夏の色のノスタルジア「真乗寺文音」シナリオの感想・レビュー

真乗寺文音シナリオは自罰的な症状の罪の意識の贖い方についてのおはなし。
「死」そのものを悼まずに他者の死を借りて「自罰」を求める少女のココロを解放せよ!
孤独を感じて家族を欲しがる文音さんの支えとなってあげましょう。
死生観と家族を描くナカナカよいシナリオでした。

真乗寺文音シナリオの概要


  • 植物人間になってしまった文音さんの義妹
    • 文音さんは一つ年上でグループのまとめ役のしっかり系お姉ちゃん。しかし二面性を持っていて時にはゾッとする側面も見せることもあります。その理由は文音さんが居場所をなくし、閉鎖空間に閉じ込められている理由とも重なってきます。文音さんが囚われている理由の一つ目に挙げられるのが義妹との関係です。文音さんは幼少期に母を亡くし父親と二人暮らし。しかも父親も仕事で忙しく週末にしか帰って来ません。故に家族がいない寂しさを抱えていたのです。こうして幼少期における主人公くんたちグループの一員となったのですが、そんな文音さんに父親の再婚のはなしが持ち上がったのです。家族が欲しかった文音さんは喜びます。しかしながら新たに妹となった義妹の麻由紀は性格が悪く、人の物を欲しがってねだっては手に入れると興味を無くすのです。文音さんが大切に思っていた主人公くんの存在もそうです。麻由紀は主人公くんが好きだったのではなく、姉が好意を抱いている人なので奪いたいという欲求のためにモーションをかけてきていました。そしてとうとう麻由紀は文音さんが大事にしていた主人公くんとのほぼツーショット写真を破いてしまったのです。文音さんにどす黒い殺意の感情がわき上がります。そんな中、麻由紀が段丘から落下してしまう事件が発生。偶然、麻由紀を発見した文音さんは助けを求めに走るのですが膝を打ち付けてしまいます。痛みで意識を朦朧とさせながらも、ご近所に駆け込み救急車を呼ぶのですが、結局麻由紀は植物人間状態となってしまうのです。文音さんは自分が麻由紀に殺意を抱いたことがあったことや、膝を怪我してすぐに助けを呼べなかったことに自責の念を強めていきます。そして自罰の意味もこめて自分の人生を投げ打って、植物人間となった義妹に献身的な奉仕を捧げていくのでした。数年後、ついに麻由紀は死を迎え、文音さんは閉鎖空間に囚われることとなったのです。



  • 人の死を利用して自罰を与えること
    • 文音さんが閉鎖空間から解放されるには自罰の意識と向き合わなければなりません。主人公くんとの情交を通して、文音さんは自分が麻由紀の死を利用しているだけにすぎないことに気づきます。ここで引用されるのが芥川の『枯野抄』の師匠が死ぬときの弟子の心境エピソード。「自分たち門弟は皆、師匠の死を悼まずに、師匠を失った自分たちを悼んでいる」。文音さんは自分もそうであり「大切な人を失う…というときに、その死そのものを見つめるのではなくて、自分のこと…心の動きとか…そんなものばかり追っている」と分析していきます。こうした古典の引用をされると自分なんかはハラショーといいながら小躍りしてしまいます。やはりこういう古典からテーマを引用して娯楽作品と絡めると良いなぁと。そして「人の死に意味はないのにそこに意味を見出そうとするのは生者のエゴ」展開が良い感じに挿入されてグッときます。文音さんは麻由紀の死に意味を見出そうとしていたに過ぎないことに気づき、主人公くんもまた無理心中した両親の死から解放されるのです。「人の死に意味なんかないよな…本当は…死んだらそこで終わり。でも俺は意味があって欲しかった」と主人公くんは死者の死そのものを見つめられるようになったのです。麻由紀が植物人間となった遠因は主人公くんにありました。あまりにもつきまとう麻由紀がうざくて主人公くんは振り払ってしまうのです。その際、麻由紀は履いていたサンダルのヒールの部分を折ってしまうのでした。主人公くんが去った後、麻由紀は癇癪を起こして自分でサンダルを放り投げてしまいます。そしてそれを取りに行こうとして段丘から落下したのでした。真相を知った主人公くんは自責の念に駆られます。しかし人の死を見つめられるようになっていた主人公くんはそれが自分の罪悪感を軽くしたいだけの行為だということに気づき、麻由紀の死を受け入れて、死そのものを悼めるようになったのでした。


  • 文音さんはこっこが欲しい
    • 麻由紀の死を乗り越えた筈の二人でしたが、それでも閉鎖空間から出られませんでした。なんで?未練からは解放されたはず。ここで文音さんが囚われていた第二の理由が登場します。それは文音さんが子どもを産めない身体になっていると危惧していたことでした。このとき、生理が来ていない可能性や子宮頸癌を連想したのは私だけではないはず。しかしながら実際には、現実世界で文音さんが交通事故の被害者となっていたことだったのです。もし閉鎖空間から現実で子どもができない身体になっていたらどうしよう・・・。そんな想いが文音さんを支配し膣出しばかりをねだるようになっていたのです。現実世界には将来がないと嘆く文音さんですが、閉鎖空間では時が止まっているのでどんなにまぐわっても妊娠できないのもまた事実。未来を描くために、とうとう閉鎖空間から脱出します。現実世界に戻ってみると、案の定文音さんは交通事故あっていました。幸い一命はとりとめたのですが、今度は文音さんが植物人間状態に・・・。文音さんは夢の中で、ボテ腹となったおなかをさする幸せに囚われていたのです。そんな文音さんに対して主人公くんは毎日病院に通い現実に戻ろうと叱咤激励。主人公くんの支えにより文音さんは夢から覚めることができました。死を乗り越え自罰の意識からも解放された文音さんは、現実世界でも本当に子どもを孕み、ハッピーエンドを迎えるのでした。