紙の上の魔法使いの感想・レビュー

「開くと物語が現実に適用される」という魔法の本をめぐる物語。
6章から個別分岐するが、基本一直線なので個別を選ぶとバッドエンドになる。
先にバッドエンドを回収しておくことをオススメ!します。
どうしようもないくらい不条理な鬱ゲーです。このどうにもならなさがグッとくるね。
いや、このバッドエンドが素晴らしい。ハラショー!!・・・最終的にはトゥルーエンドですが。
そしてギャラリーと回想が見られないとう不具合。修正パッチはまだですか?
ちなみに予約特典のオマケシナリオまで鬱ゲーだぜ!!

一章〜三章までは体験版と同じです。以下の感想を参照してください。

四章『アメシストの怪奇伝承』


  • かなた回その2
    • 1章『ヒスイの排撃原理』でクローズアップされた日向かなたのお話の続編です。物語は1年後に進み、主人公くんの妹;月社妃の存在は無かったことにされていました。そしてその存在の抹消を受け入れようとしていた主人公くんの前に再びかなたが現れます。魔本を閉じれば記憶が抹消されるハズでしたが、かなたの執念は記憶の抹消に抗ったのです。そして2冊目の魔本を開いてしまいます。それは「未練を残した幽霊少女の願いを叶えてあげる物語」、『アメシストの怪奇伝承』です。話の要点は以下の通り。(a)イジメを受けていた少女が、その報復として、いじめていた人々を社会的に抹殺するために、自殺を決行→(b)しかし遺書は隠蔽され無駄死に終わる→(c)全く無意味な死となってしまった少女を無事に成仏させる、という展開です。
    • 主人公くんは手っ取り早く魔本を閉じるため、自殺した少女役を割り当てられたかなたとおざなりな恋人関係を結ぶのですが、きちんとしたプロセスを経なかったので、どうしても感情移入できません。一方で、かなたには「ヒスイ」の時の記憶を継続したまま「アメシスト」に突入する二重の魔本現象が起きていました。ゆえに主人公くんに対するフラグ構築はすでに済んだ状態であり、主人公くんが他のヒロインと楽しそうに過ごす日常に我慢が出来ません。そしてとうとう主人公くんを占有するために拉致し、スタンガン祭りへ。窮地に陥る主人公くんを助けてくれるのはメインヒロインの夜子で、「アメシスト」の物語に「ヒスイ」の記憶が被っていることを指摘します。そして主人公くんはかなたの未練を断つために、フラグを折ることで物語を終結させるのでした。

五章『アパタイトの怠惰現象』


  • 魔本の管理者;遊行寺家の兄妹をめぐるはなし。
    • 3章で主人公くんの妹である妃が死亡したわけですが、そのことに関して遊行寺家の嫡男であった汀は受け入れることができませんでした。魔本は破壊すれば、開かれた物語を閉じることができる。では妃死亡編も魔本の破壊によって防ぐことができたのでは!?という思いが汀の脳裏にちらつきます。しかしながら魔本の収集は汀の妹である夜子が大切にしている使命であり、重度のシスコンである汀に葛藤をもたらします。故に汀は今まで夜子を猫可愛がりしていたのですが、次第に素っ気なくなっていくのです。汀と夜子の確執に介入したのが我らが主人公くんで、双方に落としどころをつけさせます。汀に対して妃死亡の悔恨と魔本破壊の執着を語らせ、それを夜子に盗聴させることで、その背景思想を理解させます。またムチャクチャをする汀に対しては主人公くんが後始末や未然防止をすることで魔本破壊を辞めさせる方針をとるのでした。こうして二人の仲はぎこちないながらも修復したのでした。

