雑録

歴史的思考力についてのメモ

児玉康弘「歴史的思考力」(森分孝治・片上宗二『社会科重要用語300の基礎知識』明治図書 2000年 235頁)

  • 歴史的思考力とは、対象を歴史的事象とした場合に、理性のはたらき(人間の知的活動すなわち帰納・演繹・判断・推理等)によって一定の認識を得る力
  • 歴史的事象は無数・無限に存在するので、我々がそれに対してどのような問いをなげかけ何を認識していこうとするのかによって歴史的思考力の在り方も変化
  • 実際の授業における例
    • 「古代アテネの民主政治」における「なぜ、古代アテネで民主政治が発展したのか」という問い →歴史的因果関係の思考力
    • 同上における「ローマの共和政との相違点」、「現代の民主政との相違点」という問い →比較的思考力
      • 古代社会において市民権が拡大する条件を一般化する思考力
      • 現代の民主主義の特色や問題点について認識する力
    • 歴史的事象の本質は何かという問い →歴史的概念を用いて歴史を考える力
    • いくつかの条件を与えてその結果どうなるかを考えさせる →予測の力
    • いくつかの歴史事象 → 一般原理を導く力、逆にそれぞれの特殊性を認識する力
  • 歴史事象に対する問いかけとそれに答える力が歴史的思考力の重要な構成要素

坂井俊樹「歴史的思考力」(日本社会科教育学会編『社会科教育事典』ぎょうせい 2000年 156-157頁)

  • 歴史的思考力とは
    • 「歴史的なものの見方・考え方」
      • 過去に向き合う過去認識としての「見方・考え方」
      • 過去の視点や立場から現代の事象を読み解くための現代認識の「見方・考え方」
    • 以下のような多様な思考様式の変化を基盤に、「歴史事実」を読み解き、意味付け、現代生活に活用する営みの基盤
      • 過去と現在の比較の思考
      • 推移と変化の思考
      • 物事の始原についての探求
      • 社会条件などとの関連思考
  • 斉藤博「地理的・歴史的意識の発達」(『信濃教育研究所紀要』第19集、1953) ←歴史意識研究の古典
    • 1「昔に関する意識」
    • 2「今昔の相違についての意識」
    • 3「変遷や発達についての理解」
    • 4「歴史的な因果関係の把握」
    • 5「歴史の発展的理解」
  • 1980年代以降の歴史教育の動向
    • 従来、自明の前提としてきた進歩=発展史観に疑問をなげかけ、単線的に発展する歴史認識に批判がなされる
    • 新たな歴史認識の枠組みの提起のもと、現代の課題意識に基づく自己認識、生活認識と歴史像形成の必要が迫られる。
    • 「問題解決のための歴史的・実践的な思考」はより重視されなければならない
  • 学習指導要領における歴史的思考力
    • 99、98年版学習指導要領において明確に「歴史的思考力」を表記したのは「世界史A・B」、「日本史A・B」のみ。詳しく説明したのは「日本史B」のみ
    • 内容(1)「歴史の考察」に「歴史の追究」を新設、歴史的な見方・考え方の育成のために「ア 日本人の生活と信仰」「イ 日本列島の地域的差異」「ウ 技術や情報の発達と教育の普及」「エ 世界の中の日本」「オ 法制の変化と社会」の5テーマを示し、二つ程度を選択し学習することを促し、主題選定の観点を例示している。
      • (ア)我が国の文化と伝統の特色をかかわらせてとらえること
      • (イ)歴史上の人物の果たした役割や生き方などとかかわらせてとらえること
    • ここには思考の操作的な位置付けではなく、一定の国家的な価値を肯定するような価値的な視点を明確に打ち出していて、歴史的問題解決思考とは反対の立場から思考力を拡大解釈して位置付けている

加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』朝日出版社 2009年

  • 歴史的なものの見方考え方
    • 国家や社会のなかに生きる自分という人間が、ある「問い」に深く心を衝き動かされたとき初めて生じる。
    • 歴史上に生きた人々が発した根源的な問いが生まれた現場を見せる。研究者はなぜ、ある「問い」を解かねばならないと考えて研究を始めたのか
    • 多くの研究者が自らの「問い」と格闘した結果の集大成が教科書になる、そのような実感の持てる教科書があってもいい
  • 歴史的思考力が獲得できたかどうしたら確認できるか
  • 歴史を学ぶ意義