池田嘉郎「2014 年ロシア= ウクライナ紛争の歴史的背景 」(じっきょう地歴・公民資料79号 p.7-10 2014)

今日も地道に教材研究をしていると出版社の方が教科書の売り込みにくる。昨日は山川、今日は実教。
こんな非常勤講師のところにきても教科書採択の権限はないぜ!といってやりたくなったが・・・
問題集についてアレコレ言うと、営業は献本しますね〜と喜んで帰って行った。
その営業からもらったペラ紙に書いてあった文章がわりと面白かったのでまとめた。

  • 文章の要旨
    • ロシア=ウクライナ紛争の原因を、疑似国家としての「人民共和国」から捉えた文章。ウクライナはロシア中央政府の政治的操作の対象としてみなされていることに問題の所在があると論じている。
  • スターリンの民族政策
    • 民族意識国民意識の涵養 
      • コレニザーツィア政策(現地化政策)…民族文化の助成や現地化エリートの育成を行う。民族意識をいたずらに抑え込むよりも一定の枠にはめた方が統御しやすい → 疑似国家の設置
    • 中央政府の利害が優先
      • 共産党にとって民族とは、イデオロギー的な、あるいは実利的な配慮に基づいて操作されるべき客体。
      • 国家全体の統一と安定のために、個々の民族を政治的操作の対象とする
  • ウクライナは政治操作の対象にすぎないとみなされている
    • 共産党は諸民族の利害よりも国家全体、ないし中央の利害を優先して、住民構成や領土を操作し、地域のかたちをつくりかえていった。 
    • 国家全体、あるいは中央の利害を重視して、そうしたモザイクに対して介入するという帝政期およびソ連期の為政者の統治技術は、今日のクレムリンの主人たちにも引き継がれた
    • 東部ウクライナの「人民共和国」は旧ソ連と部分的に重なるような広域圏の存在を前提とする動きの端的な例
    • 個々のモザイク単位の利害は、広域圏全体、ないしその中央の利害に従うべきものとして、中央の側からは見られている。