六章『ローズクォーツの永年隔離/終末輪廻』


  • 魔本管理者遊行寺家に仕えるメイド伏見理央のはなし。
    • 理央は幼少期孤児院から引き取られ、遊行寺家に仕えることになったゆるほわ系メイド。その存在の在り方には様々な命令が埋め込まれており、夜子に奉仕することが至上命題となっていました、故に自分の恋心は押さえつけるしか無く、その秘めた想いを解き放つためには魔本を使うしかなかったのです。こうして理央が使用した魔本は『ローズクォーツの永年隔離』で、その内容は『月姫』と同じような吸血鬼モノ。(a)永年の時を孤独に生きてきた吸血鬼が最果てに見つけたのは小さな恋心→(b)愛情を知った吸血鬼は乾いた人生に彩りを与えられ、生きる活力が湧いた→(c)しかし吸血鬼狩りに追い詰められ、主人公くんを眷属にするかしないかを迫られる→(d)主人公くんを愛するが故に眷属化しない、という流れです。理央の想いを受け入れなければストーリーは進行し、受け入れれば理央ルートに入ります。しかし、どちらを選んでも理央との別離が待っています。
    • 理央個別√で語られるのは、忘却トリガーのおはなし。理央には遊行寺から洗脳が施されており、遊行寺家の命令に反すると記憶障害が起こるという展開です。まぁ記憶障害モノの展開としては忘れながら心をすり減らすけれども受け入れることが出来るかとかがテーマになるわけで、我らが主人公くんも色々とすれ違いや煩悶を乗り越えながら理央を受け入れる決意を示します。しかし、夜子は主人公くんのことを好いており理央ルートに入るとストレスで押しつぶされてしまいます。そのため魔法使いクリソベリルの介入が入り強制バッドエンドに突入。夜子ルート一本道なはずなのに運命をねじ曲げてまで主人公くんと結ばれたかった理央のおはなしでした。

七章『ブラックパールの求愛信号』


  • 遊行寺汀が月社妃を好きだったというはなし
    • 妃に続いて理央まで消滅し悲嘆にくれる夜子。そんな折り、理央に代わってかなたが手伝いにやってきます。それで少し余裕を取り戻した夜子は主人公くんに鬱憤をぶつけ「いつまでうちに寄生し続けるのか」となじってしまいます。妃と理央の消滅により傷心中の主人公くんにとって、夜子からの言葉は衝撃が大きく、屋敷から出奔せざるをえません。そんな中、復讐に燃える汀が魔本を開いてしまうことになりました。汀が開いたのは『ブラックパールの求愛信号』。死者蘇生のはなしです。生け贄となる代償と引き換えにネクロマンシーを試みます。ついでに妃には生前好きな人がいたと知らされた汀は逆上し、その人物を死者蘇生の生け贄に使おうと考えるのです。妃の恋人は主人公くんであったため、大ピンチ。汀によってフルボッコにされたあげく、かなたまで殺されそうになります。ついに主人公くんが妹と近親相姦の関係にあったことを告げると、暴走していた汀は消え、魔本を壊したもう一人の汀が現れました。これはどういうことでしょう。突然ですがここでねたばらし。魔本の効果はドッベルゲンガーで、理性に囚われて実行できない本当の願望を実現するのだとか。妃が好いていたのが主人公くんであったことを知って、汀とは和解が成立。誰よりも先に死から立ち直ったと思っていた主人公くんが誰よりも傷が深かったというわけさ。イイハナシダナーと言うところで、またもや魔法使いクリソベルリが介入。遊行寺家の真相が明かされます。6章で散っていった理央は、魔本によって生成された存在であることが明らかに。また、遊行寺家は人間の魂を生成する禁忌にも手を出しており、妃が復活します。

八章『フローライトの時空落下/怠惰現象』


  • 妃ルート
    • 3章末尾にて交通事故で死亡した妃。その後、遊行寺家の禁忌によって魔本の力で復活します。しかし、その妃はオリジナルの妃ではなくて、魔本によって生み出された仮初めの存在でした。その妃に与えられた使命は主人公くんを失恋させること。主人公くんはガチ妹近親相姦でリアル妹と最初から好感度マックスフラグ構築済み状態でした。それは妃が死亡してからも変わらず、そんな状態では夜子ルートには入れません。故に、夜子ママンによってフラグ崩壊させるために、妃コピーが生み出されたのでした。しかしコピーとはいえキャラクター像を本物からトレースして作成しているので主人公くんと時間を重ねれば再び恋心を抱くという寸法です。この時に選択肢が登場し、魔本の妃を受け入れるか否かが問われます。まぁどっちを選んでも妃との別離が待っているのですが。それでは妃ルートに入った時の模様をお楽しみください。コピー妃には魔本によって主人公くんを失恋させる義務があるわけですが、その運命に抗おうとします。そんなコピー妃がとった手段は無理心中でした。命を賭けて自尊心を貫くのですね。『ナルキッソス』で訓練されているので、自尊心のために自殺を図る少女の意志にはわりと共感できますとも。廃墟の教会でガソリンを撒いて放火していくシーンはなかなか良いモノがあります。運命に抗って兄妹愛を貫いた二人のお話でした。

