紺野アスタ、高嶋栄二『見上げてごらん、夜空の星を』【体験版】(PULLTOP)の感想・レビュー

市内の高校で連合天体サークルを形成して、望遠鏡を手作りし、天体観測しようぜ!
星見にトラウマを抱える主人公くんが幼馴染みAとの再会やサークル活動を通して過去を乗り越えていく。
現在の時間軸と過去をシャッフルして見せていく構造を取るので、幼馴染みAとBが二強すぎる。
共通ルートではドブソニアン望遠鏡を完成させて大団円し、主人公くんは天体を続ける決意をする。
ここで終わっとけば良作の予感がしたのですが・・・。本当にここで終わっておけば・・・。
体験版では幼馴染みズ√において三角関係の修羅場展開が開始されるところで終わる・・・。
断絶した幼馴染みAとの和解やトラウマ克服、幼馴染みBとの過去の馴れ初めはフツーに面白い。
天体モノは紙芝居ゲーではゴロゴロある主題だが専門性がしっかり描かれて良い。
残りの2キャラのシナリオの内容と幼馴染みズ√の痴情のもつれに不安が残る。

現在の時間軸におけるイベントの流れ

  • 市内高校合同天文サークルの形成
    • 主人公くんは天体大好きだけれども過去のトラウマにより星を見るとPTSDが発動しちゃう勤労学生(コンビニ)。星は見ないと称しながらも天涯孤独・引取先の親戚との不仲を口実に天体部に住み着き毎日を送っていました。そんな主人公くんの運命を変えるきっかけとなったのが、市内の高校で合同天体サークルを作ろうぜという提案です。引退した部長と自分以外には部員がいなかったため主人公くんは人数合わせのために会合に出席します。当初主人公くんは顔だけ出して手を引くつもりでした。しかし初めての会合は予算関係のため速攻で座礁してしまい、見かねた主人公くんはサークルが軌道に乗るまで尽力することになったのです。典型的な他者需要型主人公くんであり、自分では能動的にはなれないけれども他のことに理由があるなら誰よりも頑張るタイプ。のちのち自分自身の主体的な選択を迫られ懊悩するけれども攻略ヒロインによって支えられるというシナリオパターンですな。そんなわけで主人公くんは現在の時間軸において現れたサークルの主催者;白鳥織姫さんのために頑張っていきます。しかし如何せん過去パートに重点が置かれており、白鳥さんとの絡みは少なく感じます。


  • 作れ!望遠鏡ドブソニアン
    • 主人公くんが合同天体サークルを軌道に乗せるために選んだ手段は「手作り望遠鏡の作成」です。自分達で作った望遠鏡で実際に星を見る。このことは「製作過程を実体験し、望遠鏡の構造や各パーツの役割への理解を深める」ことに繋がります。低コストな共同作業であり比較的本格的な天体観測ができる!ということで、参加を渋っていた高校も帰って来てくれました。さぁここからみんなで作業開始!という展開になるのですが・・・。望遠鏡あっさり完成しすぎやん!!!主人公くんの役割は、かつて幼馴染みズたちと望遠鏡を作ろうとして挫折した時の残骸を利用して、主鏡を作り上げること。この行程は結構段階があり、白鳥さんと主人公くんの研磨作業を通して交流が深められていくという機能を持っています。しかし主人公くんのバイト先のコンビニのお得意様であるエロ本購入爺さんがサクサクと指示をしてあっさりと完成してしまいます。困難とか技術上の錬成とか殆ど無し!そのため主人公くんと白鳥さんが心の交流を深める描写も薄くなりがちでもうちょっとこう望遠鏡を作る作業の描写に力を入れてくれてもいいのではないかい?と思ってしまいました。完成した望遠鏡を使ってみんなでクリスマスに天体観測という展開については大団円パターンでグッときます。サークルのみんなに支えられることで「星に手は届かない」というトラウマを乗り越え、天体観測を続ける決意ができたのでした。

過去における主人公くんズの関係

  • 両親亡くした主人公くんと父の形見の天体望遠鏡
    • 主人公くんは両親の死により親戚をたらい回しにされた結果、田舎の祖父のもとへと引き取られてきました。祖父は無口で気むずかしく主人公くんとは打ち解けません。学校でも田舎特有の閉鎖的なコミュニティによりガキ大将に目をつけられ嫌がらせを受ける毎日。そんな折、犬の救出劇からの天体望遠鏡使用を経て仲良くなったのが、幼馴染みAこと帚星ヒカリだったのです。主人公くんは転校を繰り返す中で私物を無くしていき、とうとう父が残した天体望遠鏡だけになってしまいます。そのため肌身離さず持ち運んでいたのですが、実は使い方が分からず壊れていると思い込んでいました。そこへ幼馴染みA(ヒカリ)が先生から仕込んだ知識を引っさげて登場し、使い方をレクチャーしながら一緒に月を観察します。大切にしていた天体望遠鏡が壊れてなどおらず月の断片をありありと映し出す事実を目の当たりにした主人公くんは涙腺結界!ヒカリに対して自分の鬱屈した心情を吐露してしまいます。こうして幼少期の主人公くんはヒカリと特別な関係を構築していくことになります。


