2014年発売ノベルゲームまとめ

2014年に発売したノベルゲームの感想まとめです。
各ゲームの概要を記し、その下にこれまでに書いた感想をまとめてあります。ぜひお読み頂き2014年の情勢を掴む一助にしていただければ幸いです。どうしてこのゲームをしていないの?という声もありますが・・・。個人的にオススメなのが『CloverDay's』『蒼の彼方のフォーリズム』『紙の上の魔法使い』の3本です。世間的な評価が高かったのに個人的に受け入れられなかったのが『星織ユメミライ』。ひたすらリア充が社会的成功をおさめていく様子が垂れ流されており、閉口した。前評判の割には世間的な評価もあまり高くなく原画ゲーと化してしまったのが『南十字星恋歌』でした。

目次

鏡遊、竹田 、鋏鷺『12の月のイヴ』(minori、2014-01-31)

ループもの・父子相関・ご都合主義。攻略ヒロインは三人いますが由紀ルートが正史で、あとの二人は数合わせ感が強いです。正史では父子家庭で、父親との関係が希薄であり、不治の病を負う少女;由紀が過去改変に挑みます。過去に跳躍した由紀が主人公くんと結ばれ、子どもを孕むと、その子どもは自分となるという展開です。由紀は自分の命と引き換えに娘を生み、主人公くんは不治の病を治すために医者になるのですが、手を尽くしても治療が出来ないと心をすり減らして疎遠になるというループが発生します。鬱ゲーとして主人公くんの苦悩が描かれておりグッドなのですが、ループにおける過去改変が結構ご都合主義的であり、これを受容できるか否かで評価が分かれると思います。


 

セロリ、てつじん、市川環『世界と世界の真ん中で』(Lump of Sugar、2014-01-31)

思念体世界モノ。未練を残して散っていったものたちの魂が、現世と来世の間に思念体世界を生み出し、自分の未練を乗り越えるための強さを得るという展開です。『リトルバスターズ』と同じようなイメージです。主人公くんは思念体世界を創りだしている意志の一つであり、ヒロインを攻略しながら少女救済を行っていきます。個人的にオススメなのが愛良。素直クールで主人公くんによく懐いており黒髪ロングという狙ったかのようなキャラクター設定。各キャラの個別√を統合するようなグランドエンドは用意されていないものの、キャラゲーとしては充分に楽しめたと思います。


 

桑島由一、七央結日(安堂こたつ)、森崎亮人、かづや『イノセントガール』(FrontWing、2014-02-28)

美術モノのキャラゲー。挫折したポエマーの主人公くんが自分とは違う分野の芸術を専門とするヒロイン達と交流することで、自分の黒歴史と向き合える強さを得るという内容です。シナリオの質はメインヒロインのかがり√が頭ひとつ抜けており、芸術に関するテーマ性や主人公くんの葛藤や煩悶がよく描かれています。無口系クール少女というキャラクター表現も相まってキャラに愛着も湧きます。特に主人公くんの芸術に対する姿勢が断罪されるシーンは一読の価値ありだと思います。しかしながら、かがり√の途中からかがりが抱えていた両親との問題が深刻なものでないことが明らかになり肩すかし感を食らい、最後はみんなの絆で問題解決とよくある大団円展開に帰結してしまうので少し残念。


 

宮蔵、保住圭、瀬尾順、空下元『CloverDay's』 (ALcot、2014-03-28)

幼馴染みと双子をテーマしたキャラゲー。過去編の回想と現代編のつながりが良い感じに展開されます。各個別ごとにテーマ性もあり、それぞれのキャラクターも可愛いです。しかしながら個別√における展開に矛盾を感じてしまいます。鷹倉杏鈴√では主人公くんが鷹倉姉妹を一人しか選べずに葛藤するのですが、加賀美姉妹√では普通に3Pしており、主人公くんの苦悩は一体何だったの?とツッコミどころ満載。鷹倉姉妹√ではダディが良いキャラをしており主人公くんに対して父親像を提供するシーンは結構好ましく感じます。個人的にオススメなキャラが鷹倉杏璃。幼少には主人公くんを支えていたものの、成長後には主人公くんに支えられるだけになり、対等でいられなくなった悲しみを主人公くんにおんぶされながら心情吐露するシーンは印象深かったです


