花の野に咲くうたかたの「各個別(涼子・雫・汐音)」の感想・レビュー

グランドエンドを目指して個別ヒロインシナリオでフラグメントを回収中。
しかし物語の統合という機能上どうしても個別√がただのパーツのように感じられてしまいます。
実際に短いし、あれ?ここで終わりなの・・・という展開も非常に多い。
もう少し個別にも力を注いでくれないと折角造形されたキャラクタが可哀想な気がします。
ただのキャラクター消費・物語消費に陥ってるような。まぁ汐音さんは可愛い。

薬師涼子シナリオ概要


  • バイト先で盗みが行われていた件について
    • 薬師涼子は主人公くんの後輩で陸上部員。主人公くんの行きつけのファミレスで元気にバイトをしています。学校の七不思議イベントから手を引きやることのなくなった主人公くんはファミレスでバイトをすることになり、涼子シナリオに突入します。しかし涼子シナリオすごく短くてあっさりですよ。涼子シナリオのメインイベントはほぼバイトにおけるイジメ問題のみです。イジメ事件解決後も多少シナリオは続くのですが、涼子との交際を幼馴染み二人組に公表するぐらいしか取り立てて述べることはありません。まぁサブタイトルから察すると、先輩後輩だった二人の関係性を対等なものにしていこう!ということがテーマになっているようですが……。あと涼子が陸上でレースに臨む際に主人公くんたちのことを思い浮かべながら走るというエピソードは結構ほっこりしました。あとバグかもしれませんが麗奈シナリオを攻略中に何故か涼子√の海に行く約束フラグメントが回収されます。なんでなのでしょうかね(私だけか?)そんなわけで以下涼子シナリオのイジメ問題をどうぞ。
    • イジメ問題
      • 主人公くんは涼子が働いているファミレスで即面談即採用されました。しかしながら従業員たちからは奇異の目で見られ、不可思議に思うことしばしば。涼子曰く主人公くんは店長に雇われた探偵だと思われているのだとか。なんと今ファミレス内では頻繁に従業員の私物が窃盗されることが起こっているとのこと。そして主人公くんはかつてその異能によりファミレスにおいて財布の落とし物の持ち主を言い当てたことがあったが故に、店長が雇った探偵と見なされ警戒されるようになったようです。従業員の窃盗が起こっていたのでは職場の空気もよろしくないということで、主人公くんたちは異能により事件の解決を試みることになったのです。
      • このイジメ問題によってかつて涼子が中学時代にイジメにあっていたエピソードが挿入されます。涼子は中学時代は陸上部のエースで市の大会で好成績を収めていました。しかし、この涼子の活躍を気に入らない先輩が涼子をいじめるようになり、ある時には倉庫に閉じ込められてしまったのです。たまたま通りがかかった主人公くんたちがその異能により涼子を救出することになるのですが、以来涼子は主人公くんたちに懐くようになったとのことでした。涼子はこのようないじめられていた経験があったため、バイトにおいても傍観者には成りたくなかったのです。
      • バイト先のイジメは2パターンありました。一つ目はターゲットそのものの私物を盗むこと。二つ目は第三者の私物を盗み、盗んだ犯人はターゲットである!と騒ぎ立てること。しかし主人公くんの「存在の残滓を読み取る異能」の前には窃盗の犯人は即座に解明できるわけでして、あっさりと特定。犯人は事務を担当するパートのおばちゃんで、親戚でもある大学生をイジメていたのでした。どうしておばちゃんはイジメ問題などを起こしたのでしょう?気になるところですが、動機は語られずにカットというクイック展開。いや推理物って何故だか知りませんが犯人を特定するとペラペラと動機を白状し出すのが定石でしょう?しかしここでは犯人を特定して、考え直してくださいとメッセージを送るとあっさりと反省し、イジメはぱったりとやんでイベントは終結してしまうのでした。なんかとっても荒っぽい作りだなぁと。


  • 涼子√における伝承回収イベント
    • 涼子シナリオでカッポォになれた報告をしに神社へ行くイベントが発生するのですが、そこでバイト巫女さんから御神体についての伝承を教えてもらえます。要点は以下の通り。
      • 現在の神社は山に入る前の管理所みたいな扱いであり、本当は山の上に大きなオヤシロがあった。
      • 第二次大戦中の爆撃で吹っ飛ばされ御神体も喪失してしまった。
      • その御神体が「鏡石」であり、「鏡のように透き通っていて、覗き込んだ人が心から願えば、会いたい人の姿を映してくれる」特性を持つ。
      • 「鏡石」は「大きな水晶か、あるいは表面が磨かれた大理石」

