ハロー・レディ!(体験版)の感想・レビュー

ハロー・レディは中2的学園異能バトル社会反逆左派思想系のおはなし。
テーマは「特権的支配者階層による社会指導の否定」。
「―― ノーブルこそが人を導く・・・何とも滑稽だ。」
21世紀初頭における社会的背景をきちんと設定しておりファンタジー世界ではない。
あくまでも現代世界の設定でファンタジーをやっているので深みがある。
やっぱり新自由主義経済の落伍者層にとって反逆モノは面白く感じてしまうことよ。
体験版はセカンドオープニングまでプレイできる。

ハロー・レディ!体験版概要

  • 凄惨な過去を持つ主人公くんが既成の社会秩序に反逆する
    • 主人公くん(本名;御門春水)は四国にあるT県(多分徳島であろう)の学園に転校してきます。その学園は異能保持者を収容し、社会的指導者層を輩出することを目的とした学園でした。主人公くんは過去に妹(らしき人物)を亡くしており、『グリザイアの果実』よろしく凄惨な過去を生き抜いてきたことが匂わされています。過去の問題には学園の理事長が関していたと考えられており、その真相を解き明かし野望を打ち砕くのが主人公くんの目的のようです。主人公くんは過酷な人生を乗り越えたことから余裕のある鷹揚な紳士として振る舞っています。この主人公くんの生き様が、「妥協し他者との衝突を恐れることで秩序を維持しようとする傾向のあるヒロインたち」に衝撃を与え、対立し、意識改革の影響を与えていくことになるのです。

  • ヒロイン達の選民思想を主人公くんが踏みつぶす
    • ヒロイン達含め学園生たちはその異能により社会から排斥されてきた異端者たちです。その経験から自分たちを選民思想の観点から捉える傾向があります。そして社会的指導者層を目指そうとすることで自らのトラウマを誤魔化しているのです。学園の理念である「ノーブルこそが人を導く」という思想はそんな弱きヒロイン達の拠り所となるのものでした。しかしそんな考えを主人公くんは踏みつぶしていきます。「人は自らの意思で挑まなければならない」を信条とし、優れたモノに意思を任せるべきだとする自分の意思を是としない新世界を滑稽だと断罪するのでした。異能バトルにより屈服したり危機を助けられたり既成の価値観を改めさせられたりしたヒロイン達は徐々に主人公くんを認め、心を開いていきます。主人公くんやヒロイン達の凄惨な過去とは!?学園の理事長の野心とは!?反逆はどのように成功するのか!?ぜひプレイしたいですね。

  • 娯楽産業に関して
    • この作品ではヒロインのうちの一人がサブカルチャーに特異的偏向趣味を抱くようにしてキャラクター表現が設定されており、彼女の口からクリエイター側からユーザーにカネを使わせるための理論的正統化が語られます。結構面白いので抜き書きしておきます。

この21世紀、日本の地に育まれた偉大な娯楽産業は存亡の危機にあります。いえ日本だけの問題ではありません。先進国が抱える大きなパラダイムシフトです。成熟した文化にユーザーの嗜好は細分化し、少子化と相まって経済基盤は先細り。ネットワークの進化で全世界が繋がれ、フラット化しつつある新時代においてクリエイターとユーザー、いいえ情報発信者と受け手の立ち位置も変化を余儀なくされているのです。クリエイターのプロとアマの敷居が曖昧になり、情報発信者が多様化する現代では娯楽世界は玉石混淆。だからこそ、自分の目や自分の信頼する目利きが発掘した波長の合うクリエイターの価値は宝石に等しい。そして新たな一億総情報発信時代を生き抜くために、必要とされるのは、見出した宝石を自らの手で磨き、支えようとするユーザー=レシーバー自身の聖なる自覚。わかりますか?それはルネサンス時代の芸術家とパトロンの関係にも似るのです。パトロンは芸術家の経済的支援者であると同時に、保護者でもありました。彼ら無くしてルネサンスの芸術は花開かなかったといっても過言ではありません。この情報過密時代に、情報発信者が情報=娯楽を発信し続けるには当然、経済的、社会的保護が必要。それを与えるのは、国家でも企業でもありません!我々受け手が自分の目で見込んだクリエイターに出資することで成すのです。そう、20世紀のようにメデイアや企業に踊らされることなく、直接、自らが価値あると見込んだクリエイターを支援する。現代とはそれができる時代なのです。