 

日野亘、衆堂ジョオ『ハロー・レディ!』(暁WORKS、2014-03-28)

学園異能バトル的な主人公くんの復讐物語。『コードギアス』に似ています。個性の強い主人公くんが俺TUEEEで無双しながら復讐を遂げていくのですが、最終的に個人的な復讐が昇華されて世界のシステムとの戦いになり、社会全体の問題になるという展開も大好物です。グローバル資本主義の最終的な帰結として新自由主義の極地になる未来像が提示されており、一部の特権階級とその他大勢の大衆となる社会構造を打破するためという崇高な理想を掲げるラスボスに主人公くんがどのように対峙していくかが見どころとなります。最終的には主人公くんの復讐が世界のシステムに排除されたものたちの抵抗に繋がっていき、「社会のための崇高な理想」を打ち砕きます。結構好きだったのでファンディスクの『ハロー・レディ! New Division 』もプレイしました。


 

さかき傘『ひこうき雲の向こう側』(FLAT) (2014-03-28)

恋愛観測ゲー。オープニングやwebサイトのイメージとは異なり結構重たいテーマを扱います。イモウト寝取られ・イジメ問題・黒歴史との対決・縋ったら取り上げられると怒濤の展開が待ち受けています。ほのかな恋心を抱いていた少女が再婚により義妹になり恋愛感情が歪んだというと有り触れた設定ですが、読者へのストレスの掛け方が上手く読ませる内容になっています。しかしご都合主義もまた満載であり、選択肢でヒロインを肯定してやると今までのストレスが何だったかのようにあれよあれよとハッピーエンドになります。イモウト寝取られは主人公くんの勘違いでした〜というオチですし、瑛莉シナリオであんなに廃部問題でカタルシスを見せたのにあっさりと部活新設!!まぁあんまり引き延ばしても蛇足ではありますが。ひこうき雲=「義妹への恋慕というトラウマの象徴」となっている主人公くんが、ひこうき雲に対して新解釈をするのが本作品の見どころです。エクストラの佐藤さんシナリオではトラウマそのものを解消させてしまいます。ひこうき雲の向こう側には虹が出るのでもなく、晴れた空が見られるのでもなく、雨もそんなに悪くないという展開ですね。終結部分では瑛莉からプレイヤァに向けてメッセージが投げかけられますがメタ的展開やなぁとくらいしか思えなくて申し訳ない限りです。


 

高杉九郎、矢田影見、箱十(Hako10)『天秤のLa DEA。 戦女神MEMORIA』(エウシュリー、2014-04-25)

ファンタジーRPGのシリーズもの。今回は戦乙女のヴァルキリーの未練を叶えるはなし。神々の戦争において戦わずにして封じられたヴァルキリーは、強い敵と戦って死ぬことを欲していたのです。謎解き要素が結構あり、攻略サイトを見ずにやったのでなかなか頭を使いました。RPGモノは雑魚キャラを潰すのが結構好きなのでたまに無性にやりたくなるのですが、戦闘を楽しめるのは中盤くらいまで。主人公くんのセリカさんを育てすぎると開幕全体攻撃で敵を一掃できてしまいます。レベルを上げすぎたせいか、ヴァルキリーさんも数ターンで倒せてしまい最後は効率厨の作業ゲーと化してしまっていた。


 

ぷりん、ヨイドレ、ドラゴン『ランス9』(ALICE SOFT、2014-04-25)

すっかり御長寿ものとなったランスシリーズ。「9」はファミコン版『信長の野望』や『うたわれるもの』のようなタクティカルバトルです。碁盤の目状に区切られたフィールドでキャラを動かし敵を倒していきます。ムサイ系の男たちが革命に挑む渋い展開も用意されており、パットンゲーでもあります。革命に倒れて散っていくオッサンやパットンやヒューバートの成長などランスくんがセクロスする以外にも見せ場があり良い感じです。タクティカルバトルが楽しかったのでフリーバトルをやり過ぎてしまい各キャラのレベルが上がりまくって最後の方が作業ゲーになってしまいました。周回プレイもやりました。


