『あえて無視するキミとの未来』沢渡七凪シナリオの感想・レ

『あえて無視するキミとの未来』の七凪ルートは、擬似家族の贖罪。
妹モノと来たら大抵は「関係性変化」が展開のパターンで周囲の常識とのギャップで煩悶するってのがお約束。
しかし、ここでは主人公くんが抱える家庭問題が物語の原動力となります。
何も知らずに兄に依存してきた妹は真実を知り苦悩するが、兄の度量の深さでハッピーエンド。

沢渡七凪のキャラクター表現とフラグ生成過程

沢渡七凪は主人公くんの義妹。お兄ちゃんのこと大好き好き好き好きで、ブラコンを自称しています。それもそのはず、主人公くんの存在は七凪にとってはまさに救いそのものだったのです。七凪は幼少の頃、喘息を患い、家に篭りがちな毎日を送っていました。そこへ施設から引き取られた主人公くんがやってきたのです。両親は共働きで、留守の家で寂しい思いをする七凪は、戸惑いつつも優しく接してくれる主人公くんに心惹かれていくのでした。病弱で誰も相手にしてくれないセカイの中で主人公くんの存在は、兄of兄、即ち世界の全てだったのでした。七凪の存在は主人公くんにとってもその世界観を変えるものでした。当初施設から引き取られた時、主人公くんは反発心を抱いていました。しかし、寂しそうに横たわる七凪の力になりたいと、擬似家族を演じることを決意したのでした。ここのセリフは眺めていてわりとぐっときます。

初めて、ここでお前と遊んだとき、俺はお前の兄になるって決めた。片瀬の名をここで捨てた。七凪、俺はずっとお前の兄さんでいたい。七凪はいつでもまっすぐだ。まっすぐに俺を好きでいてくれた。当たり前のように家族として迎え入れてくれた。それが両親を失った俺にとって、どれだけ嬉しかったことか。きっと誰にも分からない。お前に俺は救われた。七凪、俺は、兄は、比喩でもなんでもなく、お前のためなら死んでもいいんだ。

そして妹のアプローチを受け入れ懇ろな仲になる二人でしたが、デート中、施設の旧友とばったり再会してしまいます。そして七凪は罵られるのです。「お前なんかが片瀬の家族面してんじゃねぇ」と。不安になり真実を知りたがる七凪と知らせたくない兄。そして七凪は母親に真実を質すのでした。母親は10年間ずっと罪悪感に囚われており、娘が主人公くんの嫁になると知って、少しでも気持ちが楽になったのでしょう。七凪に真実を告げてしまいます。沢渡家が事故で主人公くんの両親を殺してしまったこと。自分たちの罪悪感から逃れるために、主人公くんを養子にしたこと。エゴで身寄りの無い子どもの人生を振り回したことなどなどを告白してしまいました。衝撃を受ける妹;七凪。自分は兄に対してずっと依存する一方であり、好意を表明し続けてきたけれども、実は主人公くんを苦しめていただけではないかと。そして自我崩壊を起こし、兄を寄せ付けなくなってしまいました。そんな七凪に対し、主人公くんは自己の存在が妹を苦しめるだけなら家を出ようかとも考えますが、結局妹を信じ続けます。七凪はそんな兄の「どんなことでも許そう」という度量の深さに触れ、覚醒。「もう迷わない、どんな辛いことも、不幸も全部背負います。背負って兄さんと生きます」と決意し、ハッピーエンド。