アストラエアの白き永遠「グランドエンド」の感想・レビュー

グランドエンドは「火星の滅亡」と「地球の終わり」というおはなし。
火星は滅亡する際に生きた証として遺伝子を伝播させることを望んだ。
地球では航空産業が発展し、火星からの隕石をリターンさせることに成功する。
その隕石に火星の遺伝子が内包されており、同胞と認められた人類にだけ異能が授けられた。
地球は寒冷化し火星の環境に近づいていき、人類は滅亡の危機に瀕することになる。
主人公くんは命を賭して、両者の共存の道を探り、ハッピーエンドを迎える。

グランドエンドの概要


  • メインヒロイン;雪々について
    • 雪々は滅亡した火星の生き残りの遺伝子。主人公くんの実姉;白羽幸が火星の隕石に友達が欲しいと願ったため具現化することになった。白羽幸はこの時に異能者として覚醒し、雪々の友達として交流を深めていくことになった。仲良くなる二人だが、雪々を具現化させるにはコストが必要であり、それは白羽幸の命だった。人に寄生することによって雪々の存在は成り立っていたのである。雪々はその存在が「火星の遺伝子を伝播させる」ことを本能として持っていた。その遺伝子は「異能」というカタチで人類に植え付けられていった。だが誰でも火星の遺伝子を継承できるのではなく、雪々と同類の人間にだけ、遺伝子は継承される。つまりは人類の中でも「心に傷を抱え、自分の存在を誰かに認めて欲しい」という人間にだけ雪々の存在は認識することができたのである。雪々を見つけた人々は、火星の遺伝子の継承者として認定され、異能を授けられることになる。こうして雪々が活動を活発化させていくと、逆に白羽幸の命は弱っていく。このことに気づいた雪々は、異能を伝播させることが人類を滅ぼしていることに繋がっていると知った。故に雪々は自分の存在を抹消し、異能を消却させることを目指すようになる。だが主人公くんは火星の遺伝子である雪々と地球が共存できる道を探ることを決意する。ホントウは消滅したくないという雪々の本音を引き出した主人公くんは自分の命を削って雪々を生かす。



  • 主人公くんの姉;白羽幸について
    • 白羽幸は病弱であり孤独でいることが多かった。両親は宇宙産業の研究職であり仕事が忙しい。だが母親の白羽教授は娘の幸を溺愛しており、せめてもの慰めにと火星のサンプルリターンで持ち帰った隕石を娘に見せてあげる。この時、白羽幸は隕石に友達をくださいとお願いをする。すると隕石は白羽幸とそっくりな雪々を具現化させる。この雪々こそが火星の遺伝子を継ぐ生き残りであり、心を交わした白羽幸に異能を授けることになる。白羽幸は人類最初の異能者となるが、能力を暴走させ自分の父親である螢研究員を殺害してしまった。罪の意識を背負うことになった白羽教授と白羽幸。白羽教授は研究に専念することで、白羽幸は異能者として実験モルモットになることで罪の意識を贖おうとする。そんな白羽幸の孤独を支えてきたのは雪々の存在だった。月日が経ち孤独を癒された白羽幸は雪々に対して自分一人に縛られるのではなく他にも友達を作って欲しいと思うようになる。だが雪々が活動を活発化させればさせるほど白羽幸の寿命は縮み、ついには植物人間状態になってしまった。雪々は自分の生命が白羽幸の命を削っているものだと知り、繋がりを絶とうとする。白羽幸と切り離された雪々が自立的に活動できる時間は幾ばくも残されていない。最後の冬に雪々は異能を消滅させることを願うようになった。



  • 火星の滅亡について
    • 火星は滅亡した。だが滅亡する際に、この星が生きた証を残したかった。人は無意味な死には耐えられない。そのため国家の為とか国民の為だとか友達の為だとか家族の為だとかで理由付けをする。自分はこれから特攻して死ぬけど、その死は無意味なものではなく、この国が戦後に少しでも優位になるように死ぬのだとか言って賛美するような感じ。人間は、自分たちは子孫を残して命のリレーをするからこそ死んでいけると思い込もうとするのである。生命が生きることに意味なんてないのに意味を見出そうとするのだ。火星も同様には自分の遺伝子を継承させることを強く望んだのである。人類が極限状況に陥ると種の保存のために子作りをするのと一緒である。その遺伝子の伝播者となったのが雪々の存在。雪々は火星の遺伝子を地球の人間に「異能」として継承させようとしたのである。だが全ての人間が火星の遺伝子を継承できるわけではない。選ばれし存在は、心に傷やトラウマを抱える人々のみ。「自分のことを見つけて欲しい」と願う人々だけが同じように自分のことを見つけて欲しいと願う雪々を見つけることができ、異能を授かるのである。このようにして覚醒した異能者は自分のことを理解してくれた人たちに異能を伝播させていく。こうして一定の同じような境遇を持つ異能者集団が構成されていくのだ。彼らの集団が火星化する地球に適応できるようにした新人類としての役割を果たすことになる。



  • 地球の終わりについて
    • 滅亡した火星の遺伝子は隕石のサンプルリターンというカタチで地球に流入した。その遺伝子は地球を火星の様にテラフォーミングしていく。具体的には地球の寒冷化である。この作品の設定では?火星は氷と雪の世界であり、雪氷生物が存在していた。そして地球も次第にそうなっていくのだと。雪々によって「異能」が伝播していくのは、火星化していく地球でも生き残れる新人類を創出するためだったのだ。だが火星の生き残りの遺伝子である雪々自身が地球が火星化し人類が滅亡することを望んではいなかった。それ故、伝播した遺伝子を回収し、消滅させることを願うようになる。北欧神話になぞらえて自分の計画を実行しようとした雪々。しかしメガザルをしようとする雪々を、主人公くんが放っておく分けがない。主人公くんは雪々に自分の命を与えることで、雪々の消失を阻止するのであった。地球の寒冷化は防がれたが、主人公くんたちの旅は終わらない。主人公くんと雪々は世界中を旅して異能の回収を行っていたのだ。数年後、異能の回収が終わると主人公くんの命は消えかけていた。雪々が自分の存在消失を賭けて人類を救おうとしていた様に、主人公くんは自分の命と引き換えに雪々を生かそうとしていたのだ。息を引き取る寸前の主人公くんに未来予知の異能が発動し、将来的に火星の遺伝子と地球が共存できる方法が生み出されたことが伝えられる。また雪々も異能回収の旅をしていくうちに主人公くんの命を吸い取らなくても生きられるようになっていた。新技術が発明されることを「未来で待ってる!!」とご都合主義の匂いもするががハッピーエンドを迎える。