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  • 樺山紘一・木下康彦・遠藤紳一郎編『世界史へ 新しい歴史像をもとめて』山川出版 1998年

    本書の構成は、Ⅰ章で世界史というものを構成する方法論が述べられており、Ⅱ章で学校教育において世界史教育がどう展開されてきたかが分析されている。そして、Ⅲ章では世界史をどのように教えたらよいかについて新しい視点・素材・方法が提示されており、Ⅳ章では現代史のとらえ方としていくつかの歴史的事例が取り上げられている。

    Ⅰ 世界史のとらえかた ― 世界史構成の理論

    樺山紘一「世界史のかたち」
    • 日本にとっての世界史像
      • 世界史像は異論のない唯一のものとなるわけではない。歴史像も観察する視座によって異なった姿をとる。世界史の形成において、日本人とその社会、文化がいかなる役割を果たしたか、また世界史の全体の構造は、日本に対していかなる作用をおよぼしたか。これらの視角を通して、日本にとっての世界史像が描かれねばならない。
    • 世界史教育における空間の区分、時代の区分
      • 論者は、日本の世界教育における空間の区分は文化圏であると定義する(※註 文化圏の概念は昭和35年版から平成元年版世界史まで。平成11年版から「諸地域世界」の空間区分に変わった)。論者は「この文化圏の概念の使用は、歴史学上、かならずしも方法論として承認を受けたものではない。多分に、叙述の便宜に配慮したプラクティカルな区分であり、それだけに現場においては有効に作用していた」、「文化圏が文化圏と呼びうる整合性をもつかどうかは明確ではない。そもそも、文化圏とは、言語、宗教といった文化を享有する圏域といった意味であるが、言語や宗教がつねに必要十分な統合要素であるとはかぎらない」としながらも、その有用性を認め、世界史叙述においてき期待されると述べている。
      • 時代区分については、四ないし五区分法をあげている。古代・中世・(近世)・近代・現代である。しかし区分名はごく便宜上の呼称としてのみ使用されるようになっている。四ないし五区分法が暗黙のうちに内臓していた発展段階説もしくは進歩史観がつよく疑われた。複線的で、かつ発展という方向性にもとらわれない時代区分法は、いまだ十分には成立していないが、旧来の区分法は相対的有効性しか持ち得ない。
    • 「全体としての世界史」
      • 世界史の教育にあたるものは、同時代人としての問題設定を共有し、「全体としての世界史」の実在を実感しうるような指導をこころざすようにする。これが、現代における歴史教育者の責務。
    宮崎正勝「諸文明の交流とネットワーク論」

    ここで論者は、世界史構成としてネットワーク論を唱える。このネットワーク論は世界システム論への接続するという。初期農村から都市国家へと発展すると、ネットーワークで結びつき、世界帝国が形成される。世界帝国はネットワーク帝国へと変容していく。ヨーロッパの場合、重商主義・移民・鉱山・プランテーションにより海を媒介にしてネットワークを形成する。そしてこのネットーワークは16世紀になると世界システム論へと繋がっていく。このネットワーク論を世界史教育に適用する際には留意点がある。ネットワーク論は巨視的な歴史把握の理論であるため、個々の歴史事象の把握においては従来の研究成果が重視される必要があり、適切な歴史事象を主題化するなどする方法がある。ネットワーク論を世界史教育に適用するのは、世界史の総体としダイナミズムを把握しやすいからである。ネットワークに組み込まれなかった諸社会には異なる視点から適切に評価する必要になる。

    湯浅赳男「世界史の一体化と近代世界史システム」

    ここではウォーラーステインの世界史システム論が紹介されている。ウォーラーステイン世界システム論では16世紀以降の世界の一体化が扱われるが、論者は前近代においても世界システム論でアプローチすることが可能であるとしている。そして世界システムの方法だけで見えないものとして西アジア文明と東アジア文明の宗教意識をあげ、それにはウェーバーの宗教社会学の視座が必要であると説く。