九章『ホワイトパールの泡沫恋慕/ファントムクリスタルの運命連鎖』


  • 遊行寺家の過去
    • 悲劇の娘夜子を産んでしまった母闇子のはなし。闇子は魔本の担い手を生業としており、遊行寺家の男と自由恋愛の末に結婚しました。魔本を忌み嫌う遊行寺家において、この婚姻は歓迎されませんでしたが、夫婦は共に添い遂げます。しかしながら娘として生まれてきたのは銀髪赤眼の忌み子でした。娘は夜子と名付けられ幽閉状態のもとで育てられます。夜子の悲劇は使用人が闇子に隠れて虐待をしていたことに始まり、酒の席で遊行寺家の若い衆の前で見せ物にされてしまうのです。闇子が帰ってくるとそこには墨汁を髪にぶっかけた夜子の姿が!!闇子は魔本を使って復讐を決意し、気に入らない相手を屠っていきます。しかし、魔本の使用は呪いの噂を呼び、ついに闇子は夜子ともども旦那から島流しにさせられてしまうのでした。孤島でひっそりと暮らす母子のもとへ、遊行寺汀が送りつけられてきます。なんと彼は旦那の不倫相手の息子で、夜子の一つ上だったのです。夜子が生まれる前には不倫をしていた夫。闇子は愕然とします。しかし汀は持ち前のコミュ力で夜子と仲良くなり、さらに主人公くんを連れて夜子と引き合わせるのです。主人公くんは夜子を迫害することなく、その容姿を受け入れます。そして足繁く幻想図書館に通い、夜子と懇ろな仲になるのでした。その均衡を破ったのは夜子で、主人公くんの足が遠のくことを恐れ、友人から恋人になりたいと願い出ます。フラグが成立した二人は肉体関係を結ぶのでした。幸せな空間が続く毎日が展開されるのですが、ここで夜子の母;闇子のヤンデレ属性が発動。自分の娘の幸福を願ったにもかかわらず、娘が幸せを掴むと、喪失感に駆られるのです。こうして闇子は魔本に手を出し、夜子と主人公くんの恋人関係を崩し、やや嫌いだけれども切れない関係にリライトしてしまったのです。その魔本は『パンドラの狂乱劇場』と呼ばれ、夜子ルートまっしぐらな日々が描かれています。ところが、亡き妃が『パンドラの競争劇場』のページを一部奪っていたのです。魔法使いクリソベルリはそのページを求めて主人公くんのもとに姿を現します。ここで返す返さないかで選択肢発生。返さないを選ぶと夜子個別に突入します。
  • 人の気持ちを試そうとすること
    • 夜子に対して好意を隠さなくなった主人公くんはついにその想いを告げるのですが・・・なんと夜子からはBINTAが!!しかし翌朝になると夜子デレモードが炸裂一体何があった!?いぶかしがる主人公くんですが、ヒキコモリの夜子が日常生活に溶け込み毎日を頑張ろうとする姿をみて好ましく思うようになります。しかし、それは本当の夜子の姿なのでしょうか?そうなんです。夜子は魔本の力を使って主人公くんの想いを試していたのです。夜子が使った魔本は空想具現化装置で自分が理想とする自分を投影するものでした。主人公くんを充分たらしこんだあと、夜子は自分の何処が好きになったのかを尋ねます。そこで主人公くんが答えたものは夜子の本質ではなく、理想化された夜子像でした。魔本の効果を解いた夜子は現実を突きつけ主人公くんをなじるのでした。愕然とする主人公くんですが、これまでのストーリーを通して精神的に成長していました。夜子の試練も乗り切ります。そしてどんな姿であろうと夜子は夜子だから好きになったのだと再告白。思わぬ主人公くんの逆襲に対し、逃げ出す夜子でしたが、かなたのアシストにより閉め出しをくらい、主人公くんと対峙せざるをえない状況が作り出されてしまいました。ここでついに夜子が陥落。大嫌いだけど傍にいてくれるなら全然構わないんだからとフラグ構築。ハッピーエンドを迎えます。

