雑録

サノバウィッチ「綾地寧々シナリオ」の感想・レビュー

人間関係が希薄だった少年少女が相手に踏み込む勇気を得るというおはなし。
先天的に異能を持つ主人公くんと魔法少女の綾地さんがお互いの秘密を共有しながら情交を深めていく。
現世編では諦念に縛られ動けなかった主人公くんが綾地さんと協力しながら主体的意志を獲得していきます。
しかし綾地さんの願いが叶ってしまうとタイムリープが発動し、世界が改竄され、後世セカイ編へ突入。
オープニングにRESTARTが追加され再チャレンジ出来る社会を要求。強くてNEWGAME!
後世セカイ編では今度は主人公くんの支援で綾地さんが自己肯定感を持てるようになるという展開です。

現世編


  • ラーメンデートとお腹撫で撫で
    • 内向的な性格であり余り外に出かけない綾地さんですが、外のセカイに興味がないわけではありません。むしろ一人だから入りづらいお店などに関心が深まっていました。綾地さんの気になるお店の一つにラーメン屋があったのですが、一人で入れなくて躊躇してしまう所も可愛いですね。我らが主人公くんは綾地さんをいざなってラーメン屋の暖簾をくぐります。その際綾地さんが発動した呪文がチャーシューダブル・メンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシ。ズガーンと目の前にものすごいドンブリが置かれますが、綾地さんは見事それを平らげます。ご満悦して帰宅する綾地さんでしたが、翌朝胃もたれが起こって凄まじいことに。主人公くんは担任教諭に頼まれてお見舞いに行き、うどんやすり下ろしリンゴを作って綾地さんをサポートします。その際、綾地さんにお願いされたのが、お腹撫で撫で。家族に良い想い出があまりない綾地さんでしたが、幼少期に体調を崩した際にやってもらっていたそうな。ノスタルジックな思い出式精神安定法。主人公くんは綾地さんのお腹に「め・の・お・く」と描きながら、お腹をさすって上げたのでした。「お腹撫で撫で」は『ひだまりバスケット』などでも登場しますが、「病床で甘えたがりな様子」を表現する技法として割と好きなパターンです。



  • 悪友Aと担任教諭
    • 綾地さんと好感度を蓄積しながらオカ研お悩み相談に励む主人公くん。ある時、主人公くんの悪友Aから恋愛相談を持ちかけられます。それは担任教諭に恋心を抱いているというものでした。主人公くんたちは担任教諭の趣味やこのみなどを新聞部のアンケートを利用して聞き出すのですが、その際に痛み入るお言葉を頂戴します。主人公くんは人間関係において相手の内面に踏み込むことを極端に避けてきました。しかしながら、自分が傷つきたくないからといって相手の懐に踏み込まず棚ぼたを期待するようではオハナシにならないと。主体的な意志や努力もなくして人間関係が構築できるわけがないとのお言葉に痛烈なダメージを受けるわけですね。担任教諭の言葉に感化された悪友Aは今までのおちゃらけた生活を脱し努力を始め、主人公くんも綾地さんとの関係に向き合うことに決めたのでした。今まで対人関係において壁を作って一歩引いた立ち位置を心がけていた主人公くんでしたが共通√でのオカ研活動編を経て精神的に成長していました。綾地さんを引き留め思いを告げます。けれども綾地さんもまた人間関係で一歩引いていたため好感度がマックスなのに主人公くんの想いを素直に受け容れられませんでした。



  • 綾地さんの契約と部活仲間の支援
    • 告白に戸惑う綾地さん。綾地さんが恋愛に積極的になれないのには背景に両親の離婚問題があったのです。綾地さんの幼少期、両親の仲は険悪なものでお互い顔を合わせれば言い争いばかり。そして離婚後、それぞれが再婚したのですが、綾地さんはそれを認めることが出来ず、一人暮らし状態になったとのことでした。こうした理由により、男女が恋愛関係に結ばれることにためらいがあったのですね。そんなウジウジする綾地さんを見かねて登場するのがオカ研女性陣。綾地さんは主人公くんがオカ研に入る前には、ひとりぼっちでオカ研を運営していましたが、今ではもうこんなにも頼れる仲間が出来ました。様々なアドバイスにより綾地さんの背中を押してくれます。とりわけ先輩からの諫言である「お互いに好きで居続けるための努力をせよ」とのお言葉は両親はお互いの悪いところを探すのに必死になっており、好きで居続けることを放棄していたのだと悟ります。主人公くんとの仲を躊躇してしまうよりも、お互いが好きでい続けられるように頑張ろうと綾地さんは覚醒し、主人公くんの想いを受け容れることに成功したのでした。



