『小さな彼女の小夜曲』の花梨シナリオは「中二病徒の乱」。
シナリオの内容は「中二病である自分を受け入れることが出来るかどうか」というおはなしです。
ここで出て来る症例は、フロイトの防衛機制の「同一視」のタイプです。
『中二病でも恋したい』が流行ったので量産されたキャラクター消費型ヒロインですね。
cf.『俺ガイル(はまち)』、『自演乙(修羅場過ぎる)』などが量産型作品として挙げられる。
白里花梨のキャラクター表現とフラグ生成過程
- 防衛機制とは何か?
- 同一視
- 防衛機制の問題点
- 防衛機制の問題点は根本的な問題が何も解決されないということです。欲求不満の原因そのものを取り除くことはせず、心の中の苦しみだけを解消しようとするのですね。勿論、欠点や弱点について劣等意識を持つ人が他の分野での才能を伸ばして苦しみを克服しようとする「代償(補償)」や性欲や暴力衝動などの本能的な欲求を社会的に認められた学術・スポーツ・社会活動に向ける「昇華」などの防衛機制もありますが、根本的な問題と立ち向かっているわけではありません。そこで合理的解決が求められ「中二病」罹患者は現実の問題をうけいれなければならないのですね。自我を守ろうとする防衛機制のヨロイを取り除き、悩みを意識化し、苦悩を体験しながら苦しみの解決を目指すのです。
- 中二病を受け入れるということ
- 中二病を扱う作品でテーマとされるのが「中二病を受け入れるかどうか」という問題です。中二病を卒業することが問題の解決であるとはいえないのですね。マンガやアニメの模倣をして自我の安定を図っていた自分を恥じて「黒歴史」としてしまうのはたやすいでしょう。ですがそれは別の防衛機制にすげかわっただけなのです。「黒歴史」は「不安や苦しみを引き起こす観念や欲求を無意識の中に押し込める」ことである「抑圧」に過ぎないのです。「抑圧」が続くと、心にひずみが生まれ、自我の不安や身体的な症状を引き起こすことにもなりかねません。そのため、中二病を受け入れて初めて根本的な問題と対峙することができるのです。
- では、どうすればフラストレーションは解消できるでしょうか。それは自分と向き合い、自分を受け入れる強さを身につけることでしょう。不安や恐怖などのマイナスの感情が奥底の無意識に抑圧されて固定化されたものが「コンプレックス」と言われるものです。花梨の場合は優秀な姉を持つという劣等意識であったり、厳格な親を持つという家庭環境だったりします。その問題解決のため、物語の主人公がヒロインの承認欲求や他者需要願望を満たし、肯定してあげるという機能をもつことで、フラグが成立するまでの過程を描写するための表現技法のひとつになっているのです。