    前沢伸行「ロビンソン・クルーソーの世界史」
    • 世界史のとらえ方
      • 世界史をどう構成するか諸説ある。近代日本の世界史をめぐる議論にもっとも大きな影響を与えたのは唯物史観である。マルクス主義以外の世界史の構想として重要なのは上原専禄の「地域世界」論と梅棹忠夫「生態史観」。上原専禄は日本国民の生活意識に基盤を置いた世界史認識の方法を追究するなかから、最終的に十三の「地域世界」によって構成される世界史の構想を提起して、マルクス主義史学や世界史教育に大きな影響を与えた。梅棹忠夫は、生態学の方法に基づいて世界史を区分する大胆な試みであり、人間を取り巻く自然環境を重視して世界史を考察する立場を提唱した。
    • 本稿の目的
      • 本稿で取り上げるのは、講座派マルクス主義の影響下に西洋経済史の研究を開始し、戦後歴史学に大きく影響を及ぼした大塚久雄の世界史のとらえ方。大塚は日本社会の近代化を支えるべき「人間類型」の問題に取り組み、封建制の残存する遅れた日本社会(「共同体的人間類型」)に対して、近代ヨーロッパの市民社会(「近代的人間類型」)の理念を対置する。封建制から資本社会への移行をめぐる問題に関して、「近代的人間類型」は「ロビンソン的人間類型」と呼ばれている。ここではダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』の大塚久雄による読解の考察を通じて、大塚久雄の近代世界形成過程についての見解の検討を試みる。

    Ⅱ 世界史像の形成 ― 学校教育における世界史

    木下康彦「カルチュラル・リテラシーとしての世界史」
    • 3つの世界史
      • 論者は世界史には3種類あるとする。それは、歴史的事実としての世界史、歴史叙述としての世界史、学校教育で教えられる科目の3つである。学校教育の世界史は、その目標・内容は学習指導要領に定められ、教科書はそれに準じて記述され検定で調査され認定される。この世界史は教育の目的に沿って選択された知識や学習の体系であり、歴史の専門的研究者の研究目的と必ずしも一致しない。議論すべき問題は、学校における歴史教育歴史学習がどのような目的やねらいをもっておこなわれるかということ、そのためにはどのような事実が選ばれ教えられねばならないのか、ということ。
    • 世界史教師批判
      • 高校の教師は教師のもつ科目に関する学問内容を理解させることが授業の基本であるとする内容主義の意識が強く、教授方法や教科・科目を越えた教育課程全体に対する関心は希薄。自分の担当する科目の専門的内容には関心をもつが、教科としての各科目の関連や総合は論議されない。教育学、教科教育の研究においても「社会科」教育研究は、もっぱら小学校に集中し、中学では地理教育研究、歴史教育研究に分化し、高校段階では「地理」や「日本史」や「外国史」の学問的内容に関心が移行、教育研究は数が極めて少なくなる。
      • 学習指導要領の教科目の目標や内容そのものを意識して教師が授業をおこなっているとはいえない。高校で授業を行なう教師にも学習指導要領はあまり読まれていない。教育課程の中での歴史教育、まして学習指導要領の趣旨や内容そのものがまともに論議されたことはない。
      • 世界史が必修であるにも関わらず若者は世界史を学んでいない。教科書も解釈や評価を避けている。受験に規定され系統的知識の暗記に始終する。文部省や学習指導要領よりも大学入試が問題。
    • 歴史教育と「国民」
      • 学校教育の必修科目に要求されるのは、専門的な知識ではなく、社会生活に必要なliteracyすなわち「一般的知識」、国家の統合に必要な「国民的常識」、社会を支え文化的な水準を維持し高める「文化的常識」。
      • 歴史教育が「国家」という枠組みの中でその内容を構成していることは明らか。歴史教育は社会や国家の存続の基礎となる共通の歴史認識を育む。近代国家において学校教育制度が整備されて以来、歴史教育の目標は国家という枠の中で社会的、文化的統合を維持し、国民のアイデンティティーを確立することに置かれる。歴史教育を通じて「国民」は、その歴史の共通の記憶を持つべき。「国民国家」の歴史は既にあった歴史が継承され語り継がれたものではなく、新たに研究され、国家の歴史として作られ、絶えず作り直されている。
      • 本の学校教育は歴史を「死んだ記憶」にしている。歴史への興味の喪失、無関心は、歴史への判断力、洞察力を失わせる。国民が共有できる歴史認識、それを支える歴史的常識、カルチュラル・リテラシーは何か。学習指導要領や教科書で示されている世界史の構成は、未完のモデル、一つの提案に過ぎない。世界史という科目は「国民国家」の歴史を世界史という枠組みで問い直そうとしている。それをどういう形で構成し、カルチュラル・リテラシーとするかが課題である。
    長沼秀世「大学生と世界史理解」