 

北側寒囲『レーシャル・マージ』 (AXL) (2014-04-25)

共通までは面白い。中世ヨーロッパ系ファンタジー?身分闘争モノ。主人公純朴過ぎて鼻白む。辺境から出てきた世間知らずだが俺ツエー系の少年が貴族社会の常識を打ち壊していくカタルシスを味わうことができれば楽しめるのでしょう。しかし個別がだるすぎて読み進めるのが結構辛いです。共通√までは主人公くんと同室の貴族男の小物感溢れる三枚目が原動力となり、階級社会の象徴となってことあるごとに立ち塞がるので、結構テキストを楽しめます。しかし共通の最後で貴族男が改心してしまうので、個別は本当に読み進められない。キャラゲーなのにヒロインに魅力を感じることができず途中で投げてしまいましたごめんなさい。シナリオに目的がないキャラゲーはヒロインに依拠するので難しいものだ。


 

保住圭、姫ノ木あく、森崎亮人『サキガケ⇒ジェネレーション! 』(Clochette、2014-05-30)

ネトゲものなゲーミィフィケーション的キャラゲー。主人公くんたちがフツーにネトゲをやっていく一方で、そのネトゲは実は遊びながら魔術をコントロールできるようになる学習システムとなっていたのだ!!という展開です。各キャラがきちんと立っており、読んでいて楽しいのですが、終盤になるにつれ次第にネトゲ的要素が薄くなってしまいます。ボスとの戦闘描写をもっと詳細に描いたり、戦略面や駆け引きを楽しむテキストが濃ければより面白かったかと。近頃は中二病ヒロインが量産されているのですが、主人公くんが中二病実妹のために世話を焼くテキストはなかなかグッときます。


 

おくとぱす、assault、北川晴、たにかわたかみ『Golden Marriage』(ensemble、2014-05-30)

ひたすらお嬢様ものを出し続けるensembleの作品。絵が可愛いので買いましたが、なにか?財閥を次ぐために婚約者を決める主人公くんですが、個別に入るために相手を決める文化祭の社交ダンスまでは割と楽しく読むことが出来ます。個別に関しては、シナリオが短いように感じます。特に透子はキャラも良好であり、シナリオのテーマも経済バトルだったので結構期待していたのですが、投資による企業育成要素が薄くて結構残念でした。結婚後の生活が全然
描かれないなぁと思っていたらファンディスクがでるそうな。マリーカ攻略パッチもやったのですが、ホントウにオマケ程度!もっときちんと書いて!!!


 

みなせ未來『恋がさくころ桜どき』(ぱれっと、2014-06-27)

和泉つばす先生の原画集です。キャラゲーでシナリオはそれなり。死神が命を巡る問題に悩む様子を通して死生観を描こうともしているのですが、あんまり設定を活かせていません。特に昨今の作品はハッピーエンドにしとけ!なノリで折角ヒロインが自分の命を犠牲にして主義主張を貫いて散っていくのに、エンド後に即座に復活とか。キャラとしては「めんどくさいかわいいヒロイン」として夕莉の魅力が際立っていてステキです。夕莉と主人公くんがもどかしい思いをしながら情交を深めていく流れは楽しく読めました。しかし途中から夕莉の双子姉妹:花子との関係性に主眼が置かれるようになっていきます。


 

保住圭、なかひろ『アストラエアの白き永遠』(FAVORITE、2014-07-25)

