『僕が天使になった理由』をフルコンプしたので感想・レビュー

面白かった!!ビターエンド好きにはたまらんね、こりゃ。
最初は軽い気持ちで共通√読んでたけど、主人公の桐ノ小島が良い味出してる。
主人公が社会不適合者の信条を持っていると物語は面白くなるもんだ。
通り一面の恋ではなく、たとえ結ばれなくとも本当に相手を思いやる心の描写がステキ。
最後は地球理論編となり、世界愛を説くぜ!アガペー

各個別ヒロインルート


  • 自罰少女百合さん…「妹への贖罪」
    • 百合さんは主人公の桐ノ小島さんと同じ匂いのする先輩です。自分が幸せになってはいけないと信じており、妹に隷属することで自己を保っています。それゆえ共通ルートで全ての恋愛談をバッドエンドにし、恋愛を否定することで百合さんシナリオに入れます。百合さんは、幼少期に妹が誕生した際、両親の関心が妹に向いたことで不満を抱いていました。倫理の青年期の思想で習うフロイトの防衛規制「退行」で具体例に挙げられるシチュエーションを思い描いてください。百合さんは何とか自分に関心を持ってもらおうとしますが、炊事に失敗して火事を起こしてしまいます。こうして両親は死んだのでした。それ以来、百合さんは自分のエゴで両親を殺してしまったと思い込んでおり、残された妹に尽くすことで自分を罰しないと生きられなくなってしまったのです。この妹との関係性が百合さんルートの鍵を握っています。妹に束縛されることを選ぶと3Pルートに入り、爛れた腐っていくだけの人生を送ることになります。ですが、妹の呪いから脱却しようとすると、理性を取り戻した妹は桐ノ小島さんの前で自殺してしまうのです。そして桐ノ小島さんは百合さんに自殺の事実を隠して支えて生きていくことになります。合掌。



  • 若松みなも√…芸能人のトラウマ克服もの
    • 若松みなもはグラビアアイドルです。ですが本当になりたいのは歌手。幼少期に芸能界のプロデューサーに歌唱力をコケにされたトラウマから心が欠けて歌えなくなってしまったのです。自分の生きる理由を桐ノ小島さんに見出したみなもは、惰性で嫌々やっていたグラビアの仕事を辞めたいと思うようになります。そこでママンとの対立が勃発。芸能界の親子ゲンカなど珍しくもないですが、ママンは不治の病で死ぬ。その死に際に、ママンが本当は娘のことを愛しており、芸能界で歌手デビューさせる布石として何とかグラドルの仕事を獲得していたことが判明しました。そしてママンの死により大衆の注目を浴びたみなもは歌手に転身出来るようになったのです。ですがトラウマを克服できないみなみもはまともに歌うことも出来ず憔悴していきます。ここで選択肢登場。傷心のみなもを受け入れると現実から逃げ出すという愛欲エンドになります。みなみを応援することになると、みなもは「自分の歌が桐ノ小島さんを幸せにする」という事実を獲得して、関係を断絶し、歌手として生きていくことになります。



  • ナキザキ=ナルコ√…最強幼なじみ伝説
    • ナキザキ√は本当にオススメです。肉体関係や婚姻関係を超越した男女の関係性がここに描かれています。桐ノ小島さんが幼少期のトラウマにより精神崩壊した時、それを助けてくれたのがナキザキさんでした。ナキザキさんは、桐ノ小島さんと結ばれなくてもよいから支えになりたいと、自分の思いを切り捨てたのです。「あたしは桐ノ小島に幸せになって欲しいし、できればあたしが幸せにしてあげたい。でも本人がなりたいって思えないんじゃ、どうしようもできない」という台詞は健気じゃありませんか。こうしてナキザキさんの支えにより何とか生きてこられた桐ノ小島さんは、ナキザキさんが恋愛感情を取り戻すと心惹かれていくのです。ですがやはりここでは二人は恋愛関係になれないのです。恋愛関係になると世界の意志が働き、二人の関係はなかったものになります。そんなワケで、桐ノ小島さんはナキザキさんに一生仲の良い幼なじみとして側で支えてくれと残酷な要求をします。「手を繋がなくたって、キスをしなくたって、セックスしなくたって、そういう当たり前のものがなくたって、もっともっと、深く繋がることはできないんだろうか?」という問題提起にはハラショーです!!

