雑録

2014年センター国語はこんな感じ 〜ざっくりとした概要〜

詳細や解説などは大手予備校のサイトを見ましょう。
…と高2の生徒に言ったらざっくりと概要だけ教えてくださいと言われたのでメモ。
全体像とかどんな問題文の内容だったか知りたい人向けのテキストです。

評論:齋藤希史『漢文脈と近代日本』

  • 社会言語学のはなし
    • 「学習する言語が人間類型に影響を与える」という言語イデオロギーを扱っています。言語を学習する過程において、自身の知的世界が形成されていき、ある特定の思考の型や感覚(エートス)が形作られます。漢文を学ぶ場合には「統治者」としての意識が構築されることになるのです。これが筆者の論旨です。これを読者に納得させるために、本文では具体例として、「中国の士大夫」と「日本の士族階級」が挙げられ、論証されていきます。
    • 現代文が「現代の諸問題を考察させる論理思考トレーニング」であるならば、扱われている内容が「漢文」であれ、現代の若者達に「無意識的な言語帝国主義」について覚醒させたいのでしょう。高校生たちが普段学習している(させられている)言語系の科目は「国語(nation・language)」と「英語」です。それらを学習させられているのは、どのような思想的背景があるのでしょうか?というところまで辿りついて欲しいと出題されているんじゃないかなぁと勝手に思っています。ただの「江戸時代と漢文のはなし」としてしか捉えられない人になるんじゃないですよ。

小説:岡本かの子『快走』

  • 小説について
    • 毎回書くのですが、大学受験の「小説読解」は作者の主張ではなく、「出題者の意図」を読み解くことが求められていますからね。そのためどんな時代の作品であれ読むのは現代の我々であり、出題者の目線を把握する必要があるのですね。
  • 封建遺制のはなし
    • 「社会的な役割意識の中からの個人の解放」が扱われています。具体的な材料は「女性抑圧からの解放」ですが、主人公だけでなく両親も最終的に「父」・「母」という役割から解放され人間性を回復することがポイントです。
      • あらすじ:主人公は女学校出身の女性で、封建的な家父長制の下で生活することに息苦しさを感じています。そんな女性が見出した生きる喜びは家族の目を忍んで外へと抜けだし川べりの堤防でダッシュをすることでした。夜な夜な家族の目を盗んでは出かけていく娘に両親は疑いのまなざしをかけます。結局、両親は娘宛の手紙を検閲することで秘密を知るのですが、娘の様子を見に行くことになります。この時、両親は後をつけるのですが、娘はダッシュしていってしまうので、両親ももちろん駆けていくわけです。するとどうでしょう。ダッシュしたことによって両親たちもまた従来のしがらみから解放されるのでした。
  • 人間性の解放
    • 扱われている時代設定が戦前なので古くさいと切って捨てないでくださいね。出題者がどうして2014年という現代にこの作品をぶつけてきたかを考えることが重要なのです。この文章は「人間性の解放」が扱われています。つまり人間性よりも先に父としての役割・母としての役割・娘としての役割が社会的通念上決められているわけです。その役割に従って生きることが世間体では求められており、そこでは「個人としての人間性が抑圧されている」のです。現代日本でも社会からの無言の圧力は存在します。例えば、「正規雇用労働者にならなければならない」という意識や、「結婚は恋愛結婚」というマスコミの喧伝とか「担任持ったことのない教員は半人前」という嘲笑など。このように人間というのは社会による束縛からは逃れられないのですね。しかしながら、それだけでは息が詰まるモノであり、生きているといえるでしょうか?こうして「社会のしがらみから解放されるための拠り所」が必要となり、本文の中ではそれは「疾駆すること」なのです。生きづらい現代社会においてしがらみに縛られる我々だからこそアクチュアルに捉え直すことが出来るのではないかと思います。

古文:『源氏物語』夕霧 より

  • 夕霧と雲居雁の皮肉・いやみ・おどしの応酬が繰り広げられるはなし
    • 「夕霧が浮気をしたら雲居雁が実家に帰っちゃったぜ→夫婦喧嘩」という展開。本文中では夫婦喧嘩は解決せず、夕霧が子どもたちを味方につけるために雲居雁の悪口を言って終わる。夕霧と雲居雁で男女間の攻防が繰り広げられ、子どもたちを間に挟んで言い争い、駆け引きをする。
    • 夕霧と雲居雁にはたくさんの子どもたちがおり、雲居雁は姫君と幼い弟妹を連れて行ったのだが、その姫君に夕霧は以下のように語りかけるのだ。
      • 母君の御教えに な叶ひ給うそ(母君のおっしゃる通りになさるのではありませんよ)。
      • いと心憂く、思いとる方なき心あるは、いと悪しきわざなり(ほんとに情けなく、物わかりのよくない心があるのは、とても悪いことなのです)
  • 高校生に夫婦ゲンカの言い争いを読ませるセンター試験古文
    • 高校生にとって夫婦喧嘩の言い争いで皮肉や嫌みや脅しを読まされるのってどうなんでしょうね?独身で結婚生活を体験したことない私には夫婦間の関係性など類推するくらいしかできません。高校生たちも人間の感情を類推することが求められているのでしょう。昼ドラ好きのおばちゃんたちは高得点が取れそうだなぁ。人間の感情の心の機微とか重要だけれども・・・。読んでいて楽しいですか?

漢文:陸樹声『陸文定公集』より

  • タケノコを例にして老荘思想「無用の用」を説くおはなし
    • 甘いタケノコは食べられ苦いタケノコは放棄される。高校生の皆さんは、甘いタケノコを食べたいと思うだろう。しかしタケノコ自身にとってみればどうであろうか?放棄されたタケノコは切り取られずにすんだのだと同じようなことではないか?フツーに考えると、世間では貴いものがとられて、賤しいモノで棄てられないものはない。けどそれは人間的が勝手に決めてる価値観でしょ?タケノコにしてみれば、無用とされてるものが天寿をまっとうするんだよ。なんか老荘思想の「無用の用」に似てるよね!!・・・というノリです(意訳なのであしからず)。
  • 相変わらず漢文は教訓話であり最後の問題は思想で解ける
    • きちんと本文を読んだ方が良いのだけれど、漢文の最後の問題は中国思想を知っていれば解けてしまうので倫理・世界史選択者は有利。問われているのは「無用の用」。「無用の用」とは「世間からは無用とされるものの中に、あるがままの自然の真の価値がある」という考えです。ここでのポイントは人間の価値観なんて相対的なものだということ。自然のままの実在の世界は、人為的な分別をこえ、あるがままに存在すること自体に絶対的なよさを持っているのですね。だから「役にたつ」とか「役に立たない」とかは人間の価値観であり、それが入っているだけで選択肢消去が出来てしまうわけだ。選択肢1と選択肢3は「無用の用」とは的外れだし、選択肢2と選択肢4は「役に立つ」と述べているので理解不足。フツーに問題を読まなくても選択肢5だと分かってしまう。これだけで8ゲット。
      • けどちゃんと本文も読もうね!