雑録

はつゆきさくら 小坂井綾ルートの感想・レビュー

『はつゆきさくら』の小坂井綾ルートは、「姉弟関係の愛憎」のおはなし。
物語の全体的な構造では「主人公が覚醒した理由」の過去話という因子を持つ。
「過去のトラウマ」、「自己否定」、「記憶消去」など切なさいっぱいでお届け。
まぁ、ヒロインが物語構築のパーツ化しているわけですがね。

物語の全体構造における綾シナリオの位置づけ

全体構造における綾シナリオの特性は「主人公の覚醒」。物語初期における人間関係では「浪人」としてバイト仲間の役割で登場してくる綾。彼女は主人公とどのような関係にあったのだろうか。綾が主人公の初雪さんにもたらした影響は「現世を捨てる覚悟をさせる」ことであった・・・。綾シナリオは、初雪さんが1年生の頃から始まる。初雪さんの生きる支えであった、死霊のランが魂狩りにあって以来、居城としていた廃ホテルには戻れなくなってしまった。それは、まだ初雪さんが現世に未練を残し、親分ゴーストになる覚悟を受け入れられなかったから。居城を追われた初雪さんは、野宿暮らしを余儀なくされる。カネも尽き、路頭に迷った初雪さんに接触してきたのが、アキラという少年。この少年、実は綾の弟で、死霊として綾に乗り移り、過去の怨恨を晴らそうとしていたのだ。だが、アキラの想いもなかなか複雑なもの。彼の未練は痴情のもつれで、惚れた女に見捨てられてたのが原因。だがしかし、未だにその女も愛しているということに気付くといわけさ。自分ではどうしようもできない感情。そんなアキラの感情に気付いた綾は、弟の死に負い目もあり肉体を捧げてしまおうとする。これを防ぐには、アキラを除霊しなければならない。だがそうすると、綾は副作用で、初雪さんと過ごした日々を忘れてしまう。二律背反・アンビバレントな初雪さんだが、綾を救う為に、親分ゴーストになり、現世を捨てる覚悟をするのだった。「俺もまた、本当はこの世の人間じゃないんだ。誰かと恋などしてはいけなかった。ゴーストを討つとは、そういう意味だ。俺は現世を捨てるゴーストとなろう。愛する家族が待つもとへといくために。この冬に生きることへの執着を捨てる」

小坂井綾のキャラクター表現とフラグ生成過程

小坂井綾シナリオの主題となるのが「姉弟における愛憎」である。小坂井綾は浪人生。わけあって物語における現在の時間軸では記憶が忘却させられている。何故彼女の記憶が忘却されたかを解くのがこのルートの目的だ。時間軸は過去へと遡る。綾は、飄々として捉えどころの無い人間として描かれている。彼女は、様々な感情を抱くものの、それを表に出すことは少なく、他人から「何を考えているのか分からない」と思われる側面があった。綾はそれを非常に気にしていた。そんな綾には弟がいた。弟は綾とは正反対な性格で、自分の感情をさらけだすことが出来た。そのため両親は、綾よりも弟に目をかけていたのだった。このような事情により、綾は弟に対しコンプレックスを抱いていたが、それは弟も同じであった。何事もソツなくこなす綾に嫉妬していたのだった。そんな折、弟は女性関係で問題を起こし、退学処分となり、やけっぱちになった末、酒に溺れて死亡する。



弟の危機に助けになれなかった綾はトラウマを抱えることになり、霊感商法に手を出してしまう。死んだ弟を反魂させ自分の身体を依り代にさせていくのだ。その一方で、行き場を無くしてしまった初雪さんに弟との姿を重ねざるを得ない。最初は弟にたいする負い目から初雪さんに手を出してきた綾であったが、初雪さんが自分の悩み(「周囲から理解してもらえない」コト)を受け入れてくれ、さらに自分を肯定してくれたので、きゅんきゅんしちゃってココロを開いていく。幸せを感じる綾だが、自分の身体が弟の死霊に則られそうになってしまう。除霊すると忘却してしまうので、初雪さんとの想い出も失いたくないし、弟にも懺悔したいと、死霊に身体を差し出そうとするが、最終的には初雪さんに除霊されることを選ぶ。記憶は遥か彼方に吹っ飛ぶのであった。これにてAya's tale is over.と終わって、現在の時間軸の様な関係になったのさ。