十章『オブジィディアンの因果目録』


  • 三章の真相
    • 三章から四章には突如として1年間の断絶があるわけですが、この1年間には何があったのでしょうか?月社妃の死の真相が明らかになります。それは妃が開いた魔本が寝取られ系物語であったということです。魔本に選ばれたヒロインが恋人への想いを忘れ違う男を好きになりセクロスする。そんな展開を知った妃は主人公くんへの想いを貫き通すために、自殺を選んだのでした。違う男に心変わりしてしまうのなら、死を選ぶ。そんな意志の強さを妃は示してみせるのです。歪んでて可愛いですね。そして妃の死の真相を知った主人公くんは首を吊って自殺(ホントウ)してしまうのです。夜子にとって妃という友達と主人公くんという思い人の両方を一挙に亡くしてしまう結果となったのです。そのため、夜子の母親の闇子は魔本を書いて記憶を捏造。新たに主人公くんを生成してしまうのでした。つまり現在生きている主人公くんは紙の上の存在に過ぎないんだよ!!ということがネタ晴らしされます。
  • かなたメインヒロイン説話
    • 月社妃が開いた魔本は寝取られ物語『オニキス』であり、主人公くんに存在が忘却される系のはなし『サファイア』ではありませんでした。では忘却物語の魔本を開いたのは誰だったのでしょうか?その彼女こそがこれまで主人公くんを陰にひなたに支え精神的支柱となったかなただったのです。一章『ヒスイ』も四章『アメシスト』もかなたが魔本を開けたのは理由があり、それは主人公くんとの絆を再び取り戻そうとする願望に答えたものだったのです。魔本の力を利用してまんまと主人公くんに近づいていったかなたは妃亡きあと主人公くんを叱咤激励しつつ寄り添っていき、ついに好感度蓄積を果たしたのです。こうしてかなたは主人公くんに記憶を取り戻させることに成功。『サファイア』の魔本を閉じることができました。こう考えるとかなたは3冊も魔本を開いているのか・・・。

十二章『ラピスラズリ幻想図書館』(十一章どこいった!?)


  • かなたルートでヒキコモリ少女夜子を救え
    • かなたの凄まじいまでの肯定と夜子の失恋がメイン。なんと正史では主人公くんとかなたが結ばれてしまいました!!夜子ゲーではなかったのか!?そんな折り魔法使いクリソベルリは世界の再編を望みます。なんと夜子に魔法の本を綴らせて新たな世界を構築させようというのです。誰とも交わらない拒絶した世界を構築しようとする夜子に対し、いつだって主人公くんたちメンバーは夜子の元へ追いすがってきます。そんな主人公くんに対し、クリソベルリは強制コードを発令。オリジナルは死亡し、闇子によって紙の上の存在となっている主人公くんに、かなたを嫌え、憎めとの指令が書き込まれます。かなたをなぐる主人公くんですが、ここでかなたがアガペーを発動。無償の愛を見せつけ、どんな主人公くんでも受け入れる決意を示します。これによりコードを破棄した主人公くんは自我を取り戻し形勢逆転。精神崩壊しかける夜子のもとへ、妃の幻影が現れます。そして夜子に言うのです。現実世界で生きるためには、きちんと主人公くんに告白してふられる必要があるのだと。恋は美しいものなどではなくどろどろしたどすぐろいものだけれどもそれを乗り越える強さが必要ということで、夜子玉砕。こうしてクリソベルリの野望は潰えたのです。

十三章『煌めきのアレキサンドライド』


  • 紙の上の魔法使いクリソベルリのはなし
    • アルビノとして聖女扱いされた結果、嘘がばれて魔女狩りという展開。クリソベルリ誕生秘話が語られます。かつて遊行寺家の先祖において突然変異の銀髪赤目のアルビノが生まれてしまいます。封建的な当時の社会においてその存在は許されるものではなく、ましてや地元の豪族でもあったため、劣等分子として認定されたくなかったのです。そのためアルビノ少女は神として崇められることとなりました。それだけなら良かったのですが、父親はアルビノ少女の容姿を利用して新興宗教を起こし、寄付金を巻き上げていったのです。しかしメッキははがれるもの。アルビノ少女はひょんなことから信者の少年と友達になっていたのですが、母親を亡くした少年に自分に神聖などないと告げてしまったのです。突如豹変して怒り狂う少年。そしてその晩、少女は火炙りの刑に処せられてしまうのです。眼前には父親と母親が率先してアルビノ少女に騙されたと詰っているではありませんか。少女はこうして復讐を滾らせ、紙の上の魔法使い「クリソベルリ」となったのでした。こうして誕生秘話を知った主人公くんたちは「クリソベルリ」までをも受け入れることにします。幻想図書館の日常に新たなメンバーが加わりトゥルーエンドを迎えたのでした。