この大空に、翼をひろげて 風戸姉妹ルートの感想・レビュー

この大空に、翼をひろげて』の風戸姉妹シナリオは「双子コンプレックス」。
自己否定感を背負う双子の姉;亜紗と自分の価値観以外は排斥する双子の妹;依留。
仲良しだが正反対でそれぞれお互いを羨望する二人を主人公くんは支援していく。
ルート規制が敷かれているため、亜紗を攻略後に姉妹丼ルートに入れます。

風戸姉妹のキャラクター表現とフラグ生成過程

優秀な家庭で凡人に生まれ劣等感に苛まされる双子の姉:風戸亜紗!

風戸亜紗は人当たりが良く皆に愛されるマスコット的存在です。しかしそんな亜紗の性格は涙ぐましい努力とそうせざるを得ない家庭環境により人格形成された代物でした。裕福で社会的地位もあり才能に恵まれた一族の中で、いくら努力しても評価されず、周囲からは期待外れ扱いされる亜紗。その強靱なコンプレックスにより、セカイの色んな枷と戦いながら必死に藻掻いていく内に、処世術を身につけていったのです。そのため当たり障り無く対人折衝する自分を卑下しており、自己否定感がとても強いという少女として設定されているわけです。亜紗は自分を地べたを這うヒトであると思い込んでおり、その分空に憧れていました。そんな中、主人公くんの自転車競技への挫折を知り、共感を寄せるようになっていきます。そして双子といったら入れ替わりイベント。妹に成り済ましデートをするうちに、妹は女として、自分は妹として認識されていることに衝撃を受けてしまいます。1週目はフラグ規制で亜紗ルートへ突入。主人公くんは亜紗と「飛びたかったのに飛べなかったヒトたちの無念」を共有し合いフラグ成立します。そして、亜紗は自分の存在意義を見出したのでした。「どうしてヒトが地を這うのか―それは空を飛ぶためなんだよ!」と。無いからこそ憧れ、努力をすることが出来る!そんな心情を理解できるとハッピーエンドを迎えます。しかし、亜紗ルートでは「モーニンググローリー」に到達することは出来ませんでした。

優秀で利己心が強く自分以外の価値観を排斥する双子の妹:風戸依留!

亜紗ルートを終えると、依留が攻略可能になります。依留は一族の名に恥じないほどの天才で「地を這う人間の苦しみが、わたしには理解できない」と豪語しております。そんな依留は周囲を見下して交流を避け、打算高く、自己の利益以外のことには興味を示さない人間でした。ですが、そんな依留だからこそ、凡才である自分の姉や主人公くんが努力をする姿を尊くもまた感じていたのです。主人公くんの夢に向かって頑張る姿は依留の心を感化させていきます。ポエマーな主人公くんは感化されて戸惑う依留に対して「ぶれない人間なんていなし、そういうのが人を動かす原動力」なのだと説いていくことになります。そして依留は老荘思想でいうところの「無用の用」を会得するのでした。どんなものでも無駄なものなんてないのだと。『グリザイア』シリーズで雄二が事あるごとにいってますよね。若いうちの苦労とそれって本当に必要か?と思える無駄な体験が後の人生に大きく影響を与えると。そんなわけで、狭量な視界から一歩抜けだし、相違する価値観を排斥するのではなく、グライダーに打ち込めるようになるのでした。依留ルートでは主人公くんがテストフライトで怪我を負い、機体も損傷してしまいますが、そこで依留が立ち上がります。実家のカネと権力を総動員しても成したいモノがあるのだと。こうして損得勘定以外に熱中できるモノを見出した依留は、姉の亜紗と共に、「モーニンググローリー」へと到達したのでした。