(100930)第6章タバコの歴史 第6節タバコと現代社会

6-1 タバコと環境破壊
  • キュアリング
    • タバコは現在の環境破壊とも関係している。どうしてタバコが環境問題と関係するのか。その理由は製造過程における葉タバコの乾燥作業による。葉タバコの乾燥作業はキュアリング(curing)という。青臭さや刺激臭のもととなる高分子化合物を分解するため、収穫後、ゆるやかな脱水と適当な湿度のもとで葉のなかの酵素の働きをうながし、内容成分に化学的変化を起こさせる必要がある。人工的な熱風乾燥を必要とするため、キュアリング工程で途方も無い量の樹木が薪炭として使用されている。日本の場合は、灯油を燃料とする乾燥機が用いられている。(宮島英紀『まだ、タバコですか?』講談社現代新書,238-241頁)
    • さらに薪炭の問題は途上国と密接に関わってくる。国際タバコ企業は生産コストを下げるために途上国でキュアリングを行う。具体的にはケニアタンザニア、マラウィ、南アフリカなどで先進国にベースを置いた多国籍企業が安い労働力と薪を使ってタバコ栽培を行っている(細川弘明 京都精華大ネット公開講義)。このような生産コストを下げるための薪炭の伐採は、タバコ栽培の過程の中に位置づけられ、低賃金労働力と結び付き、労働問題を生み出している。
6-2 タバコと労働問題
  • 途上国のタバコ労働
    • 途上国の中でも特にマラウィはタバコ依存の国として名高い。「JT」の公式webサイトでもマラウィは取り上げられ「マラウィで耕作されている葉たばこの9割以上が世界へ輸出され…マラウィの輸出総額の半分以上を占め、外貨収入を得る重要な農産物として生産されている…」と紹介されている。プラン・マラウィでは"Hard work,little pay and long ours""において子どもたちの過酷な労働環境を報告している。マラウィでは幼児からタバコ労働に従事し、1日11ペンスで12時間以上労働し、身体的、性的、精神的虐待を受けながら、収穫期にタバコの葉に触れることで皮膚からニコチンを摂取して発病する「緑タバコ病」にかかっているという。このように経済的にタバコ輸出に依存する途上国に葉タバコ生産の4分の3が移ってきており、多国籍のタバコ企業が買い占めるという状況にある。
  • ILOの報告
    • ILOは児童労働におけるタバコ栽培の危険性を指摘している。刃物による傷、機械類の接触事故、殺虫剤の中毒、筋肉労働による筋骨格の損傷、熱中症、高レベルの太陽露出、虫刺され、緑タバコ症、皮膚がんなどである。このようにタバコは労働問題とも密接に関わってきている。