火星の雪氷生物が地球に移転してくるSF展開と異能バトルが展開されます。『星空のメモリア』や『色とりどりのセカイ』などFAVORITEさんは炉利が真ヒロインだったり、パッケージに書かれていないキャラがメインヒロインだったりします(炉利ではメアや真紅先生、裏ヒロインは夢さんなど)。本作も御多分に漏れず、パッケージに書かれていない裏ヒロインが活躍しますし、炉利が真ヒロインです。しかし、私はメインヒロイン枠の落葉と異母妹のりんねがイチオシです。なかひろ先生の『こいとれ』でうたは姉さんがアイロン掛けをするシーンがあるのですが、落葉がうたは姉さんシナリオの展開を踏襲している姿を見てノスタルジックになりました。そして異母妹のりんねが主人公くんを想い続ける様子や無口系情熱少女的なキャラクター像など良い感じです。


 

元長柾木ギャングスタアルカディアヒッパルコスの天使〜』 (WHITESOFT、2014-07-25)

哲学思想ゲー。私は哲学思想ゲーは買い支えます。ギャングスタアルカディアはリパブリカの続編でシャールカ先輩ゲーです。社会的公正を正義として行使する天使に対して、個人的な事情を抱える少数者の権利を唱えるシャールカ先輩が立ち上がります。ユーゴスラヴィア内戦が元ネタかと思われる民族対立の描写で仲良くしていたご近所さんに裏切られるシャールカ先輩が印象に残っています。主権国家体制・国民国家民族意識などが盛り込まれていて楽しく読めます。しかしながら形而上学的存在である天使との戦いが結構雑に終結したので、もう少し丁寧に描いて欲しかった感がありました。


 

魁、丘野塔也、にっし〜、今科理央、白矢たつき『星織ユメミライ』(tone work’s、2014-07-25)

リア充成功譚。リア充がひたすら社会的成功をおさめる様子を描いていきます。リア充のテンプレがこれでもかというほど盛り込まれており、ある意味リア充の理想的テンプレ展開が続出していきます。はっきりいって非リア充がやっても鼻白む展開が多く、ご都合主義的な幸せ空間がだらだらと描かれる冗長性が否めません。キャラにイマイチ愛着が持てなかったので、長いシナリオは結構きつかったです。おそらくリア充のプレイヤーのみなさんは楽しくプレイできたのではないでしょうか?鬱ゲーや泣きゲーが好きな人にはお勧めしません。


 

瀬尾順『サツコイ〜悠久なる恋の歌〜』 (ALcotハニカム、2014-08-29)

主人公くんが実妹のために命を捧げる話。きちんと主人公くんが死に、その命の尊さを妹が継承するので、死生観や自己の存在証明のテーマ性が伝わってきて楽しく読めます。一般的な幸せではないとしても、自分が生きた証をそれぞれに示せれば良いという考え方が大好きです。安易にハッピーエンドにしとけという展開にはならずビターエンドで締めているのでグッときます。学園生活を楽しいものとして描かずドロドロした他者排斥の空間として描かれているので好感が持てます。ヒロイン達のキャラも立っており、お馬鹿なノリの中にも鬱ゲ的暗さがありナイス。


 

氷雨こうじ、まとま『南十字星恋歌 Southern Cross Love Song』 (すたじお緑茶、2014-09-26)

東南アジア?の新興国を舞台にしたキャラゲー開発独裁や資本投資、貴族的寡頭制やSF展開など様々なテーマ性を盛り込んでいるわりには、どれも全て活かしきれず、消化不良となっています。そしてプロットと構成が甘いので、ご都合主義的展開で収束することが多く、ここまで持ってきておいて投げちゃうの?という場面が多々ありました。あととにかく主人公くんが鼻につくこと限りなし。自分の不幸な境遇自慢とバイト戦士で身につけた特殊スキルをプッシュしているわりには活躍せずにヒロインに頼って終わってしまいます。また一般的な世間とは違う、主人公くん独自の視点を強調する余り、ヒロインとの会話でカットインしまくり価値観の押しつけをおこなうところは正直どうよ?と思いませんか。


 

範乃秋晴 , 草壁よしお『あの晴れわたる空より高く』(Chuablesoft、2014-09-26)