    論者が勤める大学(津田塾大学国際関係学科)において実施した世界史アンケート(論者が設定した史実について自由に記述してもらうもの)が残念な結果だったため、受験体制と教科書に苦言を呈している。

    吉田寅「世界史はどう教えられてきたか」

    ここにおいて論者は、まず「国民科歴史」の「教授要旨」を引用し、当時の外国史教育の目的を述べた上で、戦後における学習指導要領の展開について叙述していく。展開の時期区分としては、5段階に分けている。それすなわち、模索の時期、学習指導要領「世界史」の成立、コース別学習と文化圏学習、高校教育の多様化、国際化の進展の5つである。模索の時期では、試案である昭和22年版学習指導要領「東洋史編(試案)」・同「西洋史(試案)」と昭和27年版学習指導要領「世界史(試案)」を取り上げている。学習指導要領の成立では昭和31年版を、コース別学習と文化圏学習では昭和35年版を、高校教育の多様化では昭和45年版・53年版を、国際化の進展では平成元年版をそれぞれ取り上げている。

    • 「国民科歴史」における外国史を学ぶ目的
      • 「国民科歴史」における「教授要旨」には「国民科歴史ハ中外ノ歴史二付テ習得セシメ、国体ノ精華ト東亜及世界ノ推移トヲ明ニシテ国民精神ヲ涵養シ、皇国ノ歴史的使命ヲ自覚セシメ、実践二培フモノトス」とある
      • 国史を学ぶ目的は、世界における諸国家、諸民族の興亡盛衰を大観することによって、世界史に比類なき日本の国体の本義を認識させ、この当時構想されていた日本を中心とする大東亜建設の意義を把握させることが最大の目標
    • 模索の時期
      • 昭和22年版学習指導要領「東洋史編(試案)」・同「西洋史(試案)」
        • 近代世界、現代世界の成立の由来およびその精神を理解することに、外国史教育の主たる目標が置かれる。「現在の生活を史的発展の結果として見る能力、及び、その知識を現在の問題について用いることのできる能力を生徒に発展させること」が重視され、生徒の学習活動についても「解答が与えられる前に、研究や思索や討議を要する質問を行なうこと。教科書にはない特殊な知識を得るために書物を参考すること」などをはじめとする20余項目の例が示されている。
        • 東洋史西洋史の区分については西洋史を重視している。「人類の歴史は全体として一つの統一ある発展をなしているが、その発展は地域において差異を生じる」ので、東洋史西洋史の区分が必要であるとし、「東洋史はわれわれがその一部をなしている東洋の特殊性を知る上に重要であるが、しかし今日の世界の主流をなしているのは、西洋文明であるから、東洋の歴史を知るためにも、西洋の知識が絶対に必要である」ことを強調している。
      • 昭和24年「世界史」成立
        • 昭和24年に高校の歴史は新しく「日本史」が行なわれるようになったため、「日本史」と「世界史」の二科目に再編成されることになった。
        • 学習指導要領は新科目発足の時点までに間に合わなかったので、同年4月12日、文部省教科書局長より、各都道府県教育委員会への通達「高等学校社会科日本史・世界史の学習指導について」が発せられ、歴史教育の基本的方針を指示することとなった。現代の社会を基盤に置いた歴史学習、生徒の自主的活動を育成し助長するような単元学習の実施は要望、「歴史の発展の必然性を理解させること」「歴史が進歩への発展であることを理解することにより、社会進展に対する自己の責任と情熱をいだかしめること」などの目標が設置された。
      • 昭和27年版学習指導要領「世界史(試案)」
        • 昭和24年度末に完成予定であった高校「日本史」「世界史」の学習指導要領は大幅に遅れ、昭和27年3月「中学校・高等学校学習指導要領 社会科編Ⅲ (a)日本史 (b)世界史(試案)」として公布された。
        • 民主主義の理想像;冒頭に掲げられた「世界史の特殊目標」は6項に分かれ民主主義の理想像を象徴している。すなわち「1.国際協調の精神の育成 2.歴史的思考力の養成 3.現代社会の歴史的地位の把握 4.古典や芸術などによる豊かな人間性の育成 5.日本の世界史的地位の理解と個人の努力の価値の認識 6.公民的素質の養成」である。
        • 時代区分;時代区分は3区分に分かれる。「近代以前の社会」「近代以後の社会」「現代の社会」の3本柱である。
        • 内容構成;内容構成は従来の東洋史西洋史的発想を超克しようとする意欲的な構成がこの段階ですでに現れている。「参考単元例」が示され、世界史の内容を単にいくつかの適当な大きさに区分し、まとめただけでは学習上有効な単元はできないことを示唆し、どこまでも問題を中心に構成されなければならないことを指摘している。
