- この論文の趣旨
一.はじめに
1.問題の所在
- 労働法改革
- 非正規雇用の増加
2.課題の設定と限定
- 「リスク社会」の問題
- リスクの生産と分配という側面から現代社会を捉えるリスクの生産と分配との間の不均衡・不公正の問題
- 「雇用社会のリスク社会化」
- 雇用の流動化;失業の人為的リスクを高める
- 雇用の非典型化;失業というリスクを企業における就業システムの中に統合する
- 本稿における課題
- 本稿における視点
二.構造改革と労働法
1.構造改革の基本的な内容・特徴
2.労働法改革構想に関する最近の動向
- (1)整理
- 労働法不要論
- 総合規制改革会議 労働タスクフォース「脱格差と活力をもたらす労働市場へ―労働法制の抜本的見直しを」
- 「一部に残存する神話のように、労働者の権利を強めれば、その労働者の権利を強めれば、その労働者の保護が図られるという考え方は誤っている」
- さまざまなバリエーションの標準的な契約書式を行政などが提供して、その履行が確保されさえすればよい
- 労働法最小化論
- 脱標準的労働法論
- 「働き方を変える、日本を変える―《ワークライフバランス憲章》の策定」
- 正社員・非正社員、男性社員・女性社員が働く上で直面する「壁」を克服すべきで、多様な働き方に対して横断的に適用される共通原則の確立が目指される。
- 「壁」の克服方法によっては、フルタイム無期契約の労働者を対象にしないため、労働者の保護、権利保障の水準が全体的に低下する。
- 労働法不要論
- (2)特徴
- 単純な経済的推論
- 「新しい労働者像」を正当化する
- 自由と労働権の意味内容が変質している
- 労働市場における労働者の自由は、労働需要の増加によりもたらされ、それを抑制することになる企業規制は労働者の不利益で、規制がないことが、労働者に雇用機会を保障する最善の策
- 能力の差のみが、処遇格差の正当化理由である
- 雇用社会の市場化と法の政策化
三.労働市場・労働法改革のオルタナティブ
1.雇用の流動化と多様化の前提条件
- 移行労働市場(独:ギュンター・シュミット)
- 二つの次元を繋ぐ「架橋」概念
- 異なるライフステージを架橋する:就業と家庭・教育・失業・年金
- 異なる就業形態を架橋する:雇用労働と自営業、雇用労働におけるフルタイムとパートタイム
- 二つの次元を繋ぐ「架橋」概念
- フレキシキュリティ・トライアングル(デンマークの雇用政策を概念化)
- 失業して所得保障を受け、そのまま雇用に戻るのではなく、積極的労働市場政策に移行した後に、雇用に復帰する
- 企業や産業のスクラップ&ビルドが不可避であることを前提に、労働者にモビリティを保障するための新しい雇用保障
- これらのビジョンの背景
- 労働者がさまざまな就業形態間を自由に移動することを権利として保障する
- 失業を含めてどのようなライフステージにあっても、生活の安定と個人の能力育成を保障する仕組みを作る。
- 多様な雇用・就業形態間での処遇の均衡化・平等化に関する法的規制が展開しており、労働市場の分断を阻止している。
2.労働法の現代化のために
- (1)フレキシキュリティの共通原則
- フレキシキュリティ:柔軟性と安定性とを組み合わせた造語
- 2-(1)-1:柔軟で安定な契約関係、総合的な生涯学習戦略、実効的な積極的労働市場政策、現代的な社会保障制度
- 2-(1)-2:使用者、労働者、求職者、公的機関にとっての権利と責任のバランス
- 2-(1)-3:加盟国の特殊条件、労働市場、労使関係との適合、単一の労働市場モデルを意味しない
- 2-(1)-4:労働市場のインサイダーとアウトサイダーとの間の格差の縮小
- 2-(1)-5:企業内部と、一つの企業から別の企業への移行における外部が同時に促進されなければならない。
- 2-(1)-6:雇用への平等なアクセス、労働と家庭生活との両立可能性、ジェンダー平等
- 2-(1)-7:公的機関と労使との信頼と対話
- 2-(1)-8:良好で財政的に持続可能な予算政策
- フレキシキュリティ:柔軟性と安定性とを組み合わせた造語