雑録

夏空のペルセウス 菱田あやめルートの感想・レビュー

夏空のペルセウスのあやめシナリオは、「恐怖心の欠落」について。
両親の死を乗り越えようと努力している少女の心を楽にしてやろうとしたら壊してしまった。
感情を回復させるために、自らの命を代償に「怖れ」を与える。
見事成功したが、実質的に主人公くん何もしていないので、茶番に感じます。

菱田あやめのキャラクター表現とフラグ生成過程

菱田あやめは、ぽわぽわした天然系の年上先輩。両親を亡くしており、それでも前向きに生きようと、見えない努力をしていました。家に帰らず図書館に入り浸って昼寝をしているのも、両親のことを思い出すと複雑な感情に囚われるので、よく眠れないからでした。現状を変えようと頑張りながらも苦悩しているあやめの姿を見た主人公くんは、次第に心惹かれていきます。そんな主人公くんは自分の存在意義を示したくて仕方ありません。自分はあやめの役に立ちたい!!と思うのです。そんな理由で、精神的カウンセリングを発動!!しかし、苦悩を和らげようとするその善意は独りよがりなものであり、あやめの感情を消去してしまうのでありました。「恐怖心」を消去されたあやめは、自分の欲望に忠実になり自堕落な生活を送るようになります。車輪の灯花BADエンドが髣髴とされますね。「自由であるということは自分の中にルールを作ることなんだよ!!!」ということで、あやめの感情を取り戻すべくサポートしていくことになります。

しかし、あやめの感情を取り戻すことは容易ではありませんでした。記憶と思考力は正常なため、自分で自分の違和感を感じるようになってしまったのです。他者と接触したときに、「恐怖心」や「痛み」を感じることができないことから生じる動物的な短絡的発想。そんな考えが起こるたびに、あやめの理性は「それはオカシイことであるべき」と告げるので、精神を維持できなくなってきたのです。そこから伴う不安のために、あやめは主人公くんと性交をして紛らわせようとしますが・・・。ついに良心の呵責に耐え切れなくなった主人公くんは、自分が原因であることを吐露してしまうのでした。哀れなる主人公くんを冷徹に眺めやるあやめは「もう村には居られないので、他者と接触しなくてすむように一緒に放浪し続けてくれ」と命じます。あやめの感情を取り戻すにはどうすればいいのでしょうか?主人公くんはそんな問いに答えを見つけます。自分があやめの前で死ぬことによって「恐怖心」と「痛み」を取り戻させればいいのだと。で、「主人公くんのブラコン妹が包丁で怨恨をぶつける」という装置により、主人公くんの死を感じさせる小芝居を演じて、あやめに「人間の死の恐れ」を経験させます。「恐怖」と「痛み」を再認識したあやめは感情を取り戻せましたよと、めでたし、めでたし。個人的には主人公くんがきちんと死ぬというビターエンドが見たかったです。文章を眺めていて、主人公くんの行動が全て茶番のように感じてしまいました。