岡本健「らき☆すた聖地「鷲宮」巡礼と情報化社会」神田孝治編『観光の空間―視点とアプローチ―』ナカニシヤ出版 2009年 133-144頁

ツーリズムのインターネット活用として、アニメ聖地巡礼から情報化社会における旅行者行動の特徴について書かれている。

論文の要旨

  • アニメ聖地巡礼とは
    • アニメ作品の舞台となった場所や関連箇所を、「聖地」として尋ねる行為であり、そうした巡礼を行うのをアニメ聖地巡礼という
    • アニメで背景として使われたシーンと同一のアングルで風景写真を撮影し、それをホームページやブログなどで公開する
    • 何の変哲もない日常空間が聖地化される場合も多い
  • 聖地の認識変容
    • 初めての聖地巡礼では、アニメの聖地であるということを旅行動機とし、アニメの背景と現実場面の同定を行うために聖地を訪れる。
    • 現実場面とインターネット上の双方からのフィードバックを経験することで、巡礼者は目的地を単純にアニメの聖地と捉えるのではなくなる
    • 様々な人々が生活を営む地域であることや、他のファンも訪れていることなどを実感し、それらの社会関係の中に自分を位置づけて考えられるようになる
  • インターネットの活用による行動の規範化
    • アニメの聖地巡礼ではインターネットの活用が多い
    • インターネットの利用により聖地巡礼前に行動の規範を知る
    • 規範的な行動により原住民の印象が良くなり正のフィードバックをもたらす
    • アニメの聖地に対して帰属意識が増す
  • 旅行行動に対する社会の情報化の影響の増大と旅行者の主体性
    • アニメ聖地巡礼者のように、旅行者が主体的、継続的に観光資源の創造や管理に関わるようなケースが増える
    • 様々な問題が発生する(原住民との関係構築、持続条件、観光資源保護等)
    • インターネットの影響を含めた旅行行動分析(ここではアニメ巡礼者の行動規範化)が上記の問題を解決できる可能性がある