を塞ぐ


イリスとの逃亡中、イリスが足に怪我をした。見捨てていくヨハンだが、結局は舞い戻りイリスをおんぶ。自分のために人を殺せば心に穴が開く。他人がいるから穴が塞がる。以来、イリスはパンを奪うときも人を殺さなくなった。ヨハンはその小さな変化を嬉しく思い、きっとイリスはやり直せると感じる。そして最後の国境線での戦闘。イリスを逃がすために自ら囮となったヨハンはようやく自分の死に場所、つまりは他人のために死ぬということを見出して爽快に死亡。闇夜に放置されご臨終寸前になったヨハンの元に、イリスはどうしても戻ってきてしまう。その行為こそ、心が壊れていない証、自分本位な個人主義から脱却する道しるべ。ヨハンは自分の最初で最後の善行として、イリスが生まれ変わったことに気づかせて笑顔で死んでいくのだった。逃亡成功後、イリスは麦を育てて生計を立てるようになる。時にはどうしても過去のことを思い出しそうになるが、そんな時はいつだってヨハンの死に際の笑顔が浮かび、心の穴を塞いでくれる。眩しかった日のこと…そんな冬の日のこと…。