    • 試案ではない学習指導要領「世界史」の成立
      • 昭和31年版「世界史」
        • 昭和29年教育二法(「教育公務員特例法の一部を改正する法律」「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」)など教育界における官僚統制が強まり、学習指導要領が改訂され、基準性を明示し、現場の教育を拘束する性格のもとなった。
        • 昭和31年告示学習指導要領「社会科編」の「まえがき」には「高等学校の社会科の指導を計画し実施する際の基準を示すもの」であることが明記された。その他については従来の社会科の基本的性格と変わりはないとされた。
        • 世界史の目標では「世界史をより深く、科学的、系統的に理解させる」ことや「世界の諸民族・諸国家が孤立してでなく、互いに交渉を持ちながら発展してきたことを認識させる」などの大目標を掲げている。
        • 「内容」では、従前の3区分法が除かれ、(1)「文明の成立と古代国家」から(8)「第二次世界大戦後の世界」までの8項目が立てられている。
        • 留意事項(1)において「この指導内容の各項目の配列や、東洋・西洋の組み合わせについては、ほかにもいろいろ考えられるであろう。しかし、東洋史西洋史とを分離して取り扱い、別々の知識をただ与えるというような方法は、目標達成上、望ましくない」と述べられている。これは当時「世界史」は科目成立の背景や担当教師の専門分野などの関係から、教育現場で便宜上、東洋史西洋史の分野別に学習指導が行なわれることがかなり多く、それが科目としての「世界史」の有機的構成を妨げる一因となっていたため、このような通弊を抑制し、「世界史」本来の目標達成を意図したものである。
    • コース別学習と文化圏学習
      • 昭和35年版「世界史A」「世界史B」
        • 昭和33年に勤務評定実施をめぐって教育界は揺れ動き、学習指導要領の拘束性についても論議が巻き起こる。文部省は「学校教育法施行規則」を改訂、教育課程は文部大臣が公示する学習指導要領によることを明示した。
        • 当時のA・B2科目に分かれたのは、就職コースのA科目と進学コースのB科目としてそれぞれ標準単位数が定められたため。世界史についてはほぼ同文であり、大きな差異は2点だけである。「世界史B」には「目標」において「特に政治、経済、社会、文化などの関連について統合的に考察させることによって」という文言が挿入され、「内容」において主題学習を行なうべきことが指示されていることである。
        • 昭和35年版から文化圏学習の構想が打ち出され、世界史構成の新しい試みが見られている。
    • 高校教育の多様化
      • 昭和45年版「世界史」
        • 経済的発展による生活水準の向上により、高校進学率は飛躍的な上昇を示し、高校教育は科学技術の進展に対応できる高度の教養を涵養することと同時に、能力の多様な調和のとれた青少年を育成することが要望された。
        • 就職・進学のA・Bコースが撤廃され標準単位数が3単位となり高校教育の多様化に応じた。内容構成が問題となり、昭和35年版では構想であった文化圏学習が内容の項目に提示され内容構成を位置付けた。主題学習も一層推進された。
      • 昭和53年版「世界史」
        • 昭和50年代に入ると高校進学率は9割突破、個人差の拡大に対し「生き生きとした教育」を実施することを基本的な目標とした。
        • 文化圏は次第に拡充していき、インドと並んで東南アジアも独立した文化圏として取り扱われた。また19世紀以降は世界を一体化したものとしてとらえる構成になった。
        • 主題学習が文化圏学習、人物学習との有機的な連関に展開されることが要望され「生き生きとした教育」を実施するための主題選定の観点が設定された。
    • 国際化の進展
      • 平成元年版「世界史A」「世界史B」
        • 国際化により地理歴史が一層重視されるようになったと称して社会科が解体され地理歴史科となった。昭和35年版以来A科目とB科目に分かれたが、今回は生徒の特性・進路の多様化に対応できるようにするものであった。
        • 「世界史B」が従来の継承であったのに対し、「世界史A」は新しい構想と内容を持って設けられた科目であり、文化圏学習の内容構成は消滅し文明史的視野がとられた。また近現代史が重視された。