鵲雫センパイシナリオの概要


  • センパイの友達の嫉妬
    • センパイはクールで冷静な生徒会長。客観的に物事を判断し、合理的思考の持ち主です。そんなセンパイですが、不思議現象が本当にあると信じており、主人公くんは学園の七不思議の解明の手伝いをしていきます。センパイは足繁く主人公くんの教室に通い、放課後は二人で行動する毎日。そんな中事件が発生し、センパイが焼却炉の中に閉じ込めれてしまったのです。幸い主人公くんの活躍で事無きことを得ましたが、一歩間違えれば大変なことに。火を入れられなくとも一酸化炭素中毒で死んでしまう可能性があったのです。主人公くんは人間の残滓が読み取れるという異能を保持しているので、犯人はあっさり特定できました。あとはそれをセンパイに告げるか、自分で解決してしまうかで選択肢。(※これを含めてセンパイ√は何故か日常エンドが2回も用意されています!!)まぁシナリオを進めるにはセンパイと一緒に行動することになるのですが、事実は主人公くんの思惑とは別の方向に。何と犯人はただの実行犯なだけで、本当にセンパイに恨みを向けていた人物は違ったのです。真犯人はセンパイの友達でもあるバスケ部のマネージャーでした。
    • ある試合で敵チームにフルボッコにされ誰もが投げかけている中、センパイはきら星のように叱咤激励をし、士気を回復させた!!という過去がありました。その時バスケ部のキャプテンはセンパイに惚れ、付き合っていたマネージャーを振ってセンパイに告白したのでした。しかしセンパイはそれを華麗にスルー。挙げ句の果てに最近では後輩の男の子(主人公くん)を楽しそうに連れ回している始末!!自分の彼氏を寝取っておきながら、それを袖にして、今度は新しい男の子に粉をかけている・・・!!!バスケ部のマネージャーはセンパイにどす黒い感情を向け始め、自分の友達を手先とし、自分の手を汚さず嫌がらせをしていたのでした。こうして事実が判明し、センパイの友達グループが犯人だったと分かったわけですが、センパイは特にショックを受けた風でもなく飄々としていました。センパイは気にならないのでしょうか?こうしてシナリオBパートに突入していきます。



  • 「鏡石」と閉鎖空間モノ
    • センパイが飄々としており、第三者のように客観的な視点で物事を捉えてしまうには理由がありました。それが本作品の根幹ともなっている「鏡石」の伝承に繋がってきます。センパイの叔父の家は古物商であり、センパイは幼少期に「鏡石」に魅入られていたのです。「その石、人を惑わし心を読む。悩む者あらば記憶を顕わに道を解かんとす……石は鏡と見まがうばかりに磨かれて、覗き込んだ人間の心を映し出す。記憶も読み取って映し出す……」。センパイは悩み事や日常生活の細々としたことを「鏡石」に報告していましたが、これにより客観的な思考が身についてしまっていたのです。三つ子の魂百まで。センパイを不審に思った両親により「鏡石」は売却され、センパイと切り離されましたが、このロジカルリーディングとクリティカルシンキングはセンパイに宿り続けたのでした。
    • 以上のようにセンパイの人格形成の要因が語れたわけですがシナリオはもうちょっとだけ続くんじゃ。なんとセンパイに嫌がらせをしていた友達が、この「鏡石」を持っていたのです。自分のルーツとなった不思議現象に触れたいセンパイはその鏡を入手。そして都合良く先生が学園の七不思議の一つであった「合わせ鏡」を教えてくれたのです。「鏡石」を使って「合わせ鏡」を実行すると、閉鎖空間へ閉じ込められることに。そのセカイは時も動かず移動範囲も「合わせ鏡」を実行した教室のみ。飲まず食わずでも大丈夫なわけですが、その分精神が摩耗していきます。最近の作品だとランス9でも閉鎖空間における精神面の問題を扱っていましたねぇ。そんな感じで、主人公くんたちも心を保つために日常会話をしたりあやとりをしたりセクロスをしたりと耐え抜いていきます。精神崩壊寸前まで追い込まれる中、主人公くんは自分の異能に解決策があると思い至ります。主人公くんの異能は人間の残滓を読み取る事。平時で発動しているのは人間の記憶のみですが、異能を拡大させれば物に蓄積されたものだって読み取れる!というわけで「合わせ鏡」の痕跡を辿って閉鎖空間脱出。「鏡が呼び水になって教室の記憶を観測していしまい閉じ込められてしまった」と解説されています。閉鎖空間脱出後は鏡石を神社に奉納。失われていた御神体が神社に戻ることになりました。閉鎖空間で長い月日を過ごした二人はさらに関係が深まりハッピーエンドを迎えたのでした。