  • 出戻り母子家庭・オッドアイでコンプレックス・幼馴染みB
    • 幼少期の過去パートで天体観測活動を行う三人組のもう一人が幼馴染みBこと天ノ川沙夜。沙夜はオッドアイであり過去にはそのことでイジメを受けたこともありました。そのため主人公くんが開口一番、君の目はアルビレオをみたいだと褒め称えても、怪獣の名前で馬鹿にされたと勘違いしてしまい、泣き叫びながら逃げ出します。また沙夜は家庭環境が複雑で出戻り母子家庭であったこともありクラスから遠巻きにされていました。主人公くんはアルビレオの件について自責の念に駆られます。ヒカリが沙夜にアルビレオは褒め言葉だと説明し、誤解をといてくれるのですが、ナカナカ馴染むことができません。そのため主人公くんは実際に望遠鏡でアルビレオを見て貰おうと作戦を立てます。先生の許可を取り教育活動の一環として観測会の実施にこぎ着けた主人公くんは幼馴染みA:ヒカリの力も借りて準備に邁進していきます。これに立ちはだかるのがガキ大将とその手下どもであり、彼らの嫌がらせに抗いながら獅子奮迅する幼少期主人公くんの姿は手に汗握ること請け合いです。嫌がらせで隠された天体望遠鏡を見つけ出し、何とかアルビレオが観測できる時間内にセッティングするもののギリギリアウト!そこへ先生が機転を利かせて冬のアルビレオを紹介しフォローしてくれる描写は理想とすべき教員像やなぁと感涙。こうして主人公くんの努力と先生のフォローにより、アルビレオを観測した幼馴染みB;沙夜はその綺麗さに心打たれ、自分の目を美しいと主人公くんが言ってくれていたことに気づいて好感度MAXとなるのでした。沙夜はすごくかわいい。


  • 幼馴染みAとの破局と別離と再会
    • 主人公くんと幼馴染みA・Bは仲良しトリオとなり天体観測に入れ込んでいきます。夏休み及び冬休みの自由研究課題のために毎日を過ごすことに。そこへ襲いかかってくるのがダム問題です(ダム問題といったら『僕と、僕らの夏』とかが懐かしいっすね)。主人公くんの村は廃村となり、鉄道に勤めていた幼馴染みAの家は引っ越しを余儀なくされるというのです。悩んだ末に「ダム建設を中止にできれば引っ越さずに済む」という安易な考えに至った主人公くんたちは、子どもながらにダム建設廃止を真剣に考えます。その方法として行き着いた先が、研究発表で功績をあげ、インタビューの際に市長やマスコミに訴えるというものでした。それからは俄然天体観測を本格化させるのですが、ある日主人公くんは真実を知ります。それは幼馴染みAの引っ越しは過疎化による鉄道利用の減少が原因でありダムは関係なかったのです。主人公くんは愕然とし、信頼していた幼馴染みAに手ひどく裏切られたように感じてしまったのです。糾弾する主人公くんは幼馴染みAから天体観測飽きたと述べられ、憤慨。もみ合った末、偶然とはいえ、これまで書き連ねた研究ノートをビリビリに引き裂いてしまったのです。幼馴染みBはそれを泣きながら修繕するのですが覆水盆に返らず。幼馴染みAとは復縁しないまま疎遠となり別離を迎えてしまうのでした。
    • 現代パートでは幼馴染みAは素性を隠したままOLとして主人公くんのメル友になっており、合同天体サークル結成を知らされて、姿を現します。気まずいかと思いきや幼馴染みAは割とサバサバしてフツーに接し、主人公くんは肩すかし感満載。再会に喜ぶのも束の間、またもや幼馴染みAは東南アジアへと引っ越すとのこと。それまでの時間を有意義に過ごすため、手作り望遠鏡ドブソニアン計画にも熱が入ります。過去のことを語り合う際にはしんみりしつつも止まっていた時間が動き出し和解が成立。飽きたと言って逃げた幼馴染みAも、天体には全然飽きておらず引っ越してもなお天体観測は続けるとのことでした。

クリスマス観測会以後の展開

  • ヒカリが「星を見るのに飽きた」と言い出した理由
    • 幼少期の沙夜(幼馴染みB)が主人公くんの事を恋愛感情の意味で好きになったので、ヒカリ(幼馴染みA)は身を引くため「星を見るのに飽きた」と述べた。嗚呼、三角関係修羅場タイム。痴情のもつれ展開ってあんまり好きじゃないんですよねー「スクイズ」とか「ホワバル」とか。で、主人公くんが四年越しのラブレターを読んだら、差出人はヒカリではなく沙夜だったというオチです。沙夜と疎遠になったのは、主人公くんがラブレターを読まなかったため待ち合わせをすっぽかした形となり、沙夜が振られるという結果になったからでした。沙夜は寒い中いつまでも来ない主人公くんを待ち続け、結果現れず振られたと思ったのですね。切ない・・・。主人公くんも過去の自分の仕打ちに愕然とし、沙夜に謝罪をしたいと申し出ます。ありのままのことをはなし、沙夜に罰せられることを望んだ主人公くんが目を閉じるとそこには沙夜の接吻が。沙夜の気持ちはあの時と変わらぬままであることが告げられます。そして口づけする二人の前にヒカリが鉢合わせをしてしまい体験版は終了となります。・・・わぉ、幼馴染みズシナリオは三角関係かー。なんかドロドロしてそうでいややなぁ。

 

オマケ;先生が教職を辞した理由

先生√を作って欲しいなぁと。