はるかかなたの感想・レビュー

はるかかなたは、双子兄妹近親相姦!
死んだ父を尊敬して生きてきた主人公くんの前に、それを裏切る疑問が投げかけられる。
自分の両親は近親相姦だったのではないか?なぜ父親は腹違いの子どもを産ませたのか?
それに加えて攻略ヒロインたちは片親で、しかも主人公くんには双子の妹がいたことが判明する。
実妹でも義妹でも何でもOKが多い近年の作品に対し、あえて「イモート」ネタで勝負。
クロポのよるよるやさくらむすびのように描ききることはできるでしょうか?

  • ダブル・イモウトヒロイン〜実妹と異母妹〜
    • 母親がおらず父親を亡くした主人公くんは、保護者の教会関係者と異母妹との三人暮らし。両親がいないながらも手を取り合ってそれなりに暮らしています。「異母妹に初潮が来たのでみんなでお赤飯を食べる」描写はなかなか好印象。そんな主人公くん一家に一人の少女がやってきたことから物語が始まります。その少女は主人公くんと顔立ちがそっくりであり、なんと双子の妹であることが判明するのでした。突然の実妹の出現に対し、戸惑う異母妹。この実妹と異母妹が仲良くなるところが体験版の醍醐味です。疎外感を味わう異母妹が泣きっ面に蜂で猫に装身具を盗まれてしまい、それを実妹が助けるというパターン。猫が懐かなかったのはおっかなびっくり怖がって接しているからだとの指摘を受けます。ここで異母妹は気づくのです。実妹と異母妹との関係もこれに当てはまり、自分が心を開かなかったから疎外されたように感じたのだと。このイベントを通して異母妹は義妹との関係性を構築します。


  • 主人公くんの父親と母親は兄妹であったという事実
    • 異母妹と実妹が仲良くなってめでたし、めでたし。と、いきたいところなのですが、主人公くんはここで新たな疑問に気づいてしまうのです。それは尊敬していた父親に関してでした。仕事に情熱を捧げながらも時間を作っては自分たちのために使ってくれた父親。そして自分の母親とお互いに想いあっていたという父親。だからこそ主人公くんは疑問を抱いてしまうのです。その一つ目が「主人公くんの父親と母親は兄妹であったという事実」です。作中では実妹から以下のように語られます。「おかあさん、言ってた。おとうさんとは、兄妹として育てられただけって……それを知ってから、好きって気がついたって」。このセリフからすると義妹のように感じられもしますが(たぶん義妹なのでしょうが)、好きになった人がたまたま血のつながった兄妹だったという意味にもとれるわけですよ。血が繋がっていたので兄妹として育てられたけれども、それはたまたま血縁があっただけで、もっとオルタナティブな関係を目指そうぜということですね。まぁ近親相姦についてはレヴィ・ストロースによれば集団内部で文化が再生産されないように異集団との文化的接触をするためにインセスト・タブーとなっているだけだとされているのですがねと、毎回書いているような気がしないでもない。

  • 「母親との愛を裏切る象徴である異母妹の存在」
    • 実妹から両親の絆を語られる主人公くん。この時に主人公くんは新たな疑念を抱いてしまうのです。それは両親が愛し合っていたのなら、どうして異母妹がいるんだ!?との考えです。父親が離婚して後妻との間に子を成したのならまだ分かります。しかし、愛し合った妻がいるのに、尊敬していた父親は違う女を孕ませていたのか!?と。つまりは今まで可愛がってきた異母妹の存在が「母親との愛を裏切る象徴」として浮かび上がってきたのです。その疑念を抱いてから主人公くんはいてもたってもいられません。教会へ赴き保護者であるシスターさんに自分の疑念をぶつけます。父親は母親を裏切るような人物ではなかったこと。父親は異母妹を連れて来る前から「妹を守れるようになれ」と言っていたこと。主人公くんはそれを異母妹と勘違いしていたが、その言葉は実妹を指すものであったこと。実妹からは主人公くんと異母妹の関係が、主人公くんの両親とそっくりだったと指摘されたこと。故に異母妹は血縁関係のない義妹ではないか?ということ。
    • ここで焦点になるのが、主人公くんの両親が義理の兄妹なのか実の兄妹なのかということ。もし借りにここで義理の兄妹だとすると、両親は近親相姦をしておらず、異母妹はホントウは義妹ということになる。だがここで両親が実の兄妹だとしたら、両親が既に近親相姦しているということになってしまうのですね。こうして家族問題に苦悩する主人公くんでしたが、だからといって異母妹との関係は変わらない、ずっと大切にすると誓うのですが・・・。なんとこの教会でのやり取りを異母妹に見られていてしまったのですね。こうして愕然とする中で体験版は終了となります。

  • 苦労性ヒロインは支えになってやりたいなぁと思う
    • 幼なじみで苦労性の雫さんがすごくいい味を出している。片親な母子家庭でしかも母親の体調があまり良くありません。そのため昭和の匂いが濃厚な貸家に住み商店街の廃棄商品を貰って何とか生きています。雫は母親の負担にならぬよう、周囲とのコネクションを保てるよう「しっかりもの」を演じ、何でも抱え込むようになっていったのです。主人公くんは幼なじみの頃から雫との付き合いなので、今の雫が相当無理をしていることを知っており、せめて自分の前だけでは自然体でいて欲しいと願っているのです。雫が頼まれごとを進んで引き受ける際に、手助けをしてあげるというシーンには典型的な表現ながらグッとくるものがあります。立ち絵の表現も細かく雫が着ている服は制服か学校指定ジャージです。シナリオの展開予想としては母親の体調が良くないことから病死フラグが立って死生観を描くというパターンが考えられるかな?こんぼくのように貧乏ヒロインが急遽まとまった大金を手にして性格変容!という展開だったらちょっと萎えそう。