グランドルート…「天使アイネちゃんと地球理論でアガペー編」


  • 桐ノ小島さんの過去編
    • 桐ノ小島さんが自罰体質になってしまったのは好いた女を殺してしまったからでした。桐ノ小島さんのママンは浮気性で男をとっかえひっかえ。邪魔者扱いされた桐ノ小島さんは廃れた教会で過ごすようになります。その場所で同じような境遇の恵唯奈と出会います(天使アイネちゃんの前世ね)。意気投合した二人は、傷の舐め合いをして心を通わせますが、桐ノ小島さんのママンの不倫相手は恵唯奈のダディであり、なんと痴情のもつれで心中してしまうのでした。その後、二人は天使になりたいねと自殺を図ります。冬の教会で横たわれば天使になれると信じた二人は、雪の降りしきる廃墟で死んでいきます。ですが、恵唯奈は凍死したものの、桐ノ小島さんは生き残ってしまったのです。こうして桐ノ小島さんは、恵唯奈が純粋に天使になりたいと願っていたのに対し、恵唯奈と分かれるぐらいなら二人で死のうとした自分のエゴに苛まされるようになったのでした。こうして桐ノ小島さんは、今日も自分を罰しながら、生きる屍としての人生を送ります。


  • 天使の仕事と赤い糸の秘密
    • 桐ノ小島さんに惚れ込んだアイネは、何とかして桐ノ小島さんに幸せになって欲しいと願うようになります。桐ノ小島さんにオープンハートさせて、欠片を返すにはどうすればいいでしょう?さらに、ここで天使の仕事の秘密が明かされます。天使は赤い糸を結んでカップルを誕生させますが、その赤い糸は永遠ではなく循環するものであり、一つ結ばれれば、一つほどけるというものでした。つまりは、カップルを誕生させる一方で破局させもしていたのです。天使の存在意義に苦悩するアイネは以下の結論に至ります。桐ノ小島さんが惚れた女の子は既に死者なので心の欠片を返還しても問題なし、返還した後は天使業を辞めて消滅しようと。こうして人類愛を棄て、桐ノ小島さんという特定の個人のみに肩入れしたアイネは羽を黒く染め墜天しながら、歌うのでした。「恋というのは自分以外の存在を自分のものにしたいという究極のエゴ。純粋な恋などありはなしない」という中で、他者のためなら自分はどうなってもかまわないという愛だ!!赤い糸により破局してしまったカップルたちもその気持ちを諦めず、自分の足で立って歩こうと心を強くしていた。アイネの行動は無駄ではなかったのです。



  • 地球論アガペー編…こうして僕が天使になったワケよ
    • アイネの自己犠牲のうちに愛を見出した桐ノ小島さんは、天使業の根本的な解決に向けて立ち上がります。その背景には地球論がありました。地球も意志をもつ一つの生命体であり、人類がその欲望により愚鈍な失敗を繰り返し続けるのをみて絶望してしまったとのことです。こうして人間への信頼を裏切られた地球は心が欠けてしまったのです。そして紆余曲折の結果、この地球の心の欠片から作られた天使像が、血肉を得て天使になったのでした。天使は人類を幸せにしようとしますが、人間が幸せになりすぎると調子こいてその欲望により自滅するので、地球が干渉します。だから幸せにはなれないのです。このように絶望しきった地球でしたが、ある時人類に救いの希望を見出します。それが桐ノ小島さんと恵唯奈(アイネの前世)の「幸せごっこ」だったのです。二人は幼少の身でありながら、「如何にしたら幸せになれるか」という問いに対し、「地球の幸せ」という結論に達したのです。アイネの活躍で心を取り戻した桐ノ小島さんは、アイネの幸せこそが自分の幸せであり、アイネが幸せになるためには地球が幸せにならねばならないということで、地球に心の返却を行います。全ての天使を一本の矢にして弓を引くその姿は感動のフィナーレ!!アイネに幸せな人間としての生命を与えることで、今度は桐ノ小島さんが天使となって、地球を見届けることになったのでした。こうして愛する女の幸福のために、僕が天使になったのさ!とビターエンド。なかなか面白いシナリオでした。