藤宮(藤原?)汐音シナリオの概要

「System」のボイス設定画面だと「藤原」と表示されているが本文では「藤宮」。
また作中では誤字や漢字、送り仮名の表記ミスが結構多い。が、まぁ気にしない。



  • チーマーとの抗争事件に巻き込まれる。
    • 汐音さんは主人公くんの従姉妹の幼馴染み。癒し系ほんわかヒロイン枠で和むことこの上なし。個人的に攻略ヒロインのなかではトップのキャラクター造詣です。そんな汐音さん√に入るには学園の七不思議イベントの選択肢は折ってしまいましょう。そうすると主人公くんの男友達である赤城修平がチンピラに絡まれるルートに入ることになります。このイベントでは主人公くんは桜花と汐音さんを伴い、チーマー抗争事件を解決していくことになります。三人で夜の見回りをしていると蘇ってくるのは主人公くんが失明していた頃の記憶。夜間の公園で、主人公くんは歩行訓練を行っていたのですが、それに付き合ってくれたのは麗奈と汐音さんだったのです。主人公くんは自分が辛いときに手を引いてくれ、また今現在でも隣にいてくれる汐音さんに対して改めて感謝と好意の念を抱くのでした。さてチーマーたちの抗争はとある「ブツ」をめぐって争われていたのですが、その「ブツ」とは何と本作のキー概念であった「鏡石」で創られたナイフだったのです。主人公くんは桜花と汐音さんとの協力の下で、ナイフ型鏡石を回収することに成功し、抗争事件を解決します。鏡石はそれぞれの分社でも祀られていたことは他ルートでも語られており、記憶をめぐる効果を持っています。この汐音さんルートで出てくるナイフ型鏡石は一体どのような特性なのでしょうか?シナリオはBパートに入っていきます。



  • 汐音と過去の記憶リバース
    • ナイフ型鏡石の特性は過去の体験をもう一度追体験させるというものでした。ただ単に想起されるだけでなく、現実に同じ行動を繰り返すことになるので、過去にトリップしているのも同義です。そのため汐音さんは主人公くんとの過去の情交を繰り返し見せられることになっていきます。幼少期、汐音さんは同じ幼馴染みであり主人公くんとより付き合いの深い麗奈さんに遠慮をしているところがありました。過去の追体験をした汐音さんは何度ももっと積極的になればよかったとの想いを募らせていくのです。その想いはついに暴走し、主人公くんとの性的な繋がりを求めた汐音さんはジャパニーズ「YOBAI」を敢行するのです。(※進まない関係性に対して「YOBAI」を行うことによって変化を与える作品としては『ましろ色シンフォニー』のイモウトなどがいましたね)。そんなわけで汐音さんの性衝動により半ば強制的に「既成事実」されてしまうわけですが、主人公くんはそれでも汐音さんを愛していたからこそ抱くことを決意したのです。
    • 先に肉体関係が先行してしまったわけですが、主人公くんは再び汐音さんと恋人としての関係性を構築していきます。その過程で記憶リバースにより、「汐音さんがなぜ暗闇と刃物に恐怖を抱いているのか」という伏線が回収されることになるのです。主人公くんが引っ越してきた桜花荘にはかつて小さなヤシロがあり、そこに祀られていたのが今回の騒動で発見されたナイフ型鏡石だったのです。幼少の汐音さんはそれを持ち出し勝手に御守りにしていたのですが、主人公くんとの夜間の歩行訓練の際に、自分の皮膚を切ってしまったのでした。その時にナイフ型鏡石を喪失してしまったのですが、夜間に想い出フラッシュバックにあってしまったのですね。これにより夜の暗闇と刃物がトラウマになったのでした。上記のことを思い出した汐音さんは桜花荘に再び鏡石を封印することになりました。これまで主人公くんと汐音さんはまったりと過ごしてきましたが、死ぬまで良い関係を続けていこうねと指輪を渡してハッピーエンドを迎えます。