雑録

カルマルカサークル「高坂夕姫羽」シナリオの感想・レビュー

カルマルカサークルの高坂夕姫羽シナリオは「アイデンティティ拡散の危機」。
自分の生きる意味を喪失し、この世を等しく無価値と断じる少女を救済せよ。
不自由なく生きられる管理された箱庭を選ぶか、主体性のある茨の道を歩むかを決断する。
生きる意味なんてものはないさ、けれどそれを探すことが生き甲斐ってもんさ。
自分が欲しいものは足掻いて手に入れなければならないというおはなし。

高坂夕姫羽のキャラクター表現とフラグ生成過程

高坂夕姫羽は学園の先輩で、良いところのお嬢様。何不自由なく暮らし、娘にも理解のある父親のいうことを唯々諾々と聞いていれば、豊かな生活を送ることができました。そんな封建的な上流階級における女性像の典型例である夕姫羽先輩でしたが、「自己の主体性」について悩んでいくことになります。親が敷いてくれたレールの上を進むことに慣れすぎていた夕姫羽さんは、今更レールを降りられず、ひどく臆病になっていたのです。自分から能動的に動くことも出来ず、だからといって親のいうことにも従いたくなくなった夕姫羽さんは、「アイデンティティ拡散の危機」に直面します。自分は何で生きているの?自分の生きる価値って何?人間の生きる意味は何なの?と自問自答を繰り返し、いじけて世事からバックれかまし、家出を敢行するのです。ウジウジと悩んでモラトリアムに浸り、悲劇のヒロインを気取る夕姫羽さん。まぁ人間に生きている意味なんてものはなく、生きる意味のない人生を受け入れることが、強さなんですよ。その強さがないから、人は友達・恋人・家族・地域・国家・共同体などに結びつきを求めてしまうのですね。



主人公くんは『火の鳥』に書いてありそうな「生きる意味」を論じます。『生きる意味』は人から与えられるものではなく自分で見つけ出すものだと。そして、夕姫羽さんが答えを見つけ出すその日まで、寄り添うことを決意するのでした。しかし、そんな夕姫羽さんを見て苛立つ人物が!!その人物とは両親がおらず、児童養護施設出身の生徒会長でした。自分の環境に甘んじ、悲劇のヒロインを気取る夕姫羽さんの様子は、会長の踏んではいけないスイッチに触れることになったのです。会長の説教が炸裂し、「主張があるなら正々堂々と告げ、意見に隔たりがあるなら真摯に理解を求めるべきです」と正論が吐かれます。会長に発破をかけられ、さらに主人公くんから「もっとジタバタ足掻いたって良いんだ!」と肯定された夕姫羽さんは、自分の主体的な意志を取り戻します。「自分の生きる意味」、「社会的な役割」を「愛する男」に見出した夕姫羽さんは、主人公くんとの仲を両親に認められハッピーエンドを迎えましたとさ。めでたし、めでたし。