主題学習「日常生活にみる世界の歴史 〜コンニャクの世界史〜」授業構想案メモ

「コンニャクの世界史」(単元:世界史への扉 日常生活にみる世界の歴史)

  • 目標
    • 「日常生活にみる世界の歴史について、コンニャクを取り上げて、その変遷を考察し、日常生活からも世界の歴史がとらえられることに気付く」
  • 評価規準
    • 関心意欲態度
      • 積極的に調べ発表する学習を行なうことができる
      • コンニャクという身近なものが世界と繋がっていることを感じ取ることができる
    • 表現技能
      • コンセプトマップの使えるようになる
      • 調べたことを要旨にまとめ報告できる
      • 集めた資料を系統立てて整理し振り返ることができる
    • 思考判断
      • 情報ソースや信頼性、発信者などの批判的思考・判断ができる。
      • 発表学習において他人の説明に対し疑問を持ちコメントをすることができる
    • 知識理解
      • コンニャクを通して現代の貿易制度とその歴史的形成過程を理解できる
      • ミャンマーインドネシア、中国におけるコンニャク栽培とその社会的影響の知識を得ることができる。

第1時限:問題意識から問題設定をしよう(コンセプトマップの使い方)

  • 趣旨
    • 「世界史の扉」では中学校社会科との系統性に注意しながら必修世界史として地理と日本との連関を図り、世界史に対する興味関心意欲を高めることを目的としている。中学校社会科地理的分野の「身近な地域の学習」で郷土の農産物であるコンニャクについて学習してきた生徒たちがいるとする。彼らのレディネスを鑑み、コンニャクの世界史という主題を設定した。「世界史への扉」では教師が考察の方法を示しながら指導することが求められる。この学習では世界史通信を作成し発表学習を行いポートフォリオを提出することで興味関心意欲を高めながら歴史的思考力を培い言語能力を育成する。そのためには、まず設定した主題から問題設定を行なわなければならない。第1時では、コンニャクへの問題意識から問題設定を行なうためにコンセプトマップの使い方を学習する。
  • 内容
    • まずコンニャクと言っても早々問題意識があるわけではない。だが生徒たちは中学校で郷土の農産物としてコンニャクイモについて学習してきた。そのときのことを想起させ、どのような観点で学習したかをあげさせる。このときコンセプトマップの使い方を全体に示しながら概念化を行なう。コンニャクイモに関して、生産地、生産量、輸入量、神事、信仰、民俗、文化などが上がると予想される。ここで2006年から2008年の輸入量の推移のグラフを提示し、気付いたことをあげさせる。すると、日本がコンニャクを主に中国・インドネシアミャンマーから輸入していることや、06年、07年と輸入量がゼロだったミャンマーが08年では激増していることが分かる。これは発展途上国支援の一環としてミャンマーからのコンニャクイモ輸入が無税化したことが背景にある。このことは結局セーフガードの発動を呼ぶ。さすれば、生徒たちはコンニャクイモが世界の問題だと認識できるようになる。ここで4人1組の班を作り、それぞれがコンニャクの貿易問題、ミャンマー・中国・インドネシア各地域におけるコンニャク栽培について調べるように割り振らせる。各個人が自分の担当を調べ、一つの世界史通信を作る事が学習の目標であることをとらえる。
  • 評価
    • 問題設定をする際に、問題意識を抽象化するために、コンセプトマップを使うことが出来る。
    • 身近なコンニャクの問題意識から、世界がとらえられることに気付く

第2時限:資料はどうやって探せばいいのかな?(文献検索の方法)

  • 趣旨
    • 生徒は自分の目的に応じて資料を探さねばならない。情報検索がお手軽な時代なだけに、生徒は何でもかんでもインターネットを使うことが予想される。しかし、氾濫する情報の中でメディア・リテラシーを身に付けていないと間違った情報を妄信したり、煽動されてしまったり、剽窃であるとも気付かずコピペする可能性が多々ある。そのため、生徒には情報の信頼性と出典を批判的に思考させ方法を教えなければならない。どのようなwebサイトの信頼性の度合いや発信者の相違などを意識させることが必要である。また、opacや便利な文献検索のサイトの存在も教えておく必要がある。
  • 内容
    • 生徒たちは自分に割り振られたテーマを調べる。即ち、コンニャクの貿易問題、コンニャクとミャンマー、コンニャクとインドネシア、コンニャクと中国である。生徒たちは様々な用語で検索するであろう。その時にコピペだけで終わってしまうか、参考文献・引用文献にまでアクセスできるかが問題となろう。教師は参考文献・引用文献にアクセス出来るように指導する。また、生徒たちは調べていくうちに自分で興味関心を抱くと思われるのでどんどん調べさせる。そのときに自分がどういう思考回路を辿ったかメモ帳に書き留めるようにさせておき、あとで並び替えて整理、体系化できるようにしておく。
    • 生徒たちが得られる情報として以下のようなものが想定される
  • 評価
    • インターネットで必要な情報を信頼性や発信者を意識しながら獲得することが出来る
    • その際自分がどのような思考回路を辿ったかを記録しておくことが出来る。

