BALDSKY ZEROの感想・レビュー

バルドスカイゼロは近未来SFネット世界ロボットバトル。
薬物中毒敗残兵集団、デザイナーズチャイルド牧場、人間家畜論がテーマ。
個人的には結構面白く感じる内容でした。
複雑な勢力関係!煩雑なSF用語のテキスト!!1周目負けまくり!!!
でも楽しい。近未来東南アジアが舞台でエスニック臭がするのも良い。
しかし・・・マレルのシナリオ伏線回収はなげっぱですか?

薬物中毒敗残兵ルート

咲良は黒髪ロングでべらんめぇ口調の敗残兵。薬物中毒になりながら数々の舞台を転々とし、最終的には自分を敗残兵として競売にかけ傭兵として拾われました。咲良の目的は敗残兵や退役軍人を拉致して洗脳する死兵集団の撃破。そのためなら手段を問いません。また戦闘スタイルは先鋒突出型で自分の命を捨て鉢にする傾向にありました。それもそのはず、かつて咲良は薬物中毒の結果部隊の戦友を殺していたからなのです。薬物中毒になった咲良が率いる部隊は死を恐れない突出舞台として捨て駒になり使い潰されようとしていました。その時正気に戻った戦友が咲良を後退させようとするのですが、邪魔をした仲間を打ち殺してしまったのです。それ以来、咲良は自分の命を大切にすることなどしなくなったのでした。死兵集団を率いるのは戦争宗教の教祖として祭り上げられた薬物中毒者でしたが、この人物にとってそんなことはどうでもいいことでした。PTSDによる亡霊の叫びから脱却するため、自分以外の全てを殺そうとしていたのです。咲良はトラウマにとらわれ視野狭窄的になり敵側に捕えられてしまいます。そんな咲良を救出するのがこのルートの主な内容です。1周目に薬物中毒敗残兵ルートを選んだのですが、戦闘では負けまくり。何度リトライしたことか。同じ面がクリアできず、3時間くらいかかかった超絶時間泥棒です。

デザイナーズチャイルド牧場ルート

記憶喪失という設定の主人公;エドワード准尉の過去バナシ。シナリオ的に一番分かりやすいルートともいえます。エドさんが属する傭兵集団にデザイナーズチャイルドの人間牧場で育った少女;ケイがやってきます。彼女はやり手の傭兵で人間牧場での出荷前ランクで第4位を誇る実力者だったのです。そんなケイがなぜやってきたかと言うと、エドさんを守るためでした。エドさんとケイは同じ牧場出身で、牧場のリーダーであったエドさんに日頃から良くしてもらっていたのです。ケイの募った慕情はエドさんを追わしめたのですね。ケイルートでは人間牧場で育った姉と弟がメインの内容になります。ケイの姉;メイは廃兵と化し死を待つばかりになります。死を待つメイにエドさんは日常生活という幸せを与える一方で、治療をするために何とか足掻きます。しかし治療の目途が立ったその日、エドさんが喜び勇んで帰ってくると、部屋には解体されたメイの姿があったのです。戦争できない家畜はただのゴミだと言わんばかりに臓器売買の対象となり解体されてしまったのです。しかもエドさんにはその臓器を売り払うというオマケまでついてきたのです。愛する人の無残な臓器を売り歩いたエドさんは荒んでいきます。そんなエドさんを見て、ココロを守ってあげたいの考えたのがケイだったというわけです。ここで立ちふさがるのがケイやメイの弟。脳をいじられ暴徒と化し先が短い弟くんに対して、引導を渡してあげるのがエドさんの努めというわけです。メイに心を支えられたエドさんは、牧場のみんなを、ケイを守るため、弟くんと最後の戦い。見事撃破したエドさんは、ケイと一緒に傭兵生活を生きていくのでした。

人間家畜論ルート

3周目は人間家畜論。戦争で人を殺して生活をする兵士が自分の在り方を証明することがテーマ。エドさんたちの傭兵集団は戦争を生業としているわけですが、人間としての矜持は持っています。「兵士」として戦場に出て来るものなら殺すことも厭わないのに対し、民間人には手を出さず、人体実験や大量虐殺なども良しとしません。しかし敵対勢力は人間を家畜と見なし、「引き算の戦争」をしていました。即ち、最大多数の最大幸福。社会は個人の総和であるから、諸個人の幸福の総計が社会全体の幸福になるというものです。本文を引用すると「国全体で見て死者数が減って、死んでいない奴が増えて、そいつらが幸せに暮らせればいい」。つまりは害となる脅威と判断された勢力や人民は殲滅され、人体実験やクローンの複製なども厭わない集団なわけです。そんな集団の手駒となるのが個人の複製人間です。いくら有能なクローンを作っても「経験」は継承できません(『グリザイアの楽園』のユージさんのクローンなど)。さらにデザイナーズチャイルドで人間牧場を作るのも手間です。手っ取り早く兵士を補充するには、個人の分割。脳を分割させて複数の個体を製造するというものでした。そしてこのルートのヒロインが、脳を分割されて複数の個体を製造されていたのです。そんな勢力は滅ぼさないわけにはいくまいて!!というわけで、シナリオが展開していくのですが・・・複雑な勢力関係やつながりが分かりにくく、思わずメモに集団相関図を書いてしまうくらいの勢い。そして最後にはヒロインのパパであり傭兵集団のTOP;グッドマン中佐がラスボスという超☆展開!グッドマン中佐は個人分割実験の成功例で、家畜論を唱える勢力の分割個体だというのです。あまりの急激な展開に泣き喚くヒロインとともに読者の皆さんも状況を整理するのに苦労したのではないでしょうか?結局、グッドマン中佐とは別個体ということで納得した傭兵部隊員たちは整理をつけ、殲滅に成功するのでした。