ロケットを打ち上げる話。専門用語オンパレードでも専門的な知識に裏付けされた作品というものはグッときます。主人公像には賛否両論あったようなのですが、私は受け容れる事ができ、わりと高評価です。お馬鹿でも前向きで興味のあることに関しては深く掘り下げていくことができ、きちんと周囲にも配慮ができるって結構好き。ヒロインの中では電装部門を担当し、ロケットを水平発射させる夏帆ルートが一番ステキだと思ってます。いや単に素直クール好きということもありますが、主人公くんが納得できるように知識をかみ砕いて教えてくれたりとか率直に好意を示してくることとかが良い味出してます。「困難な状況の中で、目標のために努力する姿」と書いてしまえばそれまでですが、ロケットに対する情熱を感じさせる作品となっています。


 

かずきふみ『なないろリンカネーション』 (シルキーズプラス) (2014-09-26)

霊能探偵モノ。霊視の異能を授かった主人公くんが霊媒師の跡を継ぎ鬼を使役して様々な事件に挑んでいく。シナリオは基本的に1本道であり個別エンドが異なるだけである。事件編は結構面白く、鬼の能力を使いながら謎を解き明かしていく過程は手に汗握る。また事件編のメインはバラバラ殺人事件となるのだが、メインヒロインがこの事件の被害者であり、実は霊体で既に死んでいました〜というのが一番のギミックとなるのであろう。個別√では実は既に死んでたメインヒロインをどのように処遇するかでエンドが異なる。成仏させるのか、転生させるのか、眷属とするのか様々な解決方法を思い悩むことになる。1周目は確かに面白いのだが事件編は基本的に一本道なので、個別はシナリオを回収するための作業ゲー感が強くなってしまうのが難点か?


 

吉宗鋼紀他『マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス』(age) (2014-09-26)

難民問題や民族融和の不可能性を大きく取り上げる作品。主人公くんは人種差別を受けて排他的となってしまった日系アメリカ人。当初は自己の存在証明をすることにより「善良なアメリカ人」として承認されることに躍起になっていたが、多文化共生を体験して精神的成長を果たす。また主人公くんと対になる存在として、戦友を戦死させてしまった武家娘が描かれ、お互いがぶつかり合いながら成長していく。武家娘はメインヒロインばりにスポットライトを当てられていくが、途中で攻略ヒロインは交代する。本作の中で一番印象深いのが難民が起こしたテロリズムであり、排斥される移民問題と右傾化する社会、ポピュリズムなどが描かれ、2010年代の国際社会の状況が反映されている。このテロの凶弾により武家娘は倒れるのである(実は生きてました展開だが)。第二ヒロインがソ連で生体実験の対象となっているデザイナーズチャイルドであり、彼女の「尊厳ある死」のために主人公くんは主体的な意志決定をなして、女のためにすべてを捨てることを選び取るのだ。

 


下北沢ダイスケ『迷える二人とセカイのすべて』 (Lass、2014-10-31)

ホントウは『箱庭ロジック』を買うつもりだったのですが、田舎のショップは前日深夜売りでも、そもそも入荷していないという嘘のようなホントウの話なので、箱ロジを購入できず(予約しろよ)・・・まぁ折角車を転がしたのだからと『まよすべ』を購入。学園異能バトルもので異世界のエルフを救うというはなしです。学園七不思議編はお使いRPG的な要素が強く、異世界編でもバトル描写もそれほど印象には残らなかった感じ?ですかね。キャラとしては主人公くんを支え続ける乙羽と素直クール枠の桃華が結構良かったです。


 

木緒なち、渡辺僚一 、陸奥竜介『蒼の彼方のフォーリズム』(sprite、2014-11-28)

挫折した主人公くんがコーチとしてヒロインを指導する中でトラウマを克服していくはなし。主人公くんの苦悩や葛藤、煩悶が上手に描かれており、好感が持てます。メインヒロインは明日香ですが、それに劣らずみさきちシナリオも良作となっているのでオススメ!明日香シナリオでは指導者が選手の内面にまで踏み込むかどうかが扱われており、明日香の本質に触れることで主人公くんが覚醒していく過程がグッときます。ライバルキャラからのトラウマ攻撃によって精神崩壊しかける主人公くんを明日香が肯定し続けるシーンが一番の見せ場!!一方のみさきちシナリオでは挫折したみさきちと主人公くんが手を取り合い立ち上がっていく姿が心を打ちます。みさきちが歪みながらダークサイドに堕ちていく様子や歪んだからこそ、そこから立ち上がっていく人間臭さが大きな魅力となっています。歪んでるみさきちが大好きです。