    Ⅲ 世界史への興味 ― 視点・方法・素材

    川北稔「世界史のなかの生活史」
    • 国際理解と生活文化
      • 論者は、社会のあらゆる方面で「国際化」が叫ばれているこんにち、国際理解をすすめるために必要なことは生活文化への理解であると説く。生活文化への理解を欠いては生産の歴史自体も正しくは理解できないからと理由付けしている。そして、単にある時代、ある地域の人々の生活文化がどのようであったかを知り、その比較をおこなうだけでは十分とはいえないとし、ひとつの地域の生活文化は他の地域のそれと対比してみるだけでなく、両者の具体的なつながりを見ていくことが不可欠であると述べる。この生活史は「変わらないもの」であり「構造」の典型であるとする。生活史の具体例として、消費生活、民衆の生活文化、ライフサイクルの歴史、余暇と家族の生活史、生活から見た技術が提示されている。
    • 世界的連関の生活史
      • 生活や文化から歴史をみると、身近で実感的な歴史のイメージ(「等身大の歴史」)が描ける。他の地域、他の時代の庶民が何を考え、どんな行動を取ったかをみれば、それを現代日本の文化と対比することによって、異文化理解にも、現代日本の文化そのものの理解にも大いに役立つ。しかし、それだけではなく、その「世界的連関」をみることで、現代世界の構造についても、広い視野を持つことができるようになる。
    原田智仁「歴史素材調理の技法」
    • 歴史教育のねらいと歴史認識
      • 論者はシチュー作りを例え話に用いて世界史の授業づくり・教材研究についての技法を紹介している。歴史教育の最終的なねらいを「歴史認識とその能力を培う」ことであると定義し、「歴史認識を培う」ということは「歴史の探求とその成果としての歴史知識の双方を生徒に体得させる」ことであると説明している。その「歴史認識」には絶対的なものはなく、正しい歴史認識などがあると言う教師はイデオロギー教育であるとする。「歴史認識」は「歴史解釈」であり、すべて仮説にすぎないことを教師は自覚し、生徒にもそれを明示する必要があると説く。「防衛戦争」または「侵略戦争」云々の教師の解釈を教え込むことはお門違いであるとする。生徒にはさまざまな解釈があることを示し、それぞれの解釈の根拠を歴史の事実(史資料)に基づいて吟味させ、最も説得力のあるものを暫定的に生徒自身に受け容れさせる。そのためには、歴史認識を史観の束縛から解き放ち、理論のレベルでとらえることが必要であるとする。その理由は、史観はイデオロギーであるのに