大図書館の羊飼い 消化試合「少女から救済される主人公」について

大図書館の羊飼い』では小太刀ルートから、各ヒロイン個別に分岐できます。
そこでは基本的な流れはほぼ同じで、個別ヒロインから主人公が肯定・承認・救済されます。
そしてお決まりの父親と『暗夜行路』してたら『和解』しちゃった!が発動。
羊飼いは社会的自殺であり、故に全人類に対する奉仕の義務を負うという解釈。
サブキャラ三人衆(生徒会長・炉利・声優)も攻略できますが、オマケ程度です。

主人公の過去と父親

主人公さんは幼少のみぎり、父親に棄てられ苦労ばかりしてきました。そのため、周囲の人間の心理状態を把握するために知識を求め本を読みあさることになります。そして人の顔色を伺い、都合の良い態度をとることができるようになったのです。しかし、相手に良いように振る舞うということは、自分というものが存在していないということにもならないでしょうか。これはそんなお話です。この作品では「羊飼い」が重要な存在となっております。誰からも覚えられず未来予知による助言をそっと行い人類のために奉仕するという役割。ジプシーやサンカなどの漂泊民と類似しているとも考えられるでしょう。つまりは羊飼いの裏面は「社会的な自殺という願望を叶えるが故に全人類に対する奉仕を負う」というものでした。主人公の父親は、そんな羊飼いになることを望んだのですが、主人公自身は自分と共にただ生きて欲しかった、と言うのでした。主人公は自分の父親が羊飼いにならざるを得ない心理状態であることを理解したのです。主人公が自己犠牲しようとした時、個別ヒロインの女に必要とされることによって。

この個別ヒロインの肯定からの父親との和解は一種の見せ場となっております。どんな作品でも最初は父と息子の相剋を描いていても最後には和解しちゃうんですよねー。CLANNADとかもそうだし。未だに父親と微妙な関係にあるプレイヤァは頭では分かっていても納得できないんです。まぁ、そんなわけで全類の奉仕者となる崇高な職業という正当化により嫁と子供を棄てた父親に対し、同様の道を歩もうとする主人公には現世の「舫い・結び」としてのヒロインが機能し別の道を歩むことになるという対比は読んでいて面白かったよ。そう考えるとこの作品は全人類に対する奉仕を否定し、自分の大切な存在に対する「羊飼い」になることを唱えているのではないでしょうか。その理由は身近な大事な人に寄り添うことが求めているからです。心の闇を持つヒロインを救済することでプレイヤァの自尊的な欲望を満たし、オープンハートしたヒロインによって自己の存在が肯定・承認されるという王道のパターンです。

サブヒロインズ

上から生徒会長、声優、炉利