 

おぅんごぅる『キミのとなりで恋してる! 』(ALcotハニカム、2014-11-28)

おるごぅる改めおぅんごぅる氏が華麗に復活。開発ブログから漂う作品の情熱?は一種のお祭り感がありました。話の内容としては陸上を扱うスポーツモノなのですが、攻略できない妹がメインヒロインばりの活躍をしたりとか、主人公くんが兄であり続けるための覚悟とか、幼馴染みとの絆の回復とか、親友系ヒロインとの関係性変化などが描かれておりグッとくる展開も多いです。また主人公くんの男友達が主人公くんばりに活躍しており、DVを食らっていた少女を産婦人科で堕胎する場面は本編を押しのけて際立ったシナリオとなっています。小品ではありますが、プレイ後にほんわかした気分になれる良ゲーですので割とオススメです。


 

ルクル『紙の上の魔法使い』(ウグイスカグラ、2014-12-19)

開くと現実セカイを浸食する魔法の本をめぐるおはなし。鬱ゲー展開でありバッドエンドスキーにオススメの良ゲーです。体験版の3章まではほんわかした雰囲気でシナリオが進んでいくのですが、ガチ妹である妃がアクロバッティブな活躍を見せ続けます。他のヒロインたちがある程度救いが用意されているのに対し、妃は自分の尊厳(お兄ちゃん好き好き大好き好き好き)を貫き通すために死を選ぶという展開。そして妹大好きな主人公くんは自殺するという伏線が張られています。体験版明けの4章からは実は主人公くんは死んでおり魔本によって生み出された存在というのも印象深かったです。最初は夜子ゲーだと思ったのですが、各キャラがそれぞれ独自の哲学や思想を見せてくれるので楽しめた作品でした。


 

なかひろ『彼女のセイイキ』 (feng、2014-12-19)

低価格のピンヒロインもの。ツンデレお嬢様である冬華さんのキャラクター表現は素晴らしく、なかなかの良作です。シナリオ的には素直になれない没落お嬢様が見栄を張るためにおんぼろアパートでバイトをしながら奮戦していくところがいじらしい。(お嬢様の貧乏暮らしで見栄をはるというパターンは『ましろ色シンフォニー』でもありましたが・・・。)最終的には自分を好きになってもらう覚悟が足りなかったと受け身の自分を捨て去り、あくまでも自分らしく「私を好きになりなさい」を発動させます。ピンヒロインものですが、非攻略キャラもなかなかステキでロシア娘マイカツンデレ妹のゆかな、そして立ち絵すらないものの物語の重要なキーパーソンであるファ○マの店員ちゃんなど魅力的なキャラで溢れています。


 

東ノ助『月に寄りそう乙女の作法2』 (Navel) (2014-12-19)

「つりおつ」のルナ様エンドに「おとりろ」のりそな√を交ぜた世界観。ルナ様と遊星の長男;桜小路才華が主人公。ヒロインを攻略するというよりは才華ゲーに近く、トラウマと過去に束縛された才華がヒロインとの交流を通して如何にして主体的な意思を確立するかがテーマとなっている。これまで技能を磨き続けてきた才華は、常に「何かが足りない」と言われてきたことをコンプレックスとして抱いており、他者との交流の中で、その「何か」を見出していこうとする。技術とセンスの問題で、技術だけ磨いてきても他者と交流しないと創造は広がらないし、センスだけ磨いていても技術が足りなきゃ表現できないよという場面はかなり印象に残った。積極的に他者と絡んで、自らの価値観とは異なる世界を知らねばならないというのは耳が痛いの。サクラノ詩の「因果交流」のテーマと共通しなくもないかも?あと才華ゲーなので個別√に入ったあとサクサク進みすぎて少しアッサリ感もある。