大図書館の羊飼い「御園千莉」シナリオの感想・レビュー

大図書館の羊飼い』の御園千莉ルートは「承認欲求」のおはなし。
自分の才能を将来に生かすのではなく、人と繋がることに使いたい少女。
「歌を通して誰かに喜んで欲しい」ということを気づかせろ!
競争社会で友達を求めるかまってちゃんを支えていく。

御園千莉のキャラクター表現とフラグ生成過程

御園千莉はクーデレ気質?の声楽の歌姫。感情表現が苦手なキャラ設定で、そのため周囲に誤解されがち。千莉は才能に恵まれて音楽を専攻したものの、そこに待っていたのは無慈悲な競争社会でした。楽しく歌いたいから生きてきた千莉にとって、そこは監獄でしかありません。授業もサボりがちになり、なぜ自分が生きているのかも分からなくなってしまいます。作中ではこう表現されています。「声楽専攻は、将来の専攻目標を定め、その達成のために努力するのが当たり前の場所だ。しかし、御園は違った。歌が好きで楽しく歌いたいから声楽を専攻した。そのミスマッチが原因で御園は浮いているのだ」。つまりは、「歌で生きていく」という将来に対する覚悟と決意もないまま、才能に依存して取り組んできたことへのしっぺ返しだったのです。しかし、性善説を唱えて現実社会の正当性を打ち砕くのが我らが図書部です。そんなウジウジしている御園さんの承認欲求を満たしてあげましょう。主人公の筧さんは御園さんの悩みや愚痴を聞いてやり、一緒によりそうことで自発的に解決策を見いだせるようにお手伝いをしてあげるのでした。

自分の欠点を筧さんに支えてもらった千莉は好意を抱くようになります。しかし、ひょんなことから千莉個人のためではなく、図書部の仕事として接しているのだと知ってしまいます。少女漫画とかでよくあるアレですね。「自分に好意があるから気を遣ってくれたのではなく、先生に言われたからやってただけなんだ〜」というやつ。千莉は精神崩壊寸前で筧さんに厳しく当たるようになる一方で、筧さんは自分が図書部のためでなく千莉のために行動していることに気づくのでした。そんな千莉においてもう一つ問題となるのが「友人関係」です。かつて千莉は、音楽スクールで仲の良い友人がいたのですが、競争社会の無慈悲な敗北により友達は音楽を辞めてしまったのです。そのことがしこりとなり続けていましたが、筧さんが裏で手を引き、和解させることにも成功します。そして「過去の友達」として再縁するのではなく「新しい友達」として再び関係を構築するようになったのでした。また図書部に入ったことにより佳奈すけという親友にも支えられることになります。寂しがり屋の天才少女は、和解した友人に加え、筧さんや佳奈すけ、図書部の面々により、承認欲求を満たされたのでした。こうして千莉は見事音楽の世界に羽ばたたき、ハッピーエンド。