  • セカイ改竄でビターエンド
    • フラグが成立し懇ろな関係を享受する二人でしたが、ここで問題が発生します。それは綾地さんが魔法少女になった時の願いの内容でした。綾地さんが魔法少女になったのは「両親の離婚を無かったことにして欲しい」という契約からでした。離婚を無かったことにするということは過去に跳躍すること。つまりは願いが叶えば現世において綾地さんの存在は消失し、セカイの記憶は改竄されて居なかったものとして再構成されるということでした。一度おこなった契約はキャンセルできず、主人公くんと一緒にいればいるほど「心の欠片」が集まってしまうというジレンマ。当初は少しでも契約完遂を遅らせるために、二人の関係を疎遠にしようとしたのですが、そんなものはジリ貧であり、綾地さんが精神崩壊をしてしまう危機もありました。故にオカ研仲間からも叱咤激励された主人公くんは最後の時間を綾地さんと過ごすことを選択し、二人で最後の絆を育みます。そしてとうとうお別れの時間です。契約が完遂された綾地さんは後世セカイへとタイムリープ。お別れの最後にせめてもの願いとして主人公くんの「心の欠片」が刈り取られます。こうして現世編では綾地さんは消え去り、セカイ改竄によりその痕跡も消去されましたが、主人公くんが得た精神的成長は変わりません。今まで人間関係が希薄で諦念を甘んじて受け容れていた主人公くんは主体的な意志を獲得したのです。綾地さんが居なくなったセカイでもその想いを胸に積極的に生きていくことになったのでした。感動のビターエンド!!

後世セカイ編


  • 綾地さんの努力編
    • 記憶を保持したまま後世セカイへ飛ばされた綾地さん。両親は離婚せず一緒に暮らしていましたが、魔法というものは融通が効きません。お互いケンカはしないものの、綾地さんを媒介にしているだけで、会話も殆ど無く、家族の形態としては崩壊していたのでした。結局の所、契約を結んだ際の幼少期の綾地さんは、全ての元凶を両親の離婚であると勝手に決めつけ心の平穏を得ようとしただけであり、とっくに両親の夫婦としての関係は切れていたのですね。綾地さんは現世での両親は離婚した後の方が幸せそうであったことを思い出します。こうして自分の願いを叶えるためにタイムリープを果たした綾地さんでしたが、離婚を勧めることになったのです。しかし綾地さんはもう一つあった現世での未練は乗り越えます。すなわち現世においては継母を認めることができなかった問題ですが、後世セカイ編では頑張って努力をして歩み寄りを果たし、家族としての形態を構築することに成功したのでした。以後、綾地さんは現世での記憶を武器に後世セカイ編で活躍していくのですが、自分が人と関わることで悪い方向へ変化することを極度に恐怖するようになっていったのでした。



  • 綾地さんの自己否定
    • 後世セカイ編でも綾地さんは主人公くんと結ばれることを願うのですが、その強い感情は空回り気味。他人の感情を匂いで分かる主人公くんにとって、綾地さんが主人公くんに向ける異様な熱意は忌避すべきものであったのです。後世セカイでも好きになるといった主人公くんの言葉は嘘だったの!?と綾地さんの心は折れそうになりますが、現世編で刈り取った主人公くんの心の欠片が発動!現世での記憶が後世セカイの主人公くんと融合を果たし、かつての記憶を取り戻すことになったのですね。こうして再び二人は結ばれ、フラグが成立した状態から共通√をやり直していくことになります。しかし綾地さんは、なまじ現世の記憶を保持しているため、後世を現世よりも良い方向に持って行くことに拘ります。また自分たちが介入してしまったがためにお悩み相談が失敗してしまった時のショックの様子は計りしれません。なぜ綾地さんは失敗を怖がっているのでしょうか?それは後世セカイ編へタイムリープした業を自罰として課していたため自己否定的になっていたからなのです。主人公くんは綾地さんに自己肯定感を与えるために承認欲求を満たしてあげようと努力していきます。共通√第4章にあたるハロウィンパーティーにおいて後世セカイ編では最初からバンドに綾地さんを誘い一緒に練習。演奏を成功に導き、パーティーは大団円を迎えます。ここでオカ研部や主人公くんズ一派から花束贈呈タイム。綾地さんがいたからこそ、今の成功があるのだとお礼の言葉を贈ります。「何が最善なのかなんて、今のオレ達にはわからないんだ。でもさ“出会えて良かった”と相手にそう思ってもらえるって、すごいことだと俺は思う。だから怖がらず自信を持っていいんだ」と主人公くんの言葉が綾地さんの心を打ちます。こうして周囲の想いを改めて知った綾地さんは自己否定的な自分にさよならし、自己肯定感を持つことが出来たのでした。後世セカイ編のエンドロールが流れ、エピローグでは綾地さんのご両親に会いに行く主人公くんの姿が!!こうしてハッピーエンドを迎えました。