小論文指導のおはなし

最近では国公立二次試験や就活などのための小論文指導の仕事もしている。

このひと月前後では、センター試験対策ばかりしてきた受講生たちが、慌てて作文を書き始める。まったく書けない生徒やトンチンカンな文を作って持ってくる生徒もいる。そしてこの時期に狙ったかのように氾濫する小論文対策参考書。迷える生徒達は、とりあえず買い漁っている。書いてある内容を見ると、どれも似たり寄ったりで、結局は国語便覧に書いてあるじゃないかと突っ込みを入れたくなるね。言葉を変えてあるだけのテクスト・リライター。まぁ予備校講師の仕事は専門的な内容を、噛み砕いて分かりやすく教えることだから致し方ないか?よって、ここでは小論文攻略のイロハを書いておく。

  • 小論文は、受験生の論理性を試す試験
    • まず、小論文の試験を「知識吐きだし問題」と勘違いしている者が多いようだ。小論文は何のために行われるか考えよう。小論文は、情報分析力、論理的思考力、抽象化能力、表現力が問われている。だから、まず、一番最初にやることは、課題文を読み解き、問題提起と結論を押え、それに対する「自分の意見や考え」というものを構築することである。課題文の意図が読み解けず、自分の考えもないままに書こうとしても、ろくなものは書けない。だから要旨把握能力を駆使し、課題文の主張をメモしたうえで、自分の考察を行いなさい。そしてその「自分の意見や考え」を採点者に分かってもらうために、現代思想や社会問題などの知識を用いて説得していけば良い。その「自分の意見や考え」をどれだけ巧みに説明できるかに論理性がかかっている。論理性が優れていることが必要なので、道徳的な偽善主義文章を書いても仕方がない。
  • 出題者が要求していることにきちんと答えよ
    • 勘違い受験生に多いことは、「自分が勉強した知識をとにかく書きなぐりたい!!」というパターンである。例えば、医学部受験者。生命倫理についてたくさん勉強した受験生は、出題者に医療法規が問われているのに、とにかく生命倫理に結び付けて書いてしまう。出題者の要求に答えることが目的なのに、自分の得意分野について書くことが目的だと思ってしまうのだ。そしてたちの悪いことになぜ悪いのかに気付けないことが多い。背景知識がないと、小論文は書けないが、背景知識は論理展開のために使うものである。
  • 採点者に読んでもらうには、頭括型にせよ
    • よっぽどレトリックに自信がある者以外は、頭括型にした方が良い。頭括型とは先に結論を提示し、その結論を論証していく方法のことだ。何百・何千もの小論をチェックする教授方にとっては、一体コイツは何を言いたいのかということをさっさと知りたいのだ。結論や自分の考えもない小論文をダラダラと読ませられる採点者は飽きてくる。そもそもそんな小論文は読まれない。採点者に読んでもらうためには、あらかじめ最初に結論を述べてしまった方が良い。
  • 書く前にきちんと構成を考えよ
    • いきなり小論を書きだすのではなく、まず構成を考えよ。フローチャート作りは絶対にやっておいた方が良い。簡易的な流れ図があれば、途中で止まることはない。むしろ、最初の構成メモ作りが小論攻略にとっては一番大事なことである。基本的に、作業としては、課題文分析→課題文の要旨把握→それに対する自分の意見の構築をおこなう。そして、「自分の考えの結論」→「なぜ、そのように考えるのかを具体例を用いながら抽象化」→「以上により、〇〇〇と考えられる」とまとめる。結論→論証→まとめの構図を意識せよ。
  • 「現代における社会的な問題を個人に帰する」パターンは良くない。
    • 小論文や現代文は、現代における社会的な問題の考察が求められている。しかし、小論文を採点していて多いパターンが、なぜか最後に未来の抱負が書かれていることだ。上記にも述べたが、小論文の目的は論理性の優劣を競うことである。文字数を増やすためなのかどうかは知らんが、個人の未来への抱負などいらない。定型文「これからは〜したいと思う」などが書いてあると採点者は鼻で笑っていることでしょう。特に、「現代における社会的な問題を個人に帰する」パターンには、大学側は辟易している。社会科学系で例えると、民族問題における発生原因の史的展開が求められているのに、「私は人種差別をしないと思いました」とか書いてくる受験生には論理性が欠片も感じられない。稚拙すぎるのだ。