夏の色のノスタルジア「折口美羽」シナリオの感想・レビュー

折口美羽シナリオは双子実妹関係性変化モノ。
同工異曲の「イモウト関係性変化」が粗製濫造される中、どう差異化するかが妹物のテーマ。
美羽シナリオでは兄妹としての同質性から異性へ分化する戸惑いが丁寧に描かれます。
また両親が無理心中した際のトドメの言葉を放ったのも美羽でした。
ただのイモウトものに終わらない工夫がされたシナリオです。

折口美羽シナリオの概要


  • 兄妹の一体性と異性への分化
    • 折口美羽は主人公くんの双子のイモウト。お兄ちゃんのことは割と大好きで独占欲剥き出し。他のヒロインに対して敵意を向け兄が男性として見られることを好んでいません。また美羽は性的なことに関して嫌悪感を抱いており、兄のことが大好きであるものの、異性として意識したがらない傾向がありました。なぜ美羽は性的なことを忌避するのでしょうか?それは主人公くんと自身の間の同質性を重視していたからでした。美羽は双子の片割れであった主人公くんを他者をこえたもう一人の自分であると認識していたのです。しかしそんな幼年期も終わりがやってきます。美羽は初潮を迎えて女になったのでした。第二次性徴により異性との分化を眼前に突きつけられた美羽は今までの土質生が失われていくことに呆然とし狼狽します。以来、美羽にとって性的なことは自分と主人公くんが違うということを認識するトリガーとなるので、主人公くんにべったりであるものの、肉慾は抱きたくないという想いを持つようになっていったのです。そんな美羽に対して、幼馴染みグループの再結成は主人公くんに対して異性を意識させるものでした。主人公くんが女に視線を向けるたびに美羽はむくれ、また美羽自身に対しても主人公くんが異性を感じることがあると知って愕然とします。そんな美羽でしたが、自分もまた女であることを意識せざるをえなくなります。女になりたくないと泣いていたにもかかわらず、自慰行為に耽るようになります。主人公くんの汚れ物をクンクンし、さらには主人公くんのベッドの上で秘所を弄るのです。こうしておなぬーを見られた美羽は自分がなぜ性的なことを忌避していたかを認め、双子の分化の恐怖を抱いていたことを受け入れることができたのでした。



  • 両親の心中問題
    • 双子の同質性問題を解決した主人公くんと美羽でしたが、美羽はまだ隠していたことがありました。それは父親が家に火を放ったトリガーを引いたのは美羽自身かもしれないということでした。主人公くんは子供心ながらに両親の不和に対して責任と後悔を抱いていました。借金の保証人になったがために多重債務者となり、ココロから愛している妻が他の男性と不倫をしているという状況に陥った父親。そんな父親に対して憐憫を持っていた主人公くんは両親の問題に自分ができることは何かあったのではないか?と苛まされていたのです。美羽と主人公くんが抱える過去の呪縛は閉鎖空間において過去との同質体験をもたらします。つまりは心中事件の再体験をするのです。この体験を経て美羽は主人公くんに対して黙っていたこと、即ち父親に放った最後のトドメの一言を放ったことを告白します。酒に溺れ家族に縋った父親に対して主人公くんにしか関心のなかった美羽はすげなく突き放したのでした。秘めていた想いを白状した美羽と、何も出来なかった無力感に落としどころを見つけられた主人公くんは心中問題を克服できたのでした。こうして閉鎖空間から解き放たれた二人は、結婚もできないし子どもも作れないし世間から隠れなければいけないとしても互いが互いの居場所となりずっと一緒に生きていくことに幸せを見出したのでした。