第3時限:調べたことをまとめよう(世界史通信の作成)

  • 趣旨
    • 各班で各々が第2時限で調べたことを一つの世界史通信にまとめる。このとき自分が調べたことのなかで他者に伝えたいことを精選し、それを根拠に書き表すことで表現する言語能力が培われる。この際、記事に関して根拠や参考にした出典を必ず明記させることが重要である。
  • 予想される生徒の記事の一例
    • コンニャクイモでセーフガード発動!?(経済)
    • インドネシアのコンニャクイモは、残留日本兵独立戦争の証(現代史)
    • ミャンマーのコンニャクイモってどんなイモ?(空間的認識の拡大)
    • 中国から日本へのコンニャクイモの伝播(日中交流史)
  • 評価
    • 自分が表現したいことを調べた情報を根拠に簡潔に書き表すことができる

第4時限:世界史通信をもとに質疑応答をしよう(批判的思考・熟考評価)

  • 趣旨
    • 班の他のメンバーに自分が書いた記事を説明する。この活動により、班のメンバーは自分が調べたこと意外のことの知識も習得できる。このことは班員に責任感を持たせ学習に意欲をもって取り組ませるとともに、説明する力を身に付けることができる。これにより言語能力の充実も図られる。そして班員からコメントを貰うことで自分に何が足りないかを模索するきっかけとなり、助言をもとにより綿密に調べ直すことができる。
  • 内容
    • 自分の記事を説明し班員の助言のもとで修正を図る。班員の説明を聞き助言をする。
    • 以下のような簡易的な要旨を用意しておき、コメントを記入できるようにしておく
見出し 内容 出典 コメント
蒟蒻芋から見る保護貿易 コンニャクイモにセーフガードが発動された。では何故保護貿易がこんなにも話題になるのか。その背景にはWTOの存在がある。よって今回はWTOについて調べた・・・ http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol5/index.html 例)コンニャクイモなんて日本だけしか関係ないと思っていたけど、世界の貿易と深く関わっていることが分かった。また保護貿易自由貿易の違い、WTOの成立などが知ることが出来た。日常生活のものでも世界と繋がっているんだなぁ。
残留日本兵と蒟蒻芋 インドネシアの蒟蒻芋産業を発展させたのは、残留日本兵であった石井正治氏であった。彼は、蘭領インドネシア独立戦争でも活躍する。ここでは蒟蒻芋から石井正治氏の活躍を見ることで、帝国主義について調べた・・・ 石井正治『南から : インドネシア残留元日本兵の回想 』西田書店, 1990
ミャンマーで自生する蒟蒻芋 ミャンマーをはじめ、インドネシア、中国は蒟蒻を食べる習慣があまりない。そこで自生しているコンニャクイモを集めて日本に輸出している・・・ 日本作物学会九州支部会報 (68), 69-72, 20020515
中国の蒟蒻芋の伝播 日本に蒟蒻芋の基原植物が伝来したのはいつか。それは諸説あるが10世紀よりも前だという。その後、蒟蒻といて食されるようになった・・・ http://mayanagi.hum.ibaraki.ac.jp/students/01/01komatsu.html
  • 評価
    • 自分の情報を他人に説明することができる
    • 他人の説明を良く聞き、報告に対して評価することができる。

第5時限:学んだことをまとめよう(ポートフォリオ提出)

  • 趣旨
    • 1時限から4時限まで調べた過程をまとめ一つのファイルにまとめ自分の業績として振り返らせる。このことで復習が容易になり、ただ漫然と一回こっきりの学習ではなく、振り返るという行為を学ぶことができる。
  • 内容
    • コンニャクへの問題意識から様々な世界的な問題へと繋がっていったことを理解する。
  • 評価
    • ひとつの業績としてポートフォリオをまとめる
    • 調べ学習の方法を身に付けることができる
    • 日常生活のものが世界